自民党改憲案4項目を斬る②国家緊急権の導入 狙いは独裁確立と戦争動員 憲法停止する緊急事態条項

週刊『前進』02頁(3053号01面03)(2019/07/18)


自民党改憲案4項目を斬る
②国家緊急権の導入
 狙いは独裁確立と戦争動員
 憲法停止する緊急事態条項


 安倍・自民党が狙う改憲4項目で、憲法9条の破壊と並んで最も重大なのが、「緊急事態条項」の導入である。自民党はこれについて、単なる「災害対策」が目的であるかのように宣伝しているが、本当の狙いは政府独裁の確立と全人民の戦争動員にある。

人民の自由と権利を圧殺

 緊急事態条項とは、いわゆる「国家緊急権」に相当する。一般に国家緊急権とは、戦争、内乱、災害などの非常時に政府が「緊急事態」を宣言すれば、憲法の効力の一部または全部を停止し、政府があらゆる権限を行使できるようにするものである。政府が国会の議決を経ずに法律と同等の効力を持つ命令(政令)を出すことに始まり、令状によらない逮捕や家宅捜索、裁判なしでの処罰、言論・表現の統制、団体の解散、集会・デモ・ストライキの禁止、選挙の中止や議員任期の延長などが可能となる。平時には順守されるはずの法秩序や民主的諸制度の一切が転覆され、人民の自由と権利はことごとく踏みにじられるのである。
 戦前の日本で乱発された天皇の名による「緊急勅令」や、軍隊が出動して国内を軍事制圧下に置く「戒厳令」なども国家緊急権の一種である。また1930年代のドイツで、首相の座についたナチス・ヒトラーが、敵対する共産党や社会民主党、労働組合などを弾圧するために用いたのも、「大統領緊急令」と呼ばれる国家緊急権条項(ワイマール憲法48条)だった。さらにナチスは、憲法も国会も無力化して一切の権限を政府に付与する「全権委任法」を成立させ、無制限の独裁を樹立した。近年、副首相兼財務相の麻生太郎が「ナチスの手口に学べ」と語ったのは、国家緊急権の規定を憲法に導入し、それを使ってナチスのような独裁権力への道を開けという意味である。
 現行の日本国憲法には、このような国家緊急権に相当する規定が一切存在しない。このことは、「戦争放棄」を規定した9条と並んで戦後憲法の最も顕著な特徴をなしている。国家緊急権は全人民の戦争動員をもたらすものであり、戦後憲法が戦争を放棄した以上は国家緊急権も放棄するほかなかった。だからこそ安倍・自民党は9条破壊と一体で、「戦争する国」に不可欠な緊急事態条項の導入に執着しているのだ。

政府への絶対服従強いる

 自民党が改憲4項目の一つとして掲げる「緊急事態条項の導入」とは、具体的には「64条の2」「73条の2」の新設だ(表)。そこでは「大地震その他の異常かつ大規模な災害」に際し、議員任期の延長(64条の2)と、国会の議決によらない内閣による「政令」を出せるようにすること(73条の2)が規定されているが、「異常かつ大規模な災害」は自然災害に限定されない。戦争やテロ、大規模なデモ、暴動、ゼネストなどの際も、政府の恣意(しい)的な判断で緊急事態宣言を出せる仕組みだ。
 また「政令」とは政府による命令すなわち行政命令のことだが、現行憲法は内閣の行う事務の一つに「政令を制定すること」を規定した上で、「政令には......罰則を設けることができない」とただし書きを付けている(73条6項)。ところが自民党の改憲案「73条の2」では、これとは別に新たに「政令を制定することができる」と書かれ、そこには何のただし書きもない。これでは、緊急事態には罰則付きの政令も出せることになる。
 もともとこの緊急事態条項は、2012年に自民党が発表した改憲草案(表)を原案としている。そこではもっとあからさまに、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」とされ、「緊急事態が発せられた場合には、何人も......国その他公の機関の指示に従わなければならない」として国民の絶対服従を義務付けている。これについて自民党のパンフレット「日本国憲法改正草案Q&A」は、「現行の国民保護法において、こうした憲法上の根拠がないために、国民への要請は全て協力を求めるという形でしか規定できなかったことを踏まえ......国民の遵守(じゅんしゅ)義務を定めたものです」と、その狙いをあけすけに述べている。
 国民保護法は安保戦争法と連動し、「有事」の際に自衛隊の作戦に住民を「協力」させ、国家による土地・家屋の収用や食料・医薬品などの物資統制も規定している。これらを暴力的に行うために、憲法の緊急事態条項=戦争動員条項が必要となるのだ。その根底にあるのは、労働組合が戦争絶対反対で決起することへの恐怖にほかならない。このことを徹底的に暴き出し、改憲を阻止しよう。

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▼改憲4項目に含まれる緊急事態条項
 64条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、......選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は......各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
 73条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める......時は、内閣は......政令を制定することができる。
 2 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
▼自民党改憲草案(2012年)の条文
 98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において......緊急事態の宣言を発することができる。
 99条 緊急事態の宣言が発せられた時......内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができ......内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
 3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も......国その他公の機関の指示に従わなければならない。

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