地裁が停職6カ月容認 東京「君が代」不起立裁判 根津さんに不当判決

週刊『前進』04頁(2949号03面04)(2018/06/18)


地裁が停職6カ月容認
 東京「君が代」不起立裁判
 根津さんに不当判決


 元教員の河原井純子さん、根津公子さんの2009年「君が代」不起立処分の取り消しなどを求めた訴訟の東京地裁判決(民事19部、春名茂裁判長)が、5月24日に出されました。河原井さんは処分取り消し、根津さんは「過去の処分歴」を理由に停職6カ月処分を取り消しませんでした。根津さんは「不起立行為ではなく、私の人格を裁いた」と怒り、即控訴しました。(河原井さんは損害賠償請求に関しては認められず、即控訴)
 根津さんは05年から定年退職するまで不起立処分を受け続けてきました。しかし07年の不起立処分については、15年5月に東京高裁の須藤典明裁判長が、「過去の処分歴」は前回の停職処分において考慮されており、06年処分から07年処分にいたる間に「処分を加重する新たな個別具体的な事情はない」として、停職6カ月処分を取り消しました。また、不起立前後の行動(新聞でのアピールや停職中の校門前出勤)も憲法で保障された思想・良心の自由、表現の自由の範囲内と判断されました。東京都教育委員会の上告も棄却され、東京高裁須藤判決が判例として存在しています。
 ところが今回、東京地裁・春名裁判長は、最高裁判例と同じ位置を持つ東京高裁須藤判決を踏みにじり、根津さんの09年停職6カ月処分は適法と判断しました。08年処分に続く不当判決です。
 春名判決は根津さんの真摯(しんし)な教育活動を「積極的妨害行為」と断じました。許せません。1994年3月、校長が職員会議の決定を無視して「日の丸」を掲げたことに対し、「先生おろして!」という生徒の声に押されて根津さんが「日の丸」を降ろしたこと、また思想転向を迫る2005年の再発防止研修の時にゼッケンをつけて抗議したこと(いずれも減給1カ月処分)を「積極的妨害行為」として、根津さんの闘いの意志そのものを罰したのです。
 根津さんは在職中、3度の不起立停職6カ月、遠距離通勤、毎年の異動、懲戒免職攻撃をはね返してきました。今、「天皇制教育」「オリンピック教育」を許さず、改憲・戦争に反対し、「青年を再び戦場に送らない」運動を現場の教育労働者と共につくろうと取り組んでいます。根津さんと共に08、09年処分に対する控訴審勝利と改憲・戦争阻止を貫く怒濤(どとう)のうねりを起こしていきたいと思います。
(東京三多摩 元教員・牧江寿子)

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〈解説〉「日の丸・君が代」闘争とは

 「日の丸・君が代」は明治以来の日本の侵略戦争と植民地支配の象徴である。日本軍が占領した土地に真っ先に立てられた旗が「日の丸」であり、天皇の治世をたたえる歌が「君が代」だ。戦前、学校では行事や祝祭日のたびに「日の丸」を掲げて「君が代」が歌われた。そして天皇に命を捧げることを教え込む天皇制教育が暴力(体罰)をもって行われ、子どもたちを戦争に駆り立てていった。
 だから戦後、教育労働者は教え子を戦場に送った痛切な反省から「教え子を再び戦場に送らない」ことを闘いの原点に据え、「日の丸・君が代」に反対し教育の戦争動員と闘ってきた。
 戦争絶対反対で闘う土台をつくったのが、「勤評は戦争への一里塚」というスローガンで闘った勤評闘争(1956〜59年)だ。日教組は処分・弾圧をはね返してストで闘い、60年安保闘争をけん引した。
 1980年代、当時の中曽根政権は「戦後政治の総決算」を掲げ、改憲攻撃に踏み出す。中曽根は国鉄分割・民営化に続く臨教審攻撃で、反戦闘争の主力を担う日教組を解体して改憲への道を掃き清めようとした。その切っ先となったのが学校での「日の丸・君が代」100%貫徹である。それは天皇制イデオロギーによる命令と服従で職場の団結を根こそぎ解体し、教育労働者を国の手先にして戦争教育を担わせようとする攻撃だった。
 これに日教組本部は屈服し、95年に「参加・提言・改革」路線に転向。99年には日本共産党の提唱によって「国旗・国歌法」が制定された。広島では「是正指導」(98年)、東京では石原都政による「10・23通達」(2003年)、大阪では橋下府政による「君が代」起立条例(11年)が襲いかかるが、現場組合員は不起立で抵抗した。都高教つぶしを狙った東京では被処分者が483人に上り、小中学校でも根津さんらがクビをかけて闘った。大阪では教育の民営化・団結破壊攻撃と一体であるととらえ教組の再生をかけて反撃に立ち、橋下を打倒した。
 「日の丸・君が代」闘争には、戦争だけは許さないと闘ってきた教育労働者の誇りと団結が息づいている。それは安倍の改憲・戦争攻撃を打ち破る力だ。

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