53自治体でシステム障害 外注化・デジタル化の結果

週刊『前進』04頁(3096号02面02)(2019/12/23)


53自治体でシステム障害
 外注化・デジタル化の結果


 12月4日、全国の1県47市区町村など53自治体で、住民情報・個人情報を預けた外注先のデータセンターで深刻な大規模システム障害が発生した。データにアクセスできず自治体・学校などの業務が破綻し、データの一部も消失。いまだ完全復旧のめどが立たない状態が続いている。業務外注化・デジタル合理化がもたらした重大事態だ。

介護申請、住民票・通知表発行も不能

 被害は甚大(じんだい)だ。役所から住民データなどにアクセスできず、住民票や戸籍証明書といった行政書類の発行システム、税務関係の手続きができなくなった。自治体のホームページが開けなくなり、メールの送受信などができない状態が続いている。職員の賃金や一時金の振り込みも危機に陥った。
 東京・中野区では要介護者と要支援者が計1万4千人いるが、介護保険手続きなどができない。練馬区では区立全小中学校98校(児童生徒4万6千人)で統合型公務支援システムがダウンして通知表の作成が遅れ、教員は夜中までの作業を強いられると共に、2学期の通知表は3学期開始後になるという。
 33の自治体では後期高齢者医療制度や学校関係のデータなどが一部消失した。バックアップデータが見つからず復元不可能の恐れもある。データ会社は複数の不具合が連続して発生して「作業量が膨大で追いついていない」状態で、復旧のめどが立たない。

経費削りIT万能のうそで被害拡大

 大規模システム障害を引き起こしたNTTデータ傘下の「日本電子計算」(東京都千代田区)は、自治体向けのクラウドサービスを提供しデータを管理してきた。障害の原因となったソフトは別の企業が開発。以前から不具合が生じていたが、開発企業側が影響は軽微と判断し早期の修正を求めなかったという。4日、データの外部記憶装置を動かすプログラムに不具合が起きたが、「保守業務を担う別の会社から修正プログラムの提供がなかったために不具合を防げなかった」と言い訳をしている。
 以前は公的機関は自前でデータを管理してきた。だからたとえ不具合が生じても限られた範囲にとどまった。しかし今や膨大な量の住民情報・個人情報がデジタル化されて管理が外注化され、その外注先も細切れに業務を外注化する無責任なシステムに変えられている。外注先の労働者はほとんどが非正規職だ。
 経費削減の宣伝とIT万能のうそを振りまき、マイナンバーカードを土台とする「職員半減・100%デジタル自治体化」、監視国家化に大量の予算・補助金を与えて進めてきたのが安倍政権だ。そのことが今回の重大事態を招いた。それはこれからも起こる。公務員労働者を先頭に外注化・非正規職化、デジタル自治体化を許さず闘おう。
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