自民党改憲案4項目を斬る④地方自治の破壊 自治体を戦争動員の機関に 議会制民主主義の形骸化も狙う

週刊『前進』02頁(3057号02面01)(2019/08/01)


自民党改憲案4項目を斬る
④地方自治の破壊
 自治体を戦争動員の機関に
 議会制民主主義の形骸化も狙う


 自民党改憲案「4項目」の「参院選合区解消・地方公共団体」の項について、「あえて憲法に明記する必要はなく、野党を改憲論議に巻き込むためのもの」と軽視する議論がある。しかしそれは大きな間違いだ。9条破壊と共に、戦争への「歯止め」を外し「戦争する国」に変える極めて重大な攻撃である。

参院解消・一院制も視野に

 安倍が「参院選合区解消・地方公共団体」を「改憲4項目」の一つとしたことには大きな意味がある。
 「参院選の合区解消」とは、参議院の選挙制度の転換を契機に、参議院の位置付け、あり方全体を変えるものだ。これまでの参議院ではなくなる。最後は国会の二院制を解体して「迅速で効率的な審議・政策決定ができる」一院制にすることまで狙っている。
 国会の多数を占める与党が、現行以上にほとんど審議時間なしの一院での強行採決を行うだけで、海外派兵法案、戦時予算案、治安弾圧法案、労働法制改悪などなんでも短時間で独裁的に成立させることができるようになるということだ。
 自民党は昨年3月に決めた「改憲4項目」の「条文素案」(表参照)に沿って、今年2月に「条文イメージ(たたき台素案)Q&A」を示した。
 そこでは「参院選の合区解消」として、参議院議員は各都道府県から少なくとも1人を選出できると明記し、「1票の格差の是正」として2016年参院選から始まった鳥取と島根、徳島と高知の各選挙区の合区を禁止すべきとする。その立場から「最高裁が重視する人口比例が追求されてきた結果」起こった「投票率の低下」などの弊害を列挙して最高裁を批判。参議院のあり方を考える上で都道府県の住民の意思を反映させることが重要だとして、改憲を主張している。
 参議院―両議院の選挙制度を改憲案に明記することは、単に「合区解消」で自民党が有利になるように選挙制度を変更することにとどまらない。参議院議員が国全体ではなく都道府県の代表に変わるなら、参議院の位置付け、二院制の根幹が問題になる。自民党の「改憲草案Q&A」(13年10月改訂)では、「党内論議では一院制を採用すべきとの意見が多く出された」が、「今後、二院制のあり方を検討する中で一院制についても検討する」と明記している。明らかに参議院の解消・一院制に向けた水路とされているのだ。

「国と地方は対等」を否定

 「地方公共団体」の項は、「地方自治の本旨」として、「国と地方自治体は対等」「地方自治は住民の意思に基づいて行う」ことを核心とする戦後の地方自治制度を解体し、国が絶対的な権限を持つ道州制への転換を狙う。戦争国家化そのものである。
 現行憲法の第8章「地方自治」の92条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」としている。
 これに対して「改憲草案Q&A」は、これまで「地方自治の本旨」という文言が定義なしに用いられてきたからそれを明確化するという。しかしその中身は、基礎的な地方自治体(地方公共団体)及びこれを包括する広域地方自治体(同)の二層制を基本とし、その「種類は法律で定める」というものだ。「地方自治の本旨」は否定される。それどころか道州制について、今回の草案には盛り込まなかったが「道州」は広域地方自治体に当たるから、法律だけで道州制の導入が可能となるというのだ。
 戦後の地方自治制度は、9条と共に、国が行う戦争に対する「歯止め」とされてきた。住民が国に抗して命と生活を守り、戦争を拒むことができるものと位置づけられてきた。道州制はこの地方自治を否定し、明治憲法下のような戦争国家体制に変える。
 道州制では、絶対的権限を持つ国のもとに、これまでの都道府県ではない九つほどの道州が地方政府として置かれる。市町村などの基礎自治体は住民支配と徴税、戦争動員のための下部組織に変わる。軍事・外交は国の専権事項とされ、沖縄の新基地建設反対の闘い、原発立地自治体の原発反対の闘いなどは国家の強権で潰される。絶対に許してはならない。

公務員の労働三権の全面的剝奪狙う

 自民党改憲案は、9条破壊をはじめ全てが戦争と戦争国家化への突進のためのものであるとともに、日本帝国主義の絶体絶命の危機と労働者人民による革命への恐怖を表している。
 その証拠に、改憲草案は公務員の労働基本権(労働三権)の制限の項目を新設し、「権利の全部又は一部を制限することができる」とした。そのことについて「改憲草案Q&A」は「現行憲法下でも......公務員の労働基本権は制限されていることから、そのことについて明文の規定を置いた」と説明している。
 しかし公務員の労働基本権の否定は、戦後革命以来の闘いと不可分だ。官公労働者は戦後革命の中心を担った。その労働運動弾圧・スト禁圧攻撃としてかけられたのが1948年7月の「政令201号」だった。官公労働者の労働基本権を制約してスト権(争議権)と団体交渉権・労働協約締結権、政治活動の自由を奪った。明確な憲法違反だ。それ以降、闘いは常に労働者の団結、労働組合と労働基本権をめぐる攻防としてあった。国鉄分割・民営化以来、国鉄闘争は闘い続けられ発展している。
 安倍の改憲・戦争、「働き方改革」は、JRの第3の分割・民営化と全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部への大弾圧など、すべてが「労働組合のない社会」にする攻撃だ。関生弾圧は労働組合が労働基本権を行使して闘うこと自体を刑事弾圧する不当不法極まりないものだ。しかしそこにかけざるをえないほど日帝は危機にある。
 今や労働者は労働組合に団結し、ストライキを最大の武器に闘いぬく。国鉄闘争を先頭に関生弾圧を粉砕し総決起する時が来た。戦後革命以来の闘いを引き継ぎ、日帝・安倍政権を打ち倒そう。自民党改憲案を粉砕しよう!(おわり)

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■現行憲法 4章 国会/8章 地方自治
4章47条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
8章92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
■自民党改憲「条文素案」(2018年3月)から
47条 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときには、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部または一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。前項に定めるもののほか......(以下現行と同じ)
92条 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに......(以下現行と同じ)

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