書評 コンビニ労働者組織化の必読書 コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏に隠された不都合な真実 コンビニ加盟店ユニオン+北健一〈著〉

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週刊『前進』04頁(3010号02面05)(2019/02/11)


書評
 コンビニ労働者組織化の必読書
 コンビニオーナーになってはいけない
 便利さの裏に隠された不都合な真実
 コンビニ加盟店ユニオン+北健一〈著〉


 セブンイレブンで働く河野正史千曲ユニオン組合員への「降格・減給」撤回は勝利しました。全国の同志に感謝とお礼を言いたいと思います。
 この闘いを通して見えてきたものは、本書のサブタイトルにもなっている「便利さの裏に隠された不都合な真実」そのものです。著者は「電通での過労死」など社会問題をテーマにした活動をしているジャーナリストの北健一さんとコンビニオーナーで結成された、コンビニ加盟店ユニオン(コンビニ関連ユニオンとは違います)の共著です。オーナーの立場から、コンビニ本部による極限的搾取の現実への怒りを込めた生々しい暴露となっています。

オーナーは奴隷

 「対等の独立自営業者」といった甘い言葉に乗せられ、いったん契約を取り結べば、その瞬間から「契約」に縛られた奴隷となる仕組みがわかります。経営手法や会計のノウハウの蓄積で雲泥の差のある両者は「対等」ではあり得ません。開店後に「こんなはずじゃなかった!」と悔やんでも遅く、本部(社員)は契約を盾にノルマ(自爆営業が必然となる)や仕入れ量、会計(その日の売り上げは全て本部に集中され、一円たりともオーナーの自由にならない)、果ては個人生活(子どもはつくるなとまで言われたオーナーも)まで介入し、まさに奴隷にされるのです。
 その象徴が24時間365日営業です。子どもの結婚式や病気になっても「知ったことではない」と本部(社員)は言い放つ例もあります。病院から抜け出して店に出た人の話も出てきます。また夜間の交通の少ない場所での営業は、犯罪の標的にすらなります。オーナーにとっては命と健康の問題なのです。
 それでも本部が24時間365日にこだわるのは、夜間にどれだけ売り上げが少なかろうが、人件費や光熱費がかかろうが、本部は痛くもかゆくもなく、全て店負担だからです。

驚きの会計制度

 何よりも驚くのは、本部に圧倒的に有利に作られた会計システムです。本来、小売り業者は売れ残りをなくしたいと思っています。しかし、コンビニは「機会ロス」と称してお客がいつ来ても購入したいと思う物が必ずあるようにするために、常に多めに仕入れさせます。でも、売れ残ったら本部はその費用は一切負担せずに店に負担させ、仕入れさせた分から規定のチャージ料をとるのです。毎日全国のコンビニから出される廃棄食品は400〜600㌧という膨大なものですが、それを負担しているのは、店のオーナーであり、消費者である労働者階級なのです。廃棄ロスを少しでも減らすために、賞味期限が迫った弁当などを見切り販売することも本部は妨害します。正規の値段で売れなければチャージ料が減るからです。
 クリスマスケーキ、おせち、恵方巻きなど過大なノルマから発生する廃棄問題も含めて、食べ物を捨ててもうけているのです。利益が出ないオーナーは人件費を削るしかなく、従業員を社会保険に入れることもできないのです。
 私たちが呼びかけている「コンビニ関連ユニオン」が掲げる、■24時間営業義務化廃止、■本部負担で店舗従業員に社保加入を、■「自爆営業」の根絶!——がいかに的を射たものであるかご理解いただけると思います。コンビニ関連労働者の組織化の必読書としてぜひ手に取ってみてください。こんな仕組みなのかと驚くことばかりです。
(旬報社 1296円)
評 坂本 泰信(地域合同労組・千曲ユニオン委員長)
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