天皇代替わりを弾劾する 労働者の団結と荒々しい闘いで「国民統合」の虚構を打ち破ろう

週刊『前進』04頁(3036号03面01)(2019/05/20)


天皇代替わりを弾劾する
 労働者の団結と荒々しい闘いで「国民統合」の虚構を打ち破ろう

(写真 天皇即位の祝賀キャンペーンを打ち破り、銀座メーデーデモに決起した全学連【5月1日】)

 4月30日の前天皇アキヒト退位と5月1日の新天皇ナルヒト即位をもって、「象徴天皇制」の維持・強化を狙う天皇代替わりが強行された。安倍政権はこの前後を異例の10連休とし、警察やマスコミを総動員した一大国家イベントとして大々的に「祝賀ムード」を演出した。「天皇のもとで国民は一つ」という虚構のイデオロギーで全社会を覆い尽くし、メーデーを圧殺して改憲・戦争への道を掃き清めようとしたのである。だが「天皇即位でメーデーをつぶすな!」を掲げた5・1銀座メーデーが堂々と闘いとられ、連合・全労連・全労協傘下の労働者も例年通りメーデーに決起したことで、安倍の狙いはその根幹で打ち破られた。

労働組合運動の解体狙う

 今回の代替わりは、前天皇アキヒトと安倍政権の合作による労働者階級人民への許し難い侮辱に満ちた攻撃だ。「代替わりを国民こぞって祝え」「天皇の足元にひざまずけ」という恫喝そのものであり、それ自体が憲法破壊のクーデター的暴挙にほかならない。
 そもそも現行憲法および皇室典範では、天皇の代替わりは天皇が死んだ時しか認めていない。にもかかわらずアキヒトが今回のような非常手段に踏み切ったのは、直接には高齢のために「象徴としての務め」と称する活動を続けられなくなったからだが、より本質的には天皇制(皇室)の維持・存続がかつてない危機に陥っていたからだ。
 安倍政権は、天皇によるこうした動きに当初あわてたが、すぐにこの代替わりを改憲攻撃と結びつけ、これを徹底的に利用して政権基盤の強化を図るとともに、「天皇のもとでの国民統合」を実現しようと狙った。安倍の意を受けたマスコミの報道が異常なまでの「天皇賛美」であふれ返った背景には、こうした悪らつな政治的意図があった。
 そしてこの攻撃の最も核心的な狙いは、労働組合を解体して戦前の産業報国会のような国策遂行機関へと再編することにある。5・1メーデー集会で動労千葉の田中康宏委員長が指摘したように、かつて大日本産業報国会の結成(1940年)が「皇紀2600年」の大祝賀運動と一体で進められ、社会全体が戦時体制下に組み込まれていったのと同じであり、改憲と一体で天皇のもとでの「階級平和」をつくりだすことが安倍政権の狙いなのだ。
 だが、天皇制を利用した安倍政権の攻撃は今や根本から打ち破られつつある。安倍政権が祝賀強制のために「10連休」としたことで日本中の非正規労働者の所得が総額556億円も奪われるとの試算(TBS『報道特集』4月27日)もあり、「仕事と賃金を奪うな!」「このふざけたお祭り騒ぎは一体何だ!」と労働者階級の奥深い怒りの声が沸き起こっている。
 そもそも天皇制による階級闘争の圧殺とは、戦前のように天皇の名のもとに弾圧や白色テロルを無制限に発動し、革命党や労働組合を血の海に沈めていくことによってしか成り立たない。だからこそ安倍政権は「現代の治安維持法」=共謀罪を成立させ、全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への大弾圧や沖縄・辺野古への新基地建設に伴う凶暴な国家暴力の発動に踏み込んでいるのだが、労働者階級の怒りと闘いを鎮圧することも、5・1メーデーを中止に追い込むこともできなかった。

共産党は天皇に屈服宣言

 5月1日に新天皇に即位したナルヒトは、直後に行われた「即位後朝見の儀」で、「時代に応じて求められる皇室の在り方を追い求めていきたい」と述べた。またアキヒトが即位時に使った「日本国憲法を守り、これに従って」という表現を、今回は「憲法にのっとり」と変更した。
 ナルヒトが安倍政権による改憲策動を視野に入れ、「護憲派」ととられかねない表現をあえて避けたことは明白だ。安倍の改憲と歩調を合わせつつ、「天皇のもとでの国民統合」を進めるために自らも積極的に行動することを宣言したのである。
 ところが、このような新天皇の即位に対し、かつて「天皇制廃止」を掲げていた日本共産党は、ただちに記者会見で「祝意を表します」と表明した。前回の代替わりでは反対した「天皇即位の賀詞」にも、9日の衆議院本会議で賛成した。志位和夫委員長は直後の記者会見で「憲法上の制度に基づいて新天皇が即位することに祝意を示すのは当然だ」と居直り、前回との対応の違いについては「当時は君主制の廃止を掲げていたが、2004年の綱領改定で考え方を変えた。今は天皇の条項も含め、現行憲法を遵守する立場だ」と転向を認めた。さらには「この問題(天皇制の存廃)で運動を起こすことはない」とまで念を押した。
 これは「憲法遵守」に名を借りた天皇制への全面屈服宣言であり、「天皇は日本国民統合の象徴」という憲法の天皇条項を認めたということだ。今の日本社会が階級社会であり、階級対立と階級闘争が厳然と存在する社会であることを党として否定したに等しい。
 まさに「労働者階級の党」から「国民の党」への転換を宣言した04年綱領が、共産党の歴史的転向の出発点となったのだ。だが少なくとも共産党は04年の時点では、憲法の天皇条項については「民主主義および人間の平等の原則と両立するものではない」として反対を表明していた。現在の共産党の立場は04年当時と比べても明らかに一線を越えており、「あの戦争をもたらした天皇制だけは許せない」との思いで共産党を支持してきた人々を平然と裏切って、右翼に遅れをとるなとばかりに天皇への忠勤を励んでいるのだ。これが「野党共闘」の正体だ。こうした中で、共産党は長年の支持者からも社会変革を願う若者からも見離され、4月統一地方選では議席・得票数ともに大幅減となった。
 天皇翼賛勢力に未来はない。そして今や、天皇制の対極で非正規職化と貧困に苦しむ青年・女性の怒りが解き放たれようとしている。杉並区議選での洞口朋子さん当選の感動的勝利と5・1メーデーの大成功を引き継ぎ、6・9国鉄闘争全国集会を意気高くかちとろう。「天皇のもとでの国民統合」を打ち破り、荒々しい労働組合の闘いを今こそよみがえらせよう。
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