福島の子どもを守れ 小児甲状腺がんは被曝が原因 国・県の検査縮小・廃止許さない

週刊『前進』02頁(2916号02面01)(2018/02/15)


福島の子どもを守れ
 小児甲状腺がんは被曝が原因
 国・県の検査縮小・廃止許さない


 2011年3月11日の福島第一原発事故により放出された放射能で、これまでに福島県の200人以上の子どもが甲状腺がんを発症していることが分かりました。しかし安倍政権・環境省と福島県は、放射線被曝の影響ではないとし、許せないことに甲状腺検査の縮小や廃止まで目論んでいます。福島と全国の労働者・労働組合、民衆の力で阻み、子どもたちを守りぬきましょう。

甲状腺がん200人以上

 7年前の福島第一原発事故は三つの原子炉が破壊される大惨事となり、広大な地域が放射能で汚染されました。県民の被曝は甚だしく、それは現在も続いています。責任は反対運動を圧殺し、原発を次々と建設・稼働させてきた歴代自民党政府と東京電力などの電力会社にあります。
 しかも、事故による深刻な被曝にもかかわらず、政府と福島県は浜通りなど13市町村の住民以外の県民を避難させませんでした。逆に「放射能への県民の不安を解消するため」として2011年10月から、事故当時18歳までの子どもの甲状腺検査を開始しました。今年3月末で3回目の検査が終了します。
 結果は政府や県の思惑とは違い、深刻な事態が進行しています。これまで、県の「県民健康調査」検討委員会の報告だけで194人が甲状腺がんないしその疑いと判明したのです。検討委員会が把握していない子どもも含めると、患者は200人を超えます。この他に、「経過観察」の子どもが2700人もいます。この子どもたちの中にも患者がいる可能性がきわめて高いと考えざるをえません。
 小児甲状腺がんの発生率は、医学的には約100万人に1人と言われています。福島県での発生率は、先行検査受診者30万人を分母とすると、1500人に1人という、通常ならとても考えられない高率です。
 1986年に旧ソ連で発生したチェルノブイリ原発事故の後にも小児甲状腺がんが多数、発生しました。WHO(世界保健機構)はこれを原発事故による被曝が原因であると認めざるをえませんでした。福島県でこれほど高率の小児甲状腺がん患者が出ている原因も、原発事故による被曝以外に考えられません。対策を講じることが、切実に求められているのです。

学校での検診やめる狙い

 ところが政府・環境省と福島県は、まったく反対のことを行おうとしています。県の「県民健康調査」検討委員会や、その傘下にある甲状腺検査評価部会が表に立ち、甲状腺検査を縮小や廃止の方向にもっていこうと動いているのです。検討委員会はこれまで小児甲状腺がんの患者がどれだけ増えようが、「放射線の影響とは考えにくい」としてきました。しかし、もはや否定し続けることが限界にきてしまったからです。
 1月26日に福島市で開催された第9回甲状腺検査評価部会で、御用学者の委員が「学校検診という形で、ほぼ強制的に受けるという形になっている」と検査を批判し、鈴木元・部会長が「どういう問題点があるかを整理して上の(検討)委員会にあげる」と具体的道筋までつけました。まず、学校での検診を取りやめて検査の規模を縮小し、さらに廃止する魂胆であると、はっきり読みとれます。絶対に許してはなりません。
 そもそも、各種のがんの死亡率を下げるために「早期発見」が叫ばれ、自治体が中心になって検診を勧めることは、今や当たり前になっています。実際に、それで命を救われた人が膨大にいます。また、学校で健康診断をすることも社会的に定着しています。
 学校での子どもの甲状腺検査打ち切りは、それらにさえ逆行する暴挙です。検査をせずにがんが進行し、取り返しのつかない子どもが続出したら、どう責任をとるつもりなのか。彼らは「学者」「医者」の仮面をかぶった犯罪人です!

労組を先頭に3・11郡山へ

 検討委員会や、手術を行っている福島医大は「甲状腺がんは予後が良い」などと言っていますが、とんでもありません。
 甲状腺はのどのところにある蝶の形をした臓器で、人体の成長に重要なホルモンを出し続け、成人になっても必要です。これが補充されないと人間は無事に生きていけないのです。手術で甲状腺を摘出した子どもは、これから何十年にもわたり毎日ホルモン剤を飲み続けなければなりません。大変なことです。
 また彼らは、「甲状腺がんは転移しない」とも言っていますが、これもまったくのデタラメです。何より福島医大自身が発表した「甲状腺がんと放射線障害」という論文には、チェルノブイリ原発事故での小児甲状腺がんの特徴として、リンパ節転移:60〜70%、遠隔転移:10〜15%と書いた表が掲載してあるのです。手術がうまくいっても、患者の子どもと家族は、何十年も再発や転移の心配をしながら生き続けなければならないのです。
 ですから、小児甲状腺がんの場合もほかのがんと同様、早期に発見し治療することがとても大切です。検査を縮小したり、打ち切ることなど、断じてあってはなりません。
 子どもを守ることは私たちの責任です。教組や自治体の労働組合が立ち上がることがどうしても必要です。福島と、そして全国の労働者・労働組合、民衆の力で福島の子どもたちを何としても守りましょう。
 3月11日に郡山市で開催される3・11反原発福島行動は、子どもを守り、放射能汚染地への帰還の強要を許さず、原発の再稼働と戦争・改憲を労働組合の力で阻むための取り組みです。福島と、全国から多くの皆さんの参加を訴えます。
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