今こそ闘う労働者の党を 天皇制に服従誓った日本共産党 機関紙「赤旗」で異例の大特集

週刊『前進』04頁(3046号03面01)(2019/06/24)


今こそ闘う労働者の党を
 天皇制に服従誓った日本共産党
 機関紙「赤旗」で異例の大特集


 日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」6月4日号は、「天皇の制度と日本共産党の立場」と題する志位和夫委員長のインタビューを掲載した。1、6、7、8、9面の5ページにわたる大特集である。安倍政権が天皇代替わりをフル活用し、マスコミを総動員して「国民こぞっての祝賀」を強要し、5・1メーデーを圧殺して改憲・戦争への突破口を開こうと全力で策動する中、日本共産党は国会での「賀詞」の決議に初めて賛成するなど積極的に天皇翼賛キャンペーンに加担した。今回の「赤旗」の大特集は、このような反動的・反労働者的振る舞いを全面的に居直り、今後も推進することを打ち出した歴史的な「転向宣言」である。

「君主制ではない」と強弁

 「この間の一連の動きへの対応で、私たちが指針にしてきたものが二つあります。一つは、日本国憲法の条項と精神です。もう一つは、2004年の第23回党大会で改定した日本共産党綱領です」----志位は冒頭、こう切り出している。
 そして、憲法で「天皇は国政に関する権能を有しない」と書いているから、天皇を「君主と呼ぶことはできない」と述べ、この憲法のもとでは「天皇とその制度」は「国民の全面的なコントロールのもとに」置かれている、と強調する。戦後の日本はそうした国民主権の国なのだから、旧綱領の「君主制の廃止」の文言を04年改定で削除したのは正しかったし、憲法上の制度である以上「天皇制」という呼称もふさわしくない、「天皇の制度」と言うべきだ、という。
 また志位は党綱領で「民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ」と書いている点について、「あくまで日本共産党としての『立場』の表明にとどめている」「つまり日本共産党としては、こういう『立場に立つ』が、それを改革の課題にすえ、その実現をめざして国民多数の合意をつくるために運動を起こしたりはしない」と念を押している。「将来、日本が社会主義的変革に踏み出した段階で、天皇の制度が存続していることがありうるか」との質問には、「存続していることはありうる」「かなりの長期にわたって天皇の制度と共存する」と答えている。
 要するに志位は「憲法の全条項を守る」と称して、遠い将来にまでわたる天皇制への恭順の誓いを立てたのである。だが、もしも志位の言う通り戦後の天皇制が「君主制」ではなく、社会主義のもとでも存続しうるというなら、04年綱領以前に天皇制を「ブルジョア君主制の一種」と規定し、その廃止を求めたのは何だったのか。戦後60年近くも認識を誤ったということなのか。これについて筋の通った説明は一つもない。
 志位は、「(当時は)昭和天皇が天皇の地位にあった」「昭和天皇は......憲法の制限条項を無視して、さまざまな国政への関与を行ってきました」「当時のわが党の天皇の制度に対する評価と対応には、こうした歴史的背景もあった」などと苦し紛れに弁解する。
 要するに、天皇の個性や言動によって「君主制」になったりそうでなくなったりするというのである。だが、そのように戦後憲法下でも天皇が依然として絶大な政治的影響力を持ち続けたということは、現在の天皇制が「象徴」という形をとった一個の君主制以外のなにものでもないということの証左ではないか。

階級対立・階級闘争を否定

 そもそも君主制とは、君主の統治権力の大小にかかわらず、特定の一個人を他の全国民の上に特別な存在として君臨させる統治形態のことである。明治以来の近代天皇制は、「天皇は神の子孫」「日本は天皇を中心とした神の国」といった前近代的・非合理的な「国体」思想を暴力的に全人民にたたき込むことを特徴とした、日本特有の世襲君主制である。現在の「象徴天皇制」は、その戦後的延命形態にほかならない。
 憲法1条の「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」という規定について、志位は「多様な人々によってまとまりをなしている日本国民を、天皇があくまで受動的に象徴すると理解されるべき」と主張し、この天皇条項を積極的に容認する。だが、なぜ「国民のまとまり」を天皇によって象徴されなければならないのか。そもそも今日の日本社会は階級社会であり、そこには搾取する者と搾取される者、抑圧する者と抑圧される者との階級対立と階級闘争が厳然と存在する。この事実を無視した「国民のまとまり」などまったくの虚構だ。
 安倍政権は、このような「天皇のもとで国民は一つ」という虚構で社会を制圧し、階級闘争を一掃して国家のもとに全人民を服従させることを狙っている。そこには「働き方改革」と称する戦後労働法制の解体と「労働組合のない社会」への転換、そして改憲・戦争で日本帝国主義の延命を図ろうとする悪らつな意図が貫かれている。改憲阻止決戦は、職場から闘う労働組合をよみがえらせることを軸にこの攻撃を粉砕し、その力で社会の根底的変革へと進む闘いである。
 今日の日本共産党には、かつて日本の人民を侵略戦争に動員し、アジア人民に地獄の苦しみをもたらし、それに抗して闘った人々をことごとく弾圧・虐殺し、戦後は何の責任もとらず延命した天皇制への怒りなど皆無である。それはあの戦争を阻止できなかったことへの反省も総括もないということだ。こんな党に戦争を止める力も社会変革の可能性もない。今こそ労働組合の荒々しい闘いを復権し、新しい労働者の党を歴史の前面に登場させよう。

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「赤旗」での志位の発言(要点)

「日本という国は、国民主権の国であって、君主制の国とはいえない」
「(現行憲法は)天皇とその制度を、国民の全面的なコントロールのもとにおくもの」
「(共和制実現をめざして)国民多数の合意をつくるために運動を起こしたりはしない」
「(社会主義のもとでも天皇の制度は)存続していることはありうる」
「憲法上の制度である天皇の制度に対して、儀礼的な敬意を払うのは当然だ」
「(憲法1条は)多様な人々によって、まとまりをなしている日本国民を、天皇があくまで受動的に象徴すると理解されるべき」

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