池田裁判 国賠請求棄却弾劾 中東派兵と一体の暴挙 名古屋地裁 国・自衛隊の責任を免罪

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週刊『前進』04頁(3092号04面01)(2019/12/09)


池田裁判 国賠請求棄却弾劾
 中東派兵と一体の暴挙
 名古屋地裁 国・自衛隊の責任を免罪

(写真 記者会見で不当判決を弾劾する池田頼将さん【中央】と弁護団【11月26日 名古屋地裁司法記者クラブ】)

(写真 愛知県庁前で支援を訴え)


 2006年にクウェートの米軍基地に派遣され、基地でのマラソン大会に参加して負傷した元航空自衛隊3等空曹の池田頼将さんが「十分な治療を受けられなかったため身体的、精神的苦痛を受けた」と国に損害賠償を求めた裁判で11月26日、名古屋地裁(前田郁勝裁判長)は請求をすべて棄却する判決を出しました。
 そもそも、2003〜09年のイラク・クウェートへの自衛隊派遣そのものが違憲です。そのうえでこの反動判決は、安倍政権の改憲攻撃と一体であり、原告の主張を認めれば自衛隊の海外派兵はすべて破綻するという巨大な危機感が根底にあるということです。

「公務災害ではない」と切り捨て

 判決によれば「イラク特別措置法9条は復興支援活動の対応措置を行うにあたっての配慮を求める規定」で「池田さんのマラソン大会への参加は公務に準じた状況下にあるとは言えない」として、国側に安全配慮義務違反はなかったと判断しています。
 同様に現地で受けた治療も適切だったとして、負傷によって池田さんが肉体的・精神的に打撃を受けたことは認めながら国・自衛隊には一切責任はないと切り捨てたのです。
 イラク特措法9条の安全配慮義務の規定がマラソン大会には及ばないとしたことや、その後のけがの増悪にも責任は負わないとしたことは大問題です。これは、大幅に遅れたものの池田さんの負傷を公務災害として治療の責任を自衛隊自身が認めてきたこととも矛盾します。表向き復興支援を掲げながら現地で米軍支援を行ってきた航空自衛隊は、隊員を送り込むときには、「石ころにつまずいても公務災害」としてきたからです。
 特別公務員としての自衛隊員には厳格な服務規律や職務専念義務(自衛隊法52条、57条、60条等)が課せられており、国の安全配慮義務もより厳格でなくてはならないはずです。万全の対策によって負傷等を防止し、万一負傷した場合にはその増悪を防止するために最善の対応をする必要があるのです。判決はそれを真っ向から切り捨てました。〝負傷しようが、死んでも文句を言うな。自己責任だ〟と言っているのです。
 池田さんは「責任を隠蔽(いんぺい)したがっている自衛隊の言い分を、裁判所がそのまま受け入れたら現場の自衛隊員はどんどん追い込まれます」「判決は治療をめぐる不備やいじめを容認し、精神面での安全配慮義務を踏みにじるものであり、このまま終わらせるわけにはいかない」と控訴して闘う考えで、一層の支援を訴えています。
 弁護団は「法廷で主文だけ読み上げて理由に触れることができないことに示されるように、この判決は国民の手でもう一度裁かれる必要がある」「事実認定や判断の誤りについての精査はこれからだが、イラク特別措置法9条の解釈によって自衛隊と国の責任をなかったことにする政治的な判決だ」と原告とともに控訴する方針を固めています。

控訴審の勝利へ池田さん支援を

 傍聴には60人を超える支援者がつめかけ法廷に入りきれませんでした。報告会の参加者も30人を超え「マラソン大会も含めて派遣中すべてが安全配慮義務だったはず」「池田さんが勇気を持って立ち上がったことで国を追い詰めてきた」と判決を批判する声、池田さんを激励する声が続きました。
 安倍政権は、国会承認が不要な「調査・研究」の名目で、海上自衛隊の護衛艦とP3C哨戒機の中東への派兵を今月中旬にも閣議決定しようとしています。池田さんの裁判は、日帝の中東侵略に真っ向から立ちはだかる闘いでもあります。池田さんの闘いをしっかり支えるために、裁判費用カンパと池田さんへの激励をお願いします。
(池田自衛隊裁判をともに闘う会)

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