改憲の国会発議許すな 反対運動圧殺狙う国民投票法 メディア独占し改憲を大宣伝

週刊『前進』02頁(2948号02面01)(2018/06/14)


改憲の国会発議許すな
 反対運動圧殺狙う国民投票法
 メディア独占し改憲を大宣伝

(写真 「改憲・戦争阻止!大行進」が呼びかけ、5月3日の憲法記念日に開催されたデモ。動労千葉を先頭に都心を行進)


 国会の会期末が迫る中、政府・与党は「働き方改革」関連法案の強行を狙うと同時に、改憲に必要な国民投票の手続きを定めた国民投票法の改定案の国会提出を狙っている。2007年成立の現行法を現在の公職選挙法に沿って手直しするものだが、安倍・自民党はこの改定案を立憲民主党などと共同提案とすることで、野党を改憲論議に引き込もうとしている。そもそも国民投票法は、労働者人民の改憲反対運動を弾圧することを最大の眼目としたとんでもない悪法であり、そこには改憲攻撃の悪質な正体が示されている。

公務員・教育労働者を弾圧

 改憲には、国会で3分の2以上の賛成をもって「憲法改正」を発議した後、国民投票で過半数の賛成を得ることが必要とされている(憲法第96条)。改憲を掲げて登場した第1次安倍政権は07年5月、改憲国民投票の「ルール」を定めるものとして国民投票法を成立させた。当時、民主党の憲法調査会長として安倍の国民投票法案に賛成し、その成立に手を貸していたのが現・立憲民主党代表の枝野幸男である(後に政権交代を意識した小沢一郎らが枝野を解任し、民主党は法案反対に回った)。
 国民投票法は、国会での改憲発議から60〜180日の間に国民投票を実施することを規定しているが、この過程で改憲反対運動を徹底的に規制する一方、金にモノを言わせた改憲賛成派の宣伝活動は野放図に容認するものである。
 第一に、「公務員等及び教育者」に対し、その「地位利用による国民投票運動の禁止」を規定し(第103条)、違反した場合は懲戒などの行政処分の他、公務員については4年以下の禁固などの刑事罰が課せられる(第111条)。対象となる「公務員等及び教育者」は500万人にのぼる。国民投票でこのような不当な制限を規定する国は日本以外に例がない。
 しかも、ここでいう「国民投票運動」とは「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」とされるが、およそ憲法に関する討論や行動の一切をその中に含むことができ、また何をもって「地位利用」とみなすかも意図的に拡大解釈し濫用(らんよう)できるようになっている。法案審議の過程では、「教育者が生徒から改憲への賛否を聞かれ、その回答が親に伝われば地位を利用して投票に影響を与えたことになる」「大学の憲法学の講義も学術的な見解表明でないと判断されれば禁止の対象となる」との政府答弁がなされた。
 第二に、「組織的多数人買収及び利害誘導罪」の規定で労働組合や市民団体の組織的な反対運動が禁止される(第109条)。例えば労働組合が組合員に交通費や弁当を支給して集会を開催すれば「買収罪」または「利害誘導罪」となり、パンフレットなどを配布・販売すれば「物品その他の財産上の利益の供与」とみなされ、刑事罰の対象となる。自治労や日教組を始め戦争・改憲に反対する労働組合を弾圧し、その活動を萎縮させ、労働者の団結を解体しようと狙うものだ。

有料広告は無制限に容認

 第三に、テレビ・新聞・ラジオなどの有料広告が投票日の14日前まで無制限に容認される。投票を呼びかけるのではなく「私は改憲賛成です」と表明する形での意見広告なら、投票日の14日前以降も可能だ。有料広告の手段や費用、放送時間などに細かな規制がある公職選挙法とは異なり、金次第で一方的な宣伝がいくらでも可能となるのだ。
 2週間ほどの国政選挙で与野党が投じる費用は合計で100億円ほどだが、改憲の国会発議から国民投票までは60〜180日間もあり、自民党や日本経団連などの財界、大企業・大銀行、日本会議などの極右勢力が何百億もの金を投じてメディアの完全制圧を狙うことは明白である。しかも改憲派の宣伝は、安倍・自民党と蜜月関係にある日本最大の広告代理店・電通が担当することが決まっており、テレビCMなども最も視聴者が多いゴールデンタイムを独占できる。
 このように国民投票法とは、改憲勢力に圧倒的に有利な仕組みで国民投票の実施を可能とするものだが、安倍の狙いは単に国民投票を乗り切ることだけにあるのではない。何よりもこの過程で改憲反対運動を弾圧し、自治労・日教組を始めとした労働組合を抑えつけ、その一方で「改憲賛成」への投票を促すプロパガンダを何十日間にもわたって洪水のように全国民の耳目にたたき込もうとしているのである。これ自体が「国民洗脳」を狙う暴力的なイデオロギー攻撃といっても過言ではない。
 しかも、安倍・自民党の改憲案は「憲法9条に自衛隊を明記する」というものであり、改憲派のプロパガンダの中身が自衛隊の参戦を絶賛する軍国主義的イデオロギーの満展開となることは明白である。こうして労働者人民が戦後一貫して守り抜いてきた「二度と戦争を許さない」という決意と団結を、根こそぎ解体しようとしているのだ。
 「国会で発議されても国民投票で否決すればいい」などという構えでは勝負にならない。こんな国民投票の実施そのものを絶対に許さず、国会発議阻止・安倍打倒を掲げて闘おう。「改憲・戦争阻止!大行進」を全国で拡大しよう。

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国民投票法の弾圧条項(抜粋)

第103条 公務員は、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力または便益を利用して、国民投票運動をすることができない。
2 教育者は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力または便益を利用して、国民投票運動をすることができない。
(組織的多数人買収及び利害誘導罪)
第109条 次に掲げる行為をした者は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する。
一 組織により、多数の投票人に対し、金銭、物品その他の財産上の利益もしくは公私の職務の供与をしたとき。

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