鹿児島市営交通労働者の新たな闘い 民営化・非正規職化と徹底対決 正規と非正規が共につくる労組

週刊『前進』04頁(3088号02面04)(2019/11/25)


鹿児島市営交通労働者の新たな闘い
 民営化・非正規職化と徹底対決
 正規と非正規が共につくる労組


 2012年に始まった鹿児島市営バスの業務委託と嘱託労働者の転籍に反対して、市営交通の労働者が同年、新たな労働組合を結成して闘い続けている。同労組は「正規職員と非正規嘱託職員が共につくる」労働組合として結成された。福岡県労働組合交流センターから、鹿児島市営交通での戦闘的労働組合の闘いについて報告が寄せられた。(編集局)

職場の現実に怒り12年に新労組結成

 鹿児島の地で、民営化・非正規職化と公営交通の破壊に対する絶対反対の闘いが火を噴いている。
 全労連・全国一般鹿児島市営電車・バス分会は、2012年より開始された市営バスの業務委託と委託先への嘱託職員の派遣に反対して立ち上がり、現在は民間事業者への「事業譲渡」=全面民営化の策動を打ち破る闘いを果敢に展開している。
 組合の結成は2012年に開始された業務委託と嘱託の転籍に反対する闘いからだった。
 連合系の多数派労組は正規職員のみで構成されており、嘱託は組織化されていなかったが、業務委託への合意を示すために嘱託の労組が結成される。
 労働組合の屈服による民営化・非正規職化と嘱託労働者への矛盾の集中という現実に怒り、これを打ち破るために鹿児島市営電車・バス分会は「正規職員と非正規嘱託職員が共につくる」画期的な労働組合として結成された。
 それ以来7年にわたって、民営化攻撃との闘いを貫いている。

団結の解体に抗し労働委闘争を開始

 そして今、市営バスの「作られた赤字」を口実とした事業譲渡=全面民営化攻撃(2020年4月以降、39路線のうち20路線を民間に移譲する計画)が本格的に開始されている。
 さらに、民営化の策動と一体で、来年度から嘱託職員の更新を打ち切り、会計年度任用職員に切り替えるということが示された。20年近く働き続けてきた嘱託の労働者を毎年一旦解雇し、試験でふるいにかける会計年度任用制度は、職場の中に徹底的な競争と分断を持ち込み、団結を解体する最悪の労組破壊攻撃だ。
 分会は、この民営化と総非正規職化に反対し、未払い賃金の請求などとあわせて10月1日より新たな労働委員会闘争に立ち上がっている。

「市営バスの方が良い」と市民の声

 市営バスの民営化は、労働者の権利を奪うのみならず、公営交通を破壊し、地域社会を崩壊させる。そもそも民営化の狙いは、年間8億円近くの委託事業費による民間事業者(銀行)や株主の救済でしかない。
 すでに進められてきた業務委託の中で、職場環境は悪化し、直営時にはほとんど出なかった退職者が続出。乗客の少ない地域は取り残され、利用者からの苦情も2倍に達している。事業譲渡となれば、従来路線は「可能な限り3年間維持すること」とされ、それ以降は民間事業者の判断で路線の改廃が進められることになる。
 国鉄分割・民営化以来の新自由主義による地方切り捨ての結果、鹿児島県の時給は全国最低水準となり、若者世代の流出も後を絶たない。たとえ赤字でも住民の生活を支えてきた公営交通を民営化することは、地域社会崩壊の歯止めを外すことになる。
 分会は、民営化絶対反対、公営交通を守ることを真っ向から掲げ、市営バスの無償化を提案し、「料金徴収をしないストライキ」を構えるなど創意工夫をこらして闘いぬいている。
 さらに、川内原発事故や桜島噴火、台風災害などに遭った場合、住民避難を担うのは市営バスの労働者だ。災害時には民間事業者や嘱託職員はハンドルを握ることは許されていない。市営バスの労働者はいざ災害となれば民間事業者の地域でも住民の避難を助けている。こうした現実を無視して業務委託が進められた結果、桜島大噴火危機の際に直ちに走れる乗務員がおらず、数時間も避難が遅れることが起こっている。民営化は労働者・市民の生死にかかわる問題だ。「(赤字と言われようと)市営バスの方が良いという市民の声は大きい」。このことに確信をもって分会は民営化絶対反対を貫いている。

嘱託更新拒否なら正規採用を求める

 さらに、分会は現場で徹底的に闘う中から勝利の展望をつかんでいる。会計年度任用職員への転換に対しては、「今までは止める闘いだったが、今度は攻勢に立てる。嘱託更新を拒否するなら、全員正規職員採用や無期転換を徹底的に求める」と労働委員会闘争に立ち上がり、原発反対の闘いでも「川内原発を止める闘いは、避難計画の矛盾をつけば勝利できる。原発利権にとらわれない、公営交通を担う自分たちだからできる」と断言している。
 「県労委で勝利すれば、全国的にも大きな影響を与えることができる。全国でも労組交流センターのような、連合や全労連の枠におさまらない闘う労働者が大勢いると知って驚いた。各地の先駆的な闘い方を参考にしたいし、自分たちの闘いもまねてもらいたい。そういう中で多くの労働者を糾合できる、連合、全労連ではない『三つ目』をいかに早く立ち上げるかが勝負だ」と語る。
 現場で闘い、労働運動全体を変革する熱意に燃える鹿児島市営電車・バス分会の闘いに連帯し、共に闘おう!
(福岡県労組交流センター)
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