自衛隊の中東派兵許すな 石油強奪が目的の侵略出兵 改憲先取り 戦争突入も狙う

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週刊『前進』02頁(3095号01面01)(2019/12/19)


自衛隊の中東派兵許すな
 石油強奪が目的の侵略出兵
 改憲先取り 戦争突入も狙う


 政権崩壊の危機にあえぐ安倍政権は、12月中にも自衛隊の新たな中東派兵を閣議決定しようとしている。中東では、アメリカ帝国主義の侵略戦争で多くの人民の生活が破壊され、一部の支配階級に富が独占されて復興が進まず、失業が拡大している。そして青年を先頭に闘いが巻き起こっている。中東で決起する青年たちと連帯し、日本で改憲阻止・安倍打倒へ闘おう。

憲法への自衛隊明記へ世論誘導

 安倍政権は12月20日をめどに、海上自衛隊のホルムズ海峡周辺への派兵を閣議決定しようとしている。石油資源の確保のために軍事力を投入して中東情勢に介入するという決定的な踏み込みであり、またそれを通して、自衛隊を憲法に明記する改憲への道を開こうとするものだ。「自衛隊が海外でがんばっているのに、憲法違反と言われたままでいいのか」という恫喝で、改憲への世論をあおり立てようと狙っている。
 安倍政権は防衛省設置法の「調査・研究」を派兵の名目とすることで国会での議論を避け、閣議決定だけで派兵を強行しようとしている。調査ヘリを搭載可能な護衛艦を新たに派遣するほか、すでにソマリア沖で海賊対策を口実に活動している2機のP3C哨戒機のうち、1機を使うことが計画されている。活動範囲についても、ホルムズ海峡周辺のオマーン湾、アラビア海北部の公海、バブルマンデブ海峡東側の公海とすることなどがすでに報じられている(地図参照)。
 日本帝国主義は石油輸入の9割を中東に依存している。今年に入って何度も原油タンカーが攻撃を受け、ドローンが撃墜されている。イランとアメリカの対立が激化する中で、欧州諸国も含む各国が「安定した海上輸送の確保」を口実に軍隊を派遣している。安倍政権が派兵しようとしているのは、そういう戦地ともいうべき海域だ。
 「調査・研究」のための派遣というが、攻撃を受けた場合には「不測の事態」として自衛隊法にもとづく海上警備行動に切り替えることを想定しており、激しい戦闘に突入した場合には「存立危機事態」とみなして本格的な武力行使や追加派兵に踏み切ることも十分ありうる。
 安倍は自衛隊をあえて危険な場所で活動させ、武器を使用する状況に追いやり、自衛隊の活動を直接の戦闘行為にまでエスカレートさせることを狙っている。また、そうすることで自衛隊を合憲化する機運を国内につくりあげ、安倍自身の危機を改憲と戦争で突破しようとしているのだ。

米帝のイラン攻撃と一体の作戦

 イランとアメリカは、今年になって軍事衝突を繰り返している。
 米トランプ政権は、イランからの原油輸入を禁止する経済制裁を昨年11月から始め、日本を含む一部の国に対して適用していた除外措置も今年5月には打ち切った。5月にペルシャ湾でサウジアラビア船籍やノルウェー船籍のタンカーなどが何者かに攻撃された際にも、トランプ政権はこれをイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」によるものと決めつけて非難した。6月にはイランが米軍の無人偵察機を撃墜したと発表。トランプは6月21日早朝のツイートで、イランへの報復攻撃をいったんは命じたが、攻撃の10分前に中止したことを明らかにした。米軍の航空機や艦船が攻撃態勢に入っていた中での中止命令だったと言われている。
 ホルムズ海峡では、トランプが「航行の安全を確保するため」という口実で提唱した有志連合により「センティネル(監視員)」と呼ばれる活動が11月7日から行われている。本部をバーレーンにある米軍基地内に置き、軍艦と航空機を使って海上と空からの監視を行う。11月19日には米空母エイブラハム・リンカーンを中心とする空母打撃群がホルムズ海峡を通過し、ペルシャ湾に入っている。トランプは当初60カ国に有志連合参加を呼びかけたが、結果としてアメリカ、イギリス、オーストラリア、バーレーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アルバニアの7カ国にとどまった。また、フランスやインドも独自に艦船を派遣するとしている。
 行われているのは、中東の石油利権を確保するための軍事行動だ。安倍政権はイランとの関係を保つために、トランプの有志連合には入らないとしながら、派兵した自衛隊を米軍と連携させ、共同で作戦を行うことで中東侵略戦争に加担しようとしている。

青年の怒り渦巻く中東
 各国で反政府デモが激発

 中東の国々では今、青年を先頭に激しいデモが闘われている。特に10月以降、イラク、イラン、レバノンでは多くの死者を出しながら青年が決起している。
 イラクでは、政府の汚職と青年の失業などへ怒りが爆発している。AFP通信によると軍隊が実弾を発射して弾圧し、420人を超える死者が出ている。
 イランでは、11月15日に政府がガソリンの最大3倍の値上げを発表したことをきっかけに怒りが爆発。17日までに8万7千人がデモに参加、18日までに1千人が拘束されたと報じられている。16日からはデモ鎮圧のため、市民のインターネット接続が1週間以上も遮断された。国際人権団体は140人を超える死者が出ていると発表している。
 ほかにも、エジプトやアルジェリアでも闘いが巻き起こっている。
 中東は、アメリカ帝国主義による侵略戦争と、その後のIS(イスラム国)との戦闘で、インフラや農業も含めた産業が徹底的に破壊されてきた。そして今も、各国の支配階級の腐敗と富の独占によってインフラが回復されず、労働者は仕事にもつけず、生活の建て直しができずにいる。この現実に宗派の違いを超えた決起が始まっている。
 中東をめぐるアメリカ帝国主義の侵略政策が根本的に破綻しているということであり、イラク戦争以降の中東世界で生きてきた青年層が決起し、中東地域における新たな闘いが開始されているのだ。

中村医師殺害の元凶は米の戦争

 中村哲医師がアフガニスタンで殺害された事件も、その元凶はアメリカ帝国主義による戦争だ。米軍はアフガニスタン侵略戦争でインフラを破壊するだけでなく、ベトナム戦争でも使った枯れ葉剤をまいて農業をも壊滅的に破壊した。さらに近年の異常気象による干ばつが襲いかかり、水をめぐる部族間の対立と武力抗争が激化。こうした荒廃の中で中村医師が殺害される事態が起きたのだ。
 トランプ政権の新たな戦争政策は、中東で決起する青年たちに銃口を向けるものだ。日本の自衛隊派兵もこの労働者人民の決起を破壊する役割を担うことになる。自衛隊の中東派兵を絶対に許してはならない。

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