最高裁が再審取り消し 大崎事件 安倍人事の暴挙許すな

週刊『前進』04頁(3050号04面01)(2019/07/08)


最高裁が再審取り消し
 大崎事件 安倍人事の暴挙許すな


 6月25日、最高裁第一小法廷は、1979年の大崎事件の「主犯」とされ、殺人罪などで懲役10年の刑に服役した原口アヤ子さん(92)の再審請求を認めない決定をしました。絶対に許せません。
 大崎事件では、すでに地裁で2回、高裁1回と三つの裁判体が再審を決定しています。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則は再審制度にも適用されるべきとの判断を示した75年の「白鳥決定」以降、地裁と高裁の再審決定を最高裁が棄却するのは初めてです。差し戻しでさえなく、下級審が何を言おうと最高裁が勝手に破棄自判して棄却するとは、それ自体が事実上の改憲にも等しい、戦争に向かう戦時司法の一環としての大攻撃だと思います。しかも決定を下した5人の判事は安倍の送り込み。木澤克之判事は加計学園監事から最高裁判事になりました。
 そもそも大崎事件は、警察・検察が事故を「殺人事件」にでっち上げたものです。死亡した男性は遺体発見の3日前に泥酔して用水路に転落、倒れているところを近所の人に救助され自宅に届けられた後、行方不明になっていました。鹿児島県警はこれを「殺人事件」として同じ敷地に住む男性の長兄と次兄を逮捕しますが、2人は事件当夜は親戚の結婚式に出席していたことなどが判明。警察は2人による「犯行」が困難と知るや次兄の息子と長兄の妻のアヤ子さんを逮捕し、強引な取り調べで長兄・次兄・甥に「自白」をさせ、検察は一貫して容疑を否認するアヤ子さんを主犯として起訴し、鹿児島地裁はわずか半年で有罪判決を出しました。その後、3人ともうその自白だったと証言していますが、長兄は病死、次兄と甥は自殺しています。
 佐賀県の麓(ふもと)刑務所に服役したアヤ子さんは、家族への手紙の中で「夏は工場で38・5度、冬は雪の寒さ」と訴えますが、厳しい環境の中でも模範囚でした。刑務所は「罪を認めるように」と3回にわたり「仮釈放のため反省文を」と迫りましたが、アヤ子さんは拒否して満期で出獄。その後も不屈に再審を求め闘ってきました。
 今回の棄却は星野再審闘争への攻撃でもあります。2017年7月の四国地方更生保護委員会への第1回申し入れの時、岩井信弁護士は「大崎事件で、検察は今まで存在しないと言っていたフィルムをもう一回捜したら『ありました』と出してきた。証拠開示が再審開始を決定した事例です。鹿児島地裁は心理学鑑定の意義を明確にしたうえで証拠として採用している。(星野再審の)厳島行雄先生による心理学鑑定の新しい可能性を切り開くと思います」と語りました。
 星野再審は大坂正明さんの裁判と一体で新たな証拠を開示させようとしています。大崎事件・原口アヤ子さんと連帯し、この闘いを粘り強く闘います。
(群馬 田島俊昭)

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▼大崎事件 1979年10月、鹿児島県大崎町の農家の牛小屋から、この家に住む男性(当時42歳)の遺体が見つかった。警察は殺人や死体遺棄などの容疑で原口アヤ子さんら4人を逮捕。81年に原口さんに懲役10年が確定した。原口さんは90年に出所し、95年、2010年、15年と3度にわたり再審を請求。第3次請求は17年の一審、18年の二審ともに認められた。

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