核戦争の発動狙うトランプ 「核戦略の見直し」の具体化に踏み出す 米政権が大軍拡予算

週刊『前進』02頁(2918号02面04)(2018/02/22)


核戦争の発動狙うトランプ
 「核戦略の見直し」の具体化に踏み出す
 米政権が大軍拡予算


 米トランプ政権は12日に発表した2019会計年度の予算教書で、軍事予算の大幅増額を打ち出した。国防総省の予算額は6861億㌦(約74兆5700億円)、核兵器開発を担当するエネルギー省を含めた国防費全体では7160億㌦(約78兆円)となり、前年度比13%の増額、2年連続2桁台の伸び率となる。
 予算総額は4・4兆㌦(約480兆円)で、国防費増額や大型減税の影響で19年度財政赤字は当初の想定の2倍近い9840億㌦(約107兆円)にふくれ上がる見通しだ。その穴埋めのために1兆㌦もの国債を発行し、今後10年間で医療費や生活保護費などの減額で約3兆円の歳出削減を図る。大盤振る舞いで軍事予算を増額しながら、貧困層を始めとした圧倒的多数の労働者人民が必要とする社会保障を徹底的に切り捨てようとしているのだ。
 何より重大なのは、大幅増額となった今回の軍事予算が、明らかに核戦争の本格的発動に向けた予算として組まれているということだ。2日に発表した「核戦略の見直し」(NPR)で核の先制使用とそのための新型核兵器の開発を打ち出したトランプは、今回の予算教書でそれを軍事予算として具体化した。12日の記者会見では、「かつてない最強の軍を手に入れ、近代化した最新鋭の核戦力を保有する」と述べ、中国およびロシアとの「大国間の競争」を強調し、「中ロに対する米国の優位の低下を覆す」と語気を強めた。

中ロを「敵国」扱い

 トランプ政権のNPRは、米軍による核先制使用を前提とした事実上の核戦争宣言だ。それは昨年12月に出された国家安保戦略(NSS)で、中国とロシアを名指しして「大国同士の競争の時代が再来した」と明記し、台頭する中国・ロシアに対抗する軍事戦略を公然と打ち出したことに基づいている。
 実際、NPRは潜水艦や水上艦から発射できる新たな核巡航ミサイルの開発・配備を含んでおり、これはかつてロシアとの第2次戦略核兵器削減条約(START2)の交渉過程で合意した「海軍戦術核の全廃」を一方的に破り、海軍への戦術核配備を再開することを意味する。ロシアを「敵国」とみなさなければできないことだ。
 このように、トランプの国家安保戦略とそれに基づく新たな核戦略は、アメリカ帝国主義の利益と延命のために核戦争―世界戦争をも辞さないことを公然と打ち出したものであり、日米安保体制を柱とする日米枢軸のもとに韓国やインドなどの同盟国を巻き込み、中国やロシアを相手に世界戦争を構えるということだ。眼前に切迫する朝鮮侵略戦争がその導火線になろうとしている。

オバマ時代に準備

 だが、こうした核戦争策動は単にトランプ個人の発意によるものではない。そもそも米軍の保有する全核兵器を小型化・高性能化する計画はオバマ前政権が立案した。口先で「核軍縮」「核なき世界」などと掲げながら、オバマは今後30年間で1兆㌦という巨額を投じた空前の核戦略を進めていたのだ。帝国主義政府が語る「軍縮」や「核廃絶」とは、新たな戦争の準備にほかならない。
 1920年代、30年代に米英日などが「軍縮」を唱えた時も、実際に行われたのは次の戦争に向けた兵器の近代化だった。日帝は大型艦船の削減や陸軍兵力の縮小などで見せかけの「軍縮」を装いながら、戦闘機、重爆撃機、戦車などの増産を進め、31年「満州事変」から足かけ15年にわたるアジア・太平洋戦争へと突き進んだ。第1次大戦後に軍備を禁止されたドイツも、ナチスの政権掌握後、その巨大な工業生産力をもって数年のうちに陸海空軍の機械化戦力を完成させ、ヨーロッパを蹂躙(じゅうりん)した。
 トランプのNPRも、オバマが「核軍縮」を掲げながらその裏で進めてきた核軍拡を継承し、いよいよ核戦争の本格的発動へ最後の留め金を外すものだ。
 核戦争を止める力は、労働者が生産現場から戦争動員拒否の闘いに立ち上がり、自国政府を打倒する革命の中にある。闘う労働組合の登場と国際連帯闘争の発展こそ勝利の鍵だ。
 トランプのNPRを「高く評価する」と賛成した安倍政権を労働者の怒りで倒そう。3・11反原発福島行動と3・25大行進をその出発点としてかちとろう!

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