国が公立424病院を名指し攻撃 医療費・人件費が「非効率」とし、病院の統廃合・病床削減を迫る

週刊『前進』04頁(3076号02面03)(2019/10/14)


国が公立424病院を名指し攻撃
 医療費・人件費が「非効率」とし、病院の統廃合・病床削減を迫る

病院なくなれば住めなくなる!

 厚生労働省は9月26日、全国の公立・公的病院424を名指しし「手術などの実績が少ない」「医療費・人件費が効率的でない」と決めつけ、病院の再編・統合、病床(ベッド)の削減について検討し1年以内に結論を出すよう求めた。
 急性期病床のある公立・公的病院1455のうち、公立病院257、国立病院機構や済生会、日本赤十字社など公的病院167が列挙された。地方の中小病院が多い(地図参照)。
 しかしどの病院も、その地方・地域にとって絶対に必要な施設だ。だから自治体などが公費を使い運営してきた。それを国が非効率だとやり玉に挙げた。次は民間病院が対象となる。地域に病院がなくなったら住んでいけなくなる。

医療・地域破壊し労働組合を潰す

 公表数が54と最多の北海道では、3分の2が市町村の100床未満の病院だ。小規模病院が点在するのは雪などで移動が困難な事情があるからだ。JRによるローカル線切り捨てに加え、病院がなくなれば集落が存続できなくなる。
 東日本大震災で被災した宮城県の石巻市立病院は2016年に新築再開、宮城県の南三陸病院は15年に移転開業した病院だ。それを「まるで民間の不採算店舗を統廃合するような考え方は実態とそぐわない」(河北新報)。福島県内では8病院が名指しされた。
 東京・八丈島の町立八丈病院もリストに入った。他の病院は海を隔てた都心にしかない。市の財政危機を口実とする廃院の動きに住民が立ち上がって存続させた千葉県の銚子市立病院もターゲットにされた。
 病院の統廃合は何をもたらすか。石川県の加賀市医療センターは16年、市内2病院を統合してできた。病院がなくなった地域では新病院までバスで30分かかるようになった。高齢者は「遠くて不便な新病院には一度も行っていない」と言う。数百人いたスタッフや若い看護学生らも去り、地域はさびれた。
 10月4日、政府との協議の場で自治体側は「住民は不安に思っている。リストを返上してほしい」と迫った。攻撃は、住民が必要な医療を受ける権利、生存権を奪う。医療破壊、地域破壊であり地方自治破壊だ。地域の労働運動を担う病院労組の破壊に直結する。「医療費削減」のための病院つぶしは許されない。

建て替えを機に都立病院民営化

 安倍政権はマスコミを使って「公立病院で『隠れ赤字』が膨らみ税で穴埋め」「公費投入が増えると医療の効率化が遅れる」「公務員の看護師は人員配置や給与体系を柔軟に変えられない」(4月25日付日経新聞)などと悪質なキャンペーンを続けてきた。
 18年1月、小池都政は都立8病院すべてを非公務員型の地方独立行政法人化する案を示した。医師・看護師など7千人を公務員でなくし外注化と非正規職化、労働条件改悪を一気に進める医療破壊・都労連破壊の大攻撃だ。
 現状ですら過酷な環境ゆえに医師・看護師が辞めて集まらない。都立墨東病院では20代の女性薬剤師がサービス残業の強要とパワハラで退職に追い込まれたとして損害賠償を求める訴訟に立ち上がった。
 そうした中で都病院経営本部は今年9月、18年度の病院会計決算が30億円の純損失となり拡大していると発表。都立の広尾病院、大塚病院をやり玉に挙げた。その広尾病院の建て替えには民間資金を使い運営を任せるPFI方式の計画案を示している。病床は現在の426床から400床に減らす。これを機に新たな全面民営化攻撃に踏み出そうとしている。都庁職員労組病院支部、都労連を先頭に総力で闘い打ち破ろう。
 岡山大学病院の現場で闘う動労千葉派の労働者は、岡山大学メディカルセンター構想(岡山大学病院を軸に日赤、済生会、国立、市民、労災の6病院の経営統合)を絶対反対で闘い葬り去った。こうした闘いを全国で巻き起こそう。闘う労働組合の再生と総反撃へ11・3労働者総決起集会に大結集しよう。

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