牧野礼賛は侵略戦争宣言 所信表明演説 安倍こそヘイトの元凶

週刊『前進』04頁(3076号04面01)(2019/10/14)


牧野礼賛は侵略戦争宣言
 所信表明演説
 安倍こそヘイトの元凶

(写真 牧野伸顕)

(写真 国会闘争に立つ労働者・学生【10月4日】)


 臨時国会冒頭、安倍は1919年パリ講和会議での牧野伸顕発言を引用し「日本が掲げた大いなる理想」と礼賛した。朝鮮植民地支配から中国侵略に突き進んだ時代を美化するこの発言こそ、安倍政権の新たな中国―東アジア侵略宣言だ。天皇行事をてこに改憲と戦争を狙う安倍政権との歴史的な決戦が始まった。

パリ講和会議での牧野の発言を引用

 10月4日、安倍は臨時国会で所信表明演説を行い、最後に次のように述べた。(第1次世界大戦におけるパリ講和会議で)「新しい時代に向けた理想、未来を見据えた新しい原則として、日本は『人種平等』を掲げました。世界中に欧米の植民地が広がっていた当時、日本の提案は、各国の強い反対にさらされました。しかし、決してひるむことはなかった」。そして、同会議での日本全権代表であった牧野伸顕元外相が「困難な現状にあることは認識しているが、決して乗り越えられないものではない」と発言したと引用し、「日本が掲げた大いなる理想は、世紀を超えて、今、国際人権規約をはじめ国際社会の基本原則となっています」と礼賛した。
 安倍はこの牧野発言になぞらえて、今臨時国会で改憲に向かって突き進むことを首相の立場から与野党の国会議員に要求した。
 この演説で安倍が行っている歴史の偽造は、徹底的に許しがたいものである。

侵略国家としての復活もくろむ安倍

 パリ講和会議は1919年1月18日から始まった。この会議での日本の要求は、中国におけるドイツの権益と領土、具体的には膠州湾租借地の割譲、山東省や南洋の島嶼(とうしょ)におけるドイツ権益を無条件に引き継ぐことであった。同時に、対中国の「21カ条の要求」への承認を欧米列強から取り付けようとした。21カ条要求は第1次世界大戦中の1915年に日本が中華民国政府に突きつけ、山東省の領土・権益に加え、南満州と内モンゴル東部の鉄道・鉱山などの権益確保、関東州(旅順・大連)の租借期限延長、さらに中国政府顧問として日本人を雇用することなども含む要求であった。
 山東問題での日本の要求にはアメリカ、中国その他の国々が反対し紛糾した。その中で「黄色人種に対する人種的偏見のために、日本が不利に陥ることのないようにせよ」とする日本からの訓令を受けた牧野は、会議の重要案件のひとつであった国際連盟問題で規約に「人種差別撤廃」の条項を加えることを要求した。
 したがって日本の提案は明白に、後発の帝国主義であった日本帝国主義が「自分たちも欧米に伍(ご)して中国での領土と権益にあずからせろ」という意図に貫かれたものでしかない。
 実際に当時の日本帝国主義は何をしていたのか。1910年に韓国併合で朝鮮人民から主権を奪い植民地化した。1917年ロシア革命の勝利を受けて1919年に朝鮮半島全域で爆発した3・1独立運動に対して警察、軍隊を投入し7500人以上を虐殺した。日帝の侵略、差別、収奪、抑圧、虐殺に対し、朝鮮・中国で労働者人民の激しい抵抗闘争が闘われ、それへのすさまじい弾圧と殺戮(さつりく)を加えていた。
 まさにその最中に行われたのがパリ講和会議だ。ここで日帝は戦争に乗じて中国に侵略と植民地支配化の触手を伸ばそうとし、それが受け入れられなかったために「人種差別撤廃」を持ち出して対抗しようとした。それが歴史の真実だ。
 安倍は所信表明でその史実をねじ曲げてこれを礼賛、称揚したばかりか、牧野のように「この国の目指す形、その理想をしっかりと掲げるべき時です」と宣言したのである。ここに示されるのは、今臨時国会で狙われる改憲攻撃は、「日本を再び侵略国家として復活・登場させる」という安倍と日帝支配階級の願望と決意を込めたものであるということだ。

デマと民族差別・大虐殺扇動許すな

 安倍のこうした言動は、今日の韓国などに対する民族差別と排外主義の大宣伝・大合唱の最大の元凶である。9月12日、杉並区議会定例会で佐々木千夏区議は「朝鮮通信使は......凶悪犯罪者集団」と民族差別に満ちた発言をした。
 また、NHKから国民を守る党党首の立花孝志はネット上の対談動画で、戦争が起きる原因は人口の増加にあるとする帝国主義擁護の主張を展開し、あろうことか「あほみたいに子供を産む民族はとりあえず虐殺しようみたいな」などと、民族差別と大量虐殺(ジェノサイド)を扇動した。「日本は核武装すべき」とも主張した。断じて許しがたい。
 こうした差別・排外主義によって労働者階級を分断し、支配階級のために戦争で殺し合いまでさせようとしているのが安倍政権である。これに立ちはだかる労働者階級の階級的団結と国際連帯をかちとるために11・3全国労働者集会/改憲阻止!1万人行進に、巨大な怒りを集めて総決起し、安倍を打倒しよう。

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