入管法の改悪弾劾 使い捨て労働力の確保を狙った新在留資格で「現代の徴用工」に

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週刊『前進』04頁(2999号04面01)(2018/12/17)


入管法の改悪弾劾
 使い捨て労働力の確保を狙った新在留資格で「現代の徴用工」に


 改悪出入国管理法が12月8日未明の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。改悪入管法は2019年4月に施行されようとしている。

ベースは悪名高い「技能実習制度」だ

 新たな在留資格「特定技能」を2段階で設け、「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人には「1号」を与えるとされている。最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格することが要件だ。在留期間は通算5年で、家族の帯同は認めず、農業や介護など14業種での受け入れを想定している。
 さらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に与える「2号」は1〜3年ごとなどの期間の更新ができることになっている。更新時の審査を通過すれば更新回数に制限はなく、事実上の永住も可能となり、配偶者や子どもなどの家族の帯同も認められる。
 「特定技能1号」「2号」は「一定の専門性・技術を有し即戦力となれる外国人材」という建前だ。しかし、本質は単純労働力の受け入れである。技能実習制度の目的・趣旨の建前では、食堂の配膳などの単純作業をすることはできないことになっていた。しかし、宿泊業のように特定技能の対象となる業種であれば、食堂の配膳などの単純労働を行うことができる。こんな矛盾した仕組みなのだ。
 入管難民法などの改悪案は、在留資格の技能水準などを定めず、具体的な制度設計は法成立後の法務省令などで決めるという。法案には「法務省令で定める」との記述が30カ所を超える。大枠の法律を成立させた後、省令でいろいろな中身を詰め込む政府への「白紙委任」は憲法の根本を破壊するものだ。
 シャープ亀山工場で2900人が雇い止めされたように、外国人労働者が都合よく使い捨てにされるのは火を見るよりも明らかだ。
 「特定1号」の5割は技能実習生から移行する。ベースは「現代の徴用工」「現代の奴隷労働」と国際的非難を浴びている「外国人技能実習制度」なのだ。

3年間に69人もの生命が奪われた!

 法案が参院で強行採決されるその日の朝に2015〜17年の3年間で計69人の外国人技能実習生が死亡していたことが公表された。6日の参院法務委員会で、野党の要請に応えて法務省が関連資料を提出したのだ。
 年齢別では20代が46人、30代が19人で、10代が2人もいる。死因は心筋梗塞(こうそく)や急性心不全、くも膜下出血などだ。これは長時間労働による過労死、過労自殺である。
 野党が失踪した外国人技能実習生の聴取票2892人分(重複22人分含む)を集計したところ、じつに67%にあたる1939人が最低賃金未満で働かされていたことが判明。さらに月の残業時間が80時間以上の「過労死ライン」を越える長時間労働を強いられていたのは292人(10・1%)で、平均月収はなんと約10万8千円という低さだ。また、暴力やセクハラ、いじめなどの受け入れ側の不当な扱いによって失踪したと回答していた人は7割を超えていた。
 野党は国会質疑で、自殺したベトナム人技能実習生が遺した遺書に触れ、そこに書き記されていた差別、蹴られ殴られという虐待の事実を紹介した上で、「そういう人がいっぱいいるのに、これをどのように総括して、新しい制度に入っていかれるんですか? 総理にお聞きしたい」と追及した。これに対して安倍は「急にいま、示された、亡くなられた例については、私はいまここで初めてお伺いをしたわけでありまして、ですから私は答えようがない」と言い放ったのだ。許しがたい。

救済ではなく団結してともに闘おう

 昨年11月1日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図る」として技能実習法が施行されたが、日立製作所や三菱自動車などの大企業で実習生に単純労働をさせていたことが次々に発覚、福島第一原発事故の除染作業に実習生を従事させるなど、問題は拡大している。
 外国人技能実習制度は直ちに廃止されなければならない。まして、この悪名高い技能実習制度の上に積み上げようという「特定技能1・2号」の創設など絶対に認められない。
 外国人労働者は救済の対象ではない。団結して共に闘う仲間である! 労働者階級は一つだ! 分断を打ち破り、共に闘いぬく。
(合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀)
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