韓国ドラマ「錐」に感動 スーパーの労組結成と闘い描く

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週刊『前進』04頁(3072号02面03)(2019/09/30)


韓国ドラマ「錐」に感動
 スーパーの労組結成と闘い描く




 大手スーパーマーケットの労働者が組合を結成し労働争議を闘う、韓国のテレビドラマ「錐(きり)」を観た。錐というのは、とがった先端で穴をあける大工道具のこと。その錐のように「職場の中で必ず飛び出してくる者がいる。その一人から職場全体にどう団結を広げて闘っていくのか」というテーマだ。学ぶこと大だった。現場で奮闘する多くの人に観てもらいたいと思った。
 1話1時間ほどで12話のドラマは、韓国では2015年に放送された。当時ネット上で150万件も書き込みがされるほど共感を呼んだ。03年にフランス大手スーパーの韓国店舗で実際に起きた解雇撤回争議が元になっている。
 食品売場で働く女性労働者を中心に、なぜ、どのようにして労働組合を立ち上げ、組織を拡大していったか。資本の卑劣な攻撃、職種や正規職・非正規職の分断をいかにのりこえて団結を固め、解雇撤回を勝ち取っていったかを描く骨太のドラマだ。「闘争(トゥジェン)」「団結(タンギョル)」といった言葉が何度も出てくる、こんなドラマが放送されたこと自体が驚きだ。16年ろうそく革命に至る韓国の社会状況が生んだと言える。
 ドラマは、経営幹部から部長・課長に、正規職の店員を契約社員、派遣社員に置き換えるために「どんな手を使ってでも追い出せ」と厳命が出されるところから始まる。それに対して韓国軍の元将校で課長職の主人公が、首切りの先兵となることを拒んで労働相談所を訪ねる。そこの所長とのやり取りとスーパーでの闘いを中心に、別の非正規職の争議のエピソードなどを交えて話が進む。

労働者の団結とは

 ドラマを通して、労働組合の結成と闘いの進め方についての原則的な考え方が示されていく。確かに理不尽な資本の攻撃に対する闘いは切っ先となる一人から始まる。しかし「正義を貫く」一人の決起で満足したり、代行主義におちいってはだめだ。さまざまな事情を抱えて働く労働者一人ひとりが「それでも生きていかなければならない」と、職場集会、議論と行動を通して団結を拡大していく。地域の別の労働組合の労働者が闘争支援に駆けつける場面は感動的だ。
 組合員への講義の場面がおもしろい。労働法の解説に始まり、会社はなぜ派遣や下請け、非正規雇用を増やそうとするのか、これに対し労働者が団結して闘うことの意義が繰り返し説明される。わかりやすい。教科書のようだ。これだけでも観る価値がある。
 ドラマは熱を帯びて進行していく。組合員を標的とする賃金カット、傷害事件のでっち上げなど資本のつぶし攻撃が本格化し団結が問われる。組合から脱退する同僚を「裏切り者」として断罪し排斥するのか、それとも再び組合に戻ってくる余地を残すのか。何度も激しく議論される。ストライキ方針をめぐっても現場の怒りと団結の問題として執行部に厳しい選択が迫られる場面が出てくる。ことは具体的であり型どおりの「正解」などない。考えさせられる。
 現実の闘争を闘った人たちが民主労総の律動隊として11月日比谷集会に登場していたと聞いていっそう感動した。闘いは旭非正規職支会に引き継がれている。
 レンタルビデオやアマゾン・プライムビデオで観ることができます。ぜひご覧ください。
(大迫達志)

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