映画「華氏119」 トランプの正体を暴き出し、闘う人々も生き生きと紹介

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週刊『前進』04頁(2991号04面05)(2018/11/19)


映画「華氏119」
 トランプの正体を暴き出し、闘う人々も生き生きと紹介


 マイケル・ムーア監督がトランプと真っ向から対決する新しい映画を作った。2004年に発表した「華氏911」は、2001年9・11以後のブッシュ政権によるアフガニスタン・イラク侵略戦争と対決するものだったが、今度はトランプが米大統領に当選し勝利宣言した16年11月9日を取り上げ、タイトルもそこからとっている。
 当時大方はトランプが当選するはずはないと考えており、「アメリカ初の女性大統領誕生」は間違いないものと予想していた。当のトランプ自身が自分の勝利を信じられないくらいだった。しかしマイケル・ムーアはそのことを予測し、ただ一人猛然と警鐘を鳴らしていた。映画は、トランプがいかに排外主義・レイシストか、いかにうそつきかを容赦なく暴き出す。
 「アメリカ・ファースト」とは、アメリカの大ブルジョア第一主義であることがよく分かる。トランプを告発する労働者、退役軍人などの生々しい声が盛り込まれている。
 一方で、オバマやヒラリー・クリントンも、ブルジョア政治家で、大企業に奉仕する、あるいは戦争を拡大することしかしないということもきちんと押さえられている。民主党がトランプの登場を準備したのだ。
 しかし、この映画のもう一つの見どころは、闘う人々をきちんと描いていることだ。本紙や『序局』第18号(村上和幸「『トランプの州』を覆す全州学校スト」)で報道されたウェストバージニア州の教育労働者の全州ストライキや、フロリダ州パークランドの高校生から始まった銃規制を求める各地の巨万のデモを、闘う人々の側に立って生き生きと紹介している。
 ラスト近く、ムーアは、明確にトランプをヒトラーになぞらえている。ニュルンベルクの党大会で演説するヒトラーのモノクロ映像に、トランプの演説の音声をかぶせて、トランプの排外主義扇動がホロコーストにつながっていることを浮き彫りにしている。
 ムーアは観客に向かって行動を呼びかけている。立ち上がってトランプを打倒しなければいけないと。それはさしあたり11月中間選挙で共和党ではなく民主党を勝たせようということで、こうした彼の呼びかけは、中間選挙での投票率のアップや、新人女性議員の誕生などとして実を結んでいると言える。だが、これは、アメリカの巨大な変革の始まりだ。彼の呼びかけに真剣に応えたら、それは労働者階級の権力の問題に必ず行き着く。最大のテーマであるアメリカのプロレタリア革命の現実性が本当に見えてきていることを、この映画と中間選挙の結果は教えていると思う。
 この映画がトランプを揶揄(やゆ)したり冷笑したりするのでなく本気で怒りをたたきつけているように、日本のわれわれも、本気で安倍を怒りの猛火で打ち倒しに行かなければならないと痛感する。ひとごとではない。極右・日本会議内閣である安倍の改憲攻撃を粉砕する闘いは、倒すか倒されるかの決戦だ。頑張ろう。
(高田隆志)
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