被収容者が命がけのハンスト 牛久入管の劣悪処遇に抗議

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週刊『前進』02頁(3049号02面02)(2019/07/04)


被収容者が命がけのハンスト
 牛久入管の劣悪処遇に抗議

(写真 6月20日の「世界難民デー」に行われた東京入管包囲デモ。前列で横断幕を持つ右から2人目が田中喜美子さん【港区】)


 5月初旬以来、東日本入国管理センター(牛久入管収容所)で、長期収容と劣悪な処遇に抗議する被収容者の命がけのハンガーストライキが闘われている。「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子さんの報告と、6月19日に牛久入管収容所に提出された同会の申し入れ書(抜粋)を紹介します。(編集局)

 現在、牛久入管収容所で、被収容者たちのハンガーストライキが闘われています。際限のない長期収容で精神的・肉体的に病気を抱え込んでいる人々が、処遇の改善要求と「長期収容をするな!」「仮放免を認めろ!」「入管に殺されてしまう」と、次々にハンストに入っています。
 牛久入管では、2010年に日系ブラジル人と韓国人が自殺、14年にイラン人とカメルーン人が病死、17年にベトナム人が病死、そして18年にインド人が自殺と、異例の多さの死亡事件が続いています。
 18年2月28日、法務省入国管理局長名で出された「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に関わる適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について(指示)」以降、仮放免が厳しく制限され、長期収容が常態化しました。牛久入管では、18年12月31日現在で、6カ月以上の長期収容者が全収容者325人のうち306人でした(法務省資料)。5年以上収容され続けている被収容者がいます。2年、3年の被収容者は数多く存在します。
 収容されている人々はいわゆる「犯罪者」ではありません。難民申請者が多く、国籍国には戻れない事情を持っている人々です。中にはかつて犯罪を犯し、刑期を全うした方もいます。日本人なら刑期が終われば「自由の身」になりますが、外国籍者はたとえ日本で生まれ育ち、日本人の妻子がいても強制送還のために入管に収容されます。
 今続いているハンストは、最初に始めた方が50日を超え、非常に体調が悪化しています。6月24日、大村収容所で長期にわたってハンストをしていたナイジェリア人が衰弱により死亡しました。牛久入管の20人以上のハンスト者たちの健康状態が案じられます。
 21歳でイランから羽田に着き難民申請し、収容所の中で23歳になった若者Aさん。トルコから成田に着き「自国の庇護を求めない!」とパスポートを破り捨てた難民申請者で3年収容のBさん。6年前に成田に着き難民申請したが牛久に収容、その後仮放免になったが生きるために仕事をして入管に摘発、再収容されたCさんは、「日本に難民申請して6年のうち5年間は収容所だ!」と訴えます。こうした人々がハンストを行っています。
 日本政府、入管当局は最長でも6カ月以上の長期収容はやめ、仮放免を適用し、安定的ビザを出すべきと思います。

長期収容をやめ仮放免を
「牛久入管収容所問題を考える会」申し入れ書

 貴センターにおいて5月初旬より、1人のイラン人がハンストに入りました。そして、その後次々にイラン人がハンストに入り、他の国の方も同調してハンストを始めています。すでに10人以上の被収容者が、自らの命を削って自分たちがおかれている境遇について、何故いわゆる「犯罪者」でもないのにいつまでも収容=拘束されるのか、と抗議をしています。
 「人身の自由は人権の中でも最も重要かつ基本的人権である。裏返せば人身の自由の制約は生命の剥奪に次ぐ最大限の人権制約のひとつであり、人身の自由の保障は最大限に認められなければならないし、その制約は最小限でなければならない」。貴センターでの長期収容の現実・実態は、この国際人権法からほど遠いと言わざるをえません。
 長期収容者の被収容日数は増加の一途です。3年以上の長期収容者が増加し続けています。終わりなき長期収容に絶望感を募らせ、精神的・肉体的に健康を害している方がほとんどです。難民申請者や家族が日本にいる方など「国籍国に帰ることが出来ない」被収容者たちに柔軟な仮放免の適用をお願いします。
 残念ながら、昨日18日より通常は使用されていない6Bブロックという懲罰房にハンストを行っている方々を移動させました。居室内にテレビは無し、鍵のかかった居室から廊下に出ることも認められない(フリータイム無し)、運動時間もない、シャワーだけが認められている、というものです。ハンスト40日を超え体重が激減している方など、医務室に隣接された静養室=病舎に収容されていた方を含め、懲罰房ブロックに押し込める。このような処遇は益々ハンスト者たちを精神的にも肉体的にも追い詰めるものです。病舎のベットに横たわっていて不完全ながらも医療関係者の注意も向けられていた方を6Bの独居もしくは2人部屋に収容するなどは暴挙としか言えません。
 出入国在留管理庁下での各入管収容施設での処遇環境、長期収容の実態は日本も批准している難民条約の精神に照らし合わせても到底看過できない状態と言わざるをえません。
 外国籍者ということだけで無期限収容を続ける事はやめるべきであり、仮放免制度を柔軟に適用し、長期収容者が大量に滞留している状態を一刻も早く改善することを申し入れます。
 ハンスト者達の健康に充分注意し、彼らが不利益を被らないよう重ねて強く申し入れします。

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