「幼保無償化」条例に反対 洞口杉並区議が意見表明 公立つぶしと民営化が狙い

週刊『前進』02頁(3061号01面02)(2019/08/22)


「幼保無償化」条例に反対
 洞口杉並区議が意見表明
 公立つぶしと民営化が狙い

(写真 阿佐ケ谷再開発反対を訴えるボードを持ち、区民に訴える洞口区議【8月2日 杉並区役所前】)

 8月2日、東京・杉並区議会で、「幼保無償化」と称して公立保育園の民営化を推進する条例案が審議され、これに対して都政を革新する会・洞口朋子区議が反対演説を行った。演説の要旨を紹介します。(編集局)

消費税10%化の布石

 安倍政権は10月から消費税の10%への引き上げとともに「幼児教育・保育無償化」を始めようとしています。しかし、国が財政を出すのは今年度のみであり、すでに国は「無償化を2年で見直す」ことも示唆しています。「消費税10%をのませるためのペテンでは?」との声も聞きます。「無償化」とは聞こえがいい言葉ですが、実際には公立保育園・幼稚園・こども園をつぶして民営化したり、公立・民間を問わず職員の非正規雇用の拡大につながると考えます。
 政府は3〜5歳児の認可保育園・幼稚園・こども園の利用料を無償化し(給食費は保護者負担のまま)、住民税非課税世帯(低所得世帯)だけは0〜2歳児も無償化の対象とするとしています。一方、認可外保育施設やベビーシッターなどにも利用料を補助し、施行から5年間は国が定める保育士の数や施設面積などの基準を下回る施設も認めるとしました。
 先日、都内で働く保育士から次のような連絡がありました。 「幼保無償化になると、みんなが預けたくなりますよね? 受け入れる体制はありますか? 働く保育士の確保が出来ますか? 規制緩和で定数に対しての保育士の数も減らされているので、安全を守るのも難しくなっています。施設も園庭や室内の走るスペースがなかったり、子どもたちが楽しく遊ぶ環境がありません。汚れ物まで洗うなど雑用の負担があり、本当に大変です。高所得の人まで無償化する必要があるのかも疑問です。そのぶん子どもたちに必要な絵本などの遊具を買ったり、保育の質を高めるために使わせてもらえたらと思います」
 最大の問題は、公立認可園の無償化費用は国ではなく自治体の全額負担となることです。私立園やベビーシッターなどの費用も国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1を負担する。その結果、自治体ではこれまで以上に「経費削減」が叫ばれ、民営化による「安上がりな保育」が進められることは容易に想像できます。

保育士を使い捨てに

 田中区長は「『子育ては親の責任』というのが私の持論。保育は女性の社会進出など社会の変化に合わせて整備すべき。食材費は当然にも親が持つべき。親が働くのは家族や子どもを養うためだ。今回、食材費を認可保育園でとらないのは、事務員を雇うなどのコストが少なくて済むからだ」と発言しました。ギリギリで子育てをしている労働者、人員削減で現場で大変な苦労をしている保育士のことよりも、「いかに安く済ませるか」しか考えない区長の発言に強い憤りを感じます。
 保育の質や安全は、働く人たちの待遇・環境にかかっています。保育士が大切にされない社会は子どもたちも大切にされません。
 定員の2倍近くの子どもを預かり、80人の子どもに三十数人分の給食を分けて与え、幼児のおかずがスプーン1杯しかなかったという兵庫県姫路市の認定こども園「わんずまざー保育園」の実態は、民営化と子ども・子育て支援制度の問題点を浮き彫りにしました。保育士に対しては裏の雇用契約書が存在し、月給制なのに祝日分減額、欠勤や遅刻・早退で1万円給与減額、無断欠勤すれば7日間、30分以上の遅刻は2日間のただ働き、保護者を待たせたら10日間のただ働きと「お客様宅にて謝罪」などを強制していました。保育士は「園長には何を言っても却下され」「過酷な勤務で心身はボロボロ」となり、辞めることさえ許されなかったといいます。
 幼保無償化は子どもたちの安全破壊や保育士の使い捨てにつながります。幼保無償化の狙いは公立保育園つぶしと民営化です。これらの理由から、幼保無償化に反対します。
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