焦点 米中間選挙が示した巨大な流動 体制の枠破る決起の開始

週刊『前進』02頁(2990号02面04)(2018/11/15)


焦点
 米中間選挙が示した巨大な流動
 体制の枠破る決起の開始


●投票率は歴史的な高さ
 11月6日のアメリカ中間選挙は歴史的な高投票率となった。投票総数1億1300万票で前回14年より3千万票多く、投票率も39%から48%に激増した。18〜29歳の投票率も31%で過去四半世紀で最高だ。
 今年春のウェストバージニア州の全学校ストを始めとした地域丸ごと決起は労働者の中から大量の新たな組織者を生み出し、全米的組織まで形成している。世界最大の宅配会社UPSでの既成労組指導部の制動を突破する闘いなど、30年代を超える階級闘争の高揚が始まった。労働者が戦争に次ぐ戦争・大恐慌によって犠牲にされ、地域社会全体が崩壊させられている中で、体制を根底から覆すための意識的な組織化運動だ。これに支配階級は震え上がり、革命防止に全力をあげている。自信を持った労働者を体制内労働運動も恐れ、体制の枠内に引き戻そうと必死だ。
 アメリカ帝国主義は労働者の巨大な力と08年リーマンショックをはるかに上回る大恐慌の切迫に直面し、断崖絶壁の危機にある。だからこそ、従来のあり方を激烈に破壊するトランプが押し上げられたのだ。
 今回の中間選挙での高投票率は、以上のような労働者階級の決起を始めとするさまざまな勢力の激突が生み出したものだ。最終的開票結果は出そろっていないが、下院は民主党が38〜40議席増で、過半数を大きく上回った。だが上院は共和党が過半数に上積みした。36の知事選挙と多くの州議会、自治体選挙でも、多くの場所で民主党が増えたが、民主党の首長・議席が共和党に奪われた所もある。マスコミは、民主党の地滑り的勝利を予測したが、そうはならなかった。トランプへの反対は直ちに民主党への投票につながるものではない。すでに民主党への幻滅や怒りが充満していたからだ。
●戦争と地域破壊の民主党
 オバマ民主党政権は07︱08年の世界恐慌爆発に対し、8千億㌦規模の金融資本救済を2度も行う一方、ゼネラルモーターズなどの「破産」処理や自治体「破産」で年金・医療を奪い、賃金を半減させ、労組を破壊した。そして地域社会を荒廃させた。
 大統領選で「イラク戦争反対」を言って票を集めたにもかかわらず、イラク戦争を継続したばかりか、イエメン、リビア、シリアなど七つの戦場をつくり出した。中東・アフリカからの膨大な数の難民という世界史的な重大事態の原因は、オバマ政権による戦争拡大・大虐殺と国土荒廃だ。そしてオバマは1兆㌦の核兵器更新計画を推進した。中南米でも、09年の米軍・CIAの手先のホンジュラス軍部によるクーデターで労働運動大弾圧と全社会的な破壊がもたらされた。現在の「難民のキャラバン」もここに原因がある。
 オバマの移民強制送還は歴代の全大統領による数を足したより多い。むき出しの差別・排外主義を売り物にするトランプの登場もオバマが準備したといえる。
●第3の党求める圧倒的声
 今や、圧倒的多数が民主党を見限り、労働者階級の党を求めている。支配階級の機関であるギャロップ社の世論調査でさえ、「第3の党が必要」が17年には61%になった。
 今回、女性や若者の大きな支持を受けて当選した、民主党内の「改革派」を名乗るDSA(アメリカ民主社会主義)派のオカシオコルテスらは、労働者階級のこの希望に真に応える存在ではない。16年の民主党大統領予備選で「社会主義」「政治革命」をうたって登場したサンダースも同じだ。その本質は、労働者独自の組織化を求める動きに対して、それを民主党の枠内に引き戻すことにある。最大の問題は、オカシオコルテス候補が今回の選挙の争点からトランプの戦争政策との対決を意図的に外したこと、オバマの推薦を受けて登場したことに示されている。
 全人民的大流動はこれからいよいよ本格的に激化する。最大の帝国主義国の中でプロレタリア革命の組織化がすでに始まった。

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