日本郵政、NHK番組に圧力 かんぽ不正事件 政権ぐるみで報道規制

週刊『前進』04頁(3074号02面02)(2019/10/07)


日本郵政、NHK番組に圧力
 かんぽ不正事件
 政権ぐるみで報道規制

安倍任命のNHK経営委が現場介入

 日本郵政グループによるかんぽ生命保険の不正販売事件を報じたNHK番組「クローズアップ現代プラス 郵便局が保険を〝押し売り〟!? 郵便局員たちの告白」をめぐって、日本郵政幹部がNHKの上田良一会長やNHK経営委員会に対して抗議や申し入れなどを繰り返した上、これを受諾した経営委が上田会長を「厳重注意」していたことが、9月26日付毎日新聞の報道で明らかとなった。
 番組が放送されたのは昨年4月。郵便局で保険販売業務を担っていた現場労働者からの生々しい内部告発を取り上げ、やがて大問題となる不正販売問題をいち早く報道した。番組の制作現場は同年8月の続編放送に向けて公式HPに情報提供を呼びかける動画を投稿したが、日本郵政がこれを問題視して上田会長に削除を要求し、番組の取材も拒否。NHKは続編番組の放送を延期し、動画も削除した。さらに日本郵政がNHK経営委宛てに「ガバナンス(統治)体制の強化」を要求する文書を送付し、これを受けて経営委が上田会長を「厳重注意」した結果、上田会長が郵政側に謝罪文を返すという異例の事態となった。
 NHKの最高意思決定機関として会長の任免権も握る経営委は、石原進委員長(JR九州相談役)を筆頭に、安倍が直接任命した12人の委員からなる。他方で日本郵政の幹部には、元総務次官の鈴木康雄副社長をはじめ、放送行政を所管しNHKの予算も握る総務省の出身者が多い。一連の経過は、日本郵政経営陣とNHK経営委が結託して、かんぽ不正販売事件を報道させないよう上田会長を通じて番組の制作現場に圧力をかけ、放送の延期までさせたという前代未聞の事態であり、NHK経営委が個別番組の編集に介入することを禁じた放送法32条に違反することも明白だ。
 高市早苗総務相はNHK経営委の対応について「問題はない」などと居直っているが、長門正貢社長以下日本郵政の経営陣もNHK経営委も安倍の息がかかった連中であり、「報道の自由」も「国民の知る権利」も踏みにじる政権ぐるみの犯罪にほかならない。

不正販売の根源は郵政民営化の破産

 日本郵政の経営陣が、保険販売業務を担う現場労働者に過剰なノルマや悪質なパワハラ研修を繰り返したあげく、高齢者や認知症患者をターゲットに詐欺まがいのやり方で生命保険などを押し売りさせていたことが大きく社会問題化したのは今年6月。日本郵便の横山邦男社長は当初「不適切販売はない」などとしていたが、地方紙などに郵便局員からの内部告発が次々と寄せられ、7月10日には一転して「謝罪会見」へと追い込まれた。かんぽ生命が現時点で不正販売の疑いがあると認めた「特定事案」は18万3千件にのぼる。
 起きている事態は、郵政民営化の見るも無残な大破産である。民営化後、事業の失敗や郵便物の減少による赤字の穴埋めのため、郵政労働者は極限的な人員削減で過酷な業務を強いられた上、評価制度のもとで激しい競争にさらされてきた。特に保険部門では、業績の低い者は「いやがらせ研修」と揶揄(やゆ)される研修で反省文や誓約書を何枚も書かされ、上司からは「なんだこの数字は」「契約をとるまで帰ってくるな」と罵声を浴びせられた。赤字を理由とした保険業務への過剰なノルマ、そして基本給の引き下げと一体で販売実績に応じて賃金・手当が決まる仕組みがつくられたことが、多くの現場労働者を契約獲得競争へと駆り立て、民営化前では考えられないような驚くべき不正販売を生み出したのだ。
 このような評価制度・賃金制度を妥結し協約化したJP労組本部も日本郵政経営陣と同罪だ。現場には怒りの声が渦巻いている。今こそ闘う労働組合を郵政職場によみがえらせよう。

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