軍事費要求、過去最大に 米国製兵器を大量購入 自衛隊の侵略軍隊化狙う安倍

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週刊『前進』04頁(3066号03面04)(2019/09/09)


軍事費要求、過去最大に
 米国製兵器を大量購入
 自衛隊の侵略軍隊化狙う安倍

(写真 海自護衛艦「いずも」)

 12月に編成する予定の2020年度予算に向けた各省庁の概算要求が出そろった。防衛省の要求額は6年連続で過去最大を更新し5兆3223億円となった。昨年12月策定の「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(中期防)」に基づく安倍政権の大軍拡戦略を背景としたものであり、要求額は中期防の想定をも上回った。
 「いずも」型護衛艦の空母化のための改修工事には31億円を計上。同艦に搭載することを前提とした米国製ステルス戦闘機F35B(6機)の購入費用846億円、F35A(3機)の購入費用310億円、迎撃ミサイルSM3ブロック2A購入費用303億円、そして陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」導入に向けた関連費用122億円をそれぞれ計上した。
 これら米国製兵器の調達は、いずれも「対外有償軍事援助(FMS)」と呼ばれる米政府との政府間取引によって行われ、価格も納期もほとんど米政府の意向で決定される。FMSの契約額は安倍政権下で激増し、今回の概算要求では5013億円が見積もられた(12年度の契約額1380億円の約3・6倍)。
 安倍政権は、こうした米国製兵器の大量購入で改憲を先取りする自衛隊の侵略軍隊化を急ぐ一方、戦闘機F2の後継機の開発を日本主導で行うための費用を概算要求に盛り込むなど、国内軍需産業の育成と日本独自の軍事大国化をも進めようとしている。

「敵基地攻撃能力」の保有へ踏み込む

 この間の安倍政権による大軍拡戦略の特徴は、自衛隊サイドからの要求というよりも、政権中枢や自民党国防部会をはじめとする極右改憲勢力の意向を強く反映しているところにある。昨年の防衛大綱も、以前のように防衛省が原案を作成するのではなく、安倍を議長とする国家安全保障会議(NSC)とその事務方に位置する国家安全保障局によって策定された。
 それは自衛隊の軍事力の単なる量的増強にとどまらず、明らかにその質的転換を意図したものである。すなわち、これまで憲法9条のもとでの「専守防衛」という建前から保有できないとされてきた「敵基地攻撃能力」を積極的に容認し、他国への先制攻撃をも可能とするような攻撃的兵器の導入・開発に本格的に踏み込んだ。「いずも」型護衛艦の空母化や、射程500〜900㌔の対地・対艦ミサイルの導入(戦闘機に搭載すれば長距離戦略爆撃機と同等の能力を持つ)などがその典型である。
 また今回の概算要求では、「宇宙・サイバー・電磁波」といった新領域の強化に重点的に予算があてられており、陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)に80人規模の「電子戦部隊」を新設し、他国の防空レーダーを妨害電波によって無力化する「スタンドオフ電子戦機」の開発予算として207億円を要求している。また米軍が新設した「宇宙軍」から指導教官を招き、航空自衛隊に「宇宙作戦隊」を創設、宇宙空間を常時監視する体制をとる。いずれも他国に先んじて攻撃を仕掛けるために必須不可欠となるものだ。

陸上イージス配備に住民の怒り拡大

 イージス・アショアをめぐっては、陸自新屋演習場(秋田市)への配備が「最適」だとする防衛省の報告書に事実と異なるデータ(事実上の改ざん)が記載されていたことが発覚、演習場のある秋田市勝平地区を中心に住民の反対運動が大きく高揚している。7月参院選では、安倍と菅義偉官房長官が2回も現地入りする異例のてこ入れにもかかわらず、自民党候補が敗北して配備反対派が当選。安倍政権に衝撃を与えた。
 だが今回の概算要求では、配備のめどが立たない中で関連部品の購入費を計上した。取得費は1基あたり1254億円、配備後30年間の維持費も含めると2基で総額4492億円が見積られている。
 イージス・システムは、弾道ミサイルを大気圏外で迎撃するための兵器として開発され、高性能レーダーや迎撃ミサイル発射装置などで構成される。大気圏内での迎撃を目的としたPAC3(地対空誘導弾パトリオット3)とは異なり、イージス・アショアのレーダーは中国やロシアの領土のかなりの部分を圏内に含むことになる。しかも実際には、超音速で飛行するミサイルの「迎撃」など物理的にほとんど不可能だ。本当の狙いは迎撃ではなく、高性能レーダーを用いた他国への先制攻撃にある。
 侵略戦争を準備し、改憲・大軍拡と一体で増税と社会保障削減を進める安倍に、労働者民衆の怒りの声をたたきつけよう。
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