焦点 「AI導入」で労働者を大量解雇 全産別で非正規職化推進

週刊『前進』02頁(3049号02面03)(2019/07/04)


焦点
 「AI導入」で労働者を大量解雇
 全産別で非正規職化推進


 IT(情報技術)、AI(人工知能)導入による大量解雇攻撃が始まった。
 損保ジャパン(損害保険ジャパン日本興亜)は2020年度末までに、従業員を2割弱、4千人削減する計画を打ち出した。IT・ロボット化で、余った労働者は業種が全く違う介護事業などに配置転換し、退職金を上乗せする希望退職は募集しない。「いやなら自主退職しろ」ということだ。こうすることで人件費を年約100億円圧縮して収益を増やせるとする。
 1月、三菱UFJ銀行はIT・AIを全面的に導入した新店舗を学芸大学駅前(東京都目黒区)に開店した。1階には窓口がない。税金や公共料金などは自動受付機で支払う。タブレット端末や住宅ローンなどの相談ができるテレビ窓口を設け、カメラで顧客の行動を分析する。対面ブースは2階にあるが、まずはテレビ窓口に案内し、人件費を徹底的に抑える。現在の約500店のうち従来型の店舗は半分にし、グループの人員削減を23年度末までに1万人超に増やす。みずほグループも1万9千人の削減を発表した。
 銀行支店の大量廃店を描いて話題となったテレビドラマ「集団左遷!!」のような大量解雇・大合理化が行われようとしている。
●「職員を半減できる」
 「30年ごろには、労働人口の49%が自動化される可能性がある」。野村総合研究所と英オックスフォード大の報告書はAIが取って代わると脅した。残った業務の大半は別会社、派遣会社の非正規職、フリーランス(個人事業主)に置き換えられる。「AI万能」を説いて「カネがすべて」の資本の論理で労働者を諦めさせ、抵抗する意思を奪うキャンペーンだ。
 攻撃の先端を狙うのはJR東日本だ。「自動運転」を掲げて運転士・車掌を廃止し、全現業業務を子会社に移そうとしている。労働者の総非正規職化であり、今以上の安全崩壊となる。この攻撃を許したら国鉄分割・民営化と同様、JRをモデルに全産別で攻撃が横行し、「非正規職だけの社会」にされる。
 自治体の攻撃も同じだ。6月22日、財務省の審議会は、AIで事務作業を効率化し25年には自治体職員を3万人減らすよう求めた。総務省が昨年発表した自治体戦略2040構想では、業務の統廃合とAI・ロボット化、民営化で職員を半減することが打ち出され、法整備の準備が進められている。100万人規模の削減であり、地方自治と地域社会の根幹からの破壊だ。単年度で解雇される会計年度任用職員制度がその導水路とされる。
 こうした雇用破壊のキーワードが「人口減少」「労働力不足」であり、「AIが活用されれば労働生産性の向上を通じ経済成長の基盤となる」(6月27日付労働政策審議会・部会報告)と主張する。AI合理化による労働者の大量解雇・リストラと強搾取だ。
 しかし首を切られ生活を破壊される労働者の怒りは必ず爆発する。動労千葉―動労総連合を先頭に全産別で闘いが広がっている。
●「解雇自由」を許すな
 経団連やトヨタ資本が言う「終身雇用制は維持できない」とは、「雇用の流動化」=大量解雇のために規制を撤廃して「解雇自由」にするものだ。兼業を含む広義のフリーランスの労働者は1千万人を超えたという。資本との契約打ち切りは即解雇だ。労政審では、解雇撤回の争議に対し資本の側が金を出せば争議を終わらせることができる「金銭解雇制度」の議論が進められている。
 資本がいつでも自由に首を切れるなら、労働者の団結は危機にさらされ、労働条件は徹底的に切り下げられる。組合破壊の不当労働行為は野放しになる。
 安倍政権が参院選直後から一気に突進しようとしている改憲攻撃と「働き方改革」は、労働者階級に対する2大反革命だ。改憲と解雇を許さない労働組合の絶対反対の闘いが燃え上がる時が来た。国鉄1047名解雇撤回闘争を先頭に、解雇絶対反対、解雇撤回の闘いを巻き起こそう。

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