かんぽの責任は民営郵政だ 「綱紀粛正」=怒りの圧殺を許すな

週刊『前進』04頁(3102号02面02)(2020/01/27)


かんぽの責任は民営郵政だ
 「綱紀粛正」=怒りの圧殺を許すな

(写真 日本郵政の増田寛也新社長らの初記者会見の当日、郵政非正規ユニオンなどが弾劾の緊急行動を行った【1月9日 東京・大手町】)


 昨年12月27日、かんぽ生命保険の不適正営業をめぐり、金融庁はかんぽ生命と日本郵便に一部業務停止命令を出し、日本郵政を含めた3社に業務改善命令を出した。総務省も同日、日本郵政と日本郵便を行政処分した。さらに今年1月5日付で、不適正営業の責任から逃れられなくなった日本郵政の長門正貢社長、かんぽ生命の植平光彦社長、日本郵便の横山邦男社長が辞任した。
 それを受け、日本郵政の新社長に、岩手県知事や総務相、郵政民営化委員長などを歴任した増田寛也が1月6日付けで就任し、日本郵便社長に衣川和秀、かんぽ生命社長に千田哲也が就任した。

現場への責任の転嫁は許さない

 このような経営陣の入れ替えで根本問題は変わらない。日本郵政グループの経営陣はこれまでも、ことあるごとに責任を現場労働者に転嫁してきた。2009年10月1日のJPEX計画(小包部門の子会社化)の破綻、10年7月1日の宅配便統合によって1千億円超の赤字を出した責任を現場に転嫁し、社員のボーナスカット、期間雇用社員に対する大量雇い止め解雇を強行した。さらに宅配統合の大混乱(遅配)では経営陣が記者会見で「遅配は職員の不慣れによるもの」とふざけた発言をした。
 今また、かんぽ生命の問題で「何度も申し上げるが、問題は現場で起きている」と強弁してきた経営陣を見過ごすわけにはいかない。不適正営業を強いた張本人こそ、長門以下の旧3社長だ。現場には到底達成できないノルマを強制し、達成できない労働者にはパワハラの限りを尽くしてきた。「関東の郵便局で保険の渉外営業を担当している現役社員は『(不適正営業について)あれだけの報道があってなお、現場は数字を毎日求められます。過剰なノルマは何も変わっておらず、管理者から詰められる毎日です。そして、こうしている間にもたくさんのお客様がだまされ、被害が出ているのが現場です』とつづった」(昨年7月10日付西日本新聞)
 さらに、14年に東京・八王子西局で起きた不当解雇を絶対に許すことができない。同局に13年に新規採用されたS君は「数字が人格だ」の号令のもと、保険営業のロープレ(顧客との対話を想定して行う営業訓練)で管理者から連日すさまじいパワハラを受け続けた。それに耐えぬき闘いぬいたS君をただの一度も実際の営業活動に出さず、不当解雇したのだ。

改憲と労組解体攻撃打ち破ろう

 こうした事態こそ「郵政民営化」のまぎれもない現実である。民営化は職場に6割の非正規職という現状をつくりだし、スキル評価とノルマで労働者を分断してきた。さらに、民営郵政資本は安倍の「働き方改革」の手先として無期転換制度をいち早く導入し、その実は「一生非正規」を強制している。同一労働同一賃金のペテンの下で「正社員改革」を促進してきた。また、棚上げになったとはいえ、土曜配達廃止・合理化構想は消えてはいない。
 全国の郵便職場は圧倒的な人員不足によって郵便・交通事故が激発している。それにもかかわらず、民営郵政が資本間競争に打ち勝つ方策は「人件費削減」以外にない。これは民営化の矛盾であり、それは現場労働者に対する強労働、強搾取へと転化されている。
 この事態を許しているのが、「お客様の信頼回復」を掲げ、生産性向上を組合の綱領とする連合・JP労組中央本部だ。この綱領こそ「企業防衛」主義に成り下がり、戦前と同様の「産業報国会化」から改憲・戦争協力への道である。
 民営郵政当局は、かんぽ生命をめぐる行政処分にかこつけて「綱紀粛正」と称し、職場の怒りを抑え込むのに必死だ。民営郵政当局の強権的な労務支配を改憲・戦争攻撃ととらえ、職場支配権の奪還をその最大の攻防に据えて闘おう。

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