都立全病院の民営化許すな 小池が14病院独法化を表明 公的医療・労働組合破壊だ

週刊『前進』04頁(3094号02面02)(2019/12/16)


都立全病院の民営化許すな
 小池が14病院独法化を表明
 公的医療・労働組合破壊だ



(写真 10・16都労連秋闘決起集会に結集した都庁職の組合員 )


 「労働条件の不利益変更であり、労働環境の悪化は避けられない。交渉には一切応じられない」。3日、小池百合子都知事が表明した都立・公社―全14病院の地方独立行政法人(独法)化は全国に先駆けた公立病院つぶしであり、全職員の非公務員化・組合破壊だ。労働者・労働組合の怒りが噴出し激突が始まった。

不採算医療担う公立潰し

 小池知事は12月都議会の所信表明で「安定的かつ柔軟な医療人材の確保や機動的な運営を可能にする」として、都立8病院と都保健医療公社が運営する6病院をすべて都から切り離して別法人化する独法化方針を明らかにした。
 しかし表を見てほしい。都立・公社病院は救急医療やがん治療、周産期、小児科、難病、結核、精神科救急、島しょ医療、リハビリなど、不採算分野ゆえに民間病院では困難だが地域に絶対に必要な医療を担っている。都立8病院の病床は5千床を超え、医師や看護師など正規職員だけで7千人近い。公社6病院の病床は2千、常勤・非常勤職員は5千人弱に達する。地域医療を支えるため、毎年約400億円が都の一般会計から繰り入れられている。公立病院として当然のことだ。
 ところが小池知事のもとで昨年1月、御用学者や企業経営者、民間病院長、医師会代表などで構成する都立病院経営委員会は、一般会計からの繰り入れを「赤字」だと問題視して独法化を提言。〝都立病院は地方公務員法や条例などで、組織・定数、人事・賃金や委託契約などの柔軟性が制限されている。別法人にする独法化で自由度を高め、公務員でなくして効率化することで赤字を圧縮するべきだ〟とする報告案をまとめた。
 すでに都立病院では「効率化」と人員削減、非正規職化と民間委託が進んで、過酷な労働条件ゆえに医師・看護師が辞めて集まらない状況だ。「もうこれ以上は無理だ」という声が上がっている。その上さらに採算と効率が最優先され、全職員が公務員でなくなって組合が解体されるなら、労働条件や職場環境は徹底的に切り下げられることになる。都病院経営本部は不採算分野の外来診療中止や病床削減、病院建て替え時の民間資金導入(PFI)を水路とする全面民営化に踏み出そうとしている。

全国424病院、統廃合との激突

 安倍政権はマスコミを使って「公立病院で『隠れ赤字』が膨らみ税で穴埋め」「公費投入が増えると効率化が遅れる」「公務員の看護師は人員配置や給与体系を柔軟に変えられない」と悪質な宣伝を続けてきた。厚生労働省は9月、全国の公立・公的病院424を名指しして「医療費・人件費が効率的でない」と決めつけ、病院の再編・統合、病床削減について結論を出すよう求めた。
 これに対し全国の自治体から「住民は不安に思っている。リストを返上してほしい」と激しい怒りの声が上がった。当然のことだ。
 公立病院つぶしは住民が必要な医療を受ける権利、生存権を奪う医療破壊、地域破壊だ。地方自治破壊であり、地域の労働運動の中軸を担う病院労組の破壊に直結する。小池はこの安倍政権の公立病院つぶしの先駆けとして、都立・公社の全病院独法化に踏み出そうとしているのだ。絶対に許してはならない。

1万2千人を非公務員に

 都立・公社病院には、看護師、医師、薬剤師、医療系技師、保育士、研究員、監視員、事務など様々な職種の職員が、委託企業の労働者を除く直雇用だけで1万2千人近く働いている。都庁職員労組(都庁職)・病院支部の組合員は3千人、都立病院職員を含む衛生局支部の組合員は2300人を超え、都労連・都庁職の拠点支部だ。
 小池による都立・公社病院独法化は、国鉄分割・民営化がそうであったように、病院勤務の都職員と公社職員全員を非公務員にして組合を破壊し権利を奪う大攻撃だ。労働条件の破壊は一気に進む。2009年に独法化された都健康長寿医療センターの労働者の生涯賃金は1千万円規模で切り下げられた。それ以上の攻撃が全病院でかけられることになるのだ。それは地域医療の崩壊に行き着く。都病院改革本部が昨年2~3月に実施したパブリックコメントでは、採算重視による医療への不安や個室料金値上げへの懸念など反対意見が多数寄せられた。

都労連の総力で攻撃粉砕しよう

 安倍は9日、国会閉会時の会見で「国の形に関わる大胆な改革に挑戦し、新たな国づくりを力強く進めていく。その先に改憲がある」と言い放った。労働者人民の怒りに追いつめられ国会審議からも逃亡した安倍は、しかし改憲・戦争に突進する以外にない。安倍の言う「国の形に関わる改革」とは戦争国家化と医療をはじめとする戦後的諸権利の一掃であり、労働者の団結を破壊し「労働組合のない国」にする攻撃だ。その核心に関西生コン支部弾圧とJR労働運動、公務員労働運動の破壊がある。
 小池の都立・公社病院独法化は、病院支部の一掃、福祉局支部の破壊と、首都東京の戦闘的労働組合運動の中軸を担う都労連・都庁職を解体する攻撃だ。現場の怒りが沸騰している。都庁職を先頭に都労連の総力で絶対に打ち破ろう。

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都立8病院 主要医療課題

●広尾病院 ER/島しょ/心臓病/脳血管疾患
●大塚病院 周産期/小児/こう原病系難病/障害 者/リハビリ/救急/小児精神
●駒込病院 がん/感染症/造血幹細胞移植/救急
●墨東病院 ER/周産期/精神科/感染症/難病 (リウマチこう原病系、特定疾患)/リハビリ
●多摩総合医療センター ER/周産期(産科部門)/結核/精神科救急/がん/難病/造血幹細 胞移植/障害者歯科/心臓病/脳血管疾患/リハ ビリ
●神経病院 脳神経系難病
●小児総合医療センター ER/小児精神/周産期 (新生児部門)/小児結核/小児難病/小児造血 幹細胞移植/小児臓器移植/思春期/障害者歯科
●松沢病院 精神科救急/精神科身体合併症

公社6病院 主要医療課題

●東部地域病院 救急/循環器
●多摩南部地域病院 救急/がん
●大久保病院 救急/生活習慣病
●多摩北部医療センター 救急/がん
●荏原病院 救急/脳血管疾患/集学的がん
●豊島病院 救急/脳血管疾患/がん

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