1・24集会 100万の星野文昭を! 国賠提訴へ闘い始まる

週刊『前進』02頁(3103号01面03)(2020/01/30)


1・24集会
 100万の星野文昭を!
 国賠提訴へ闘い始まる

(写真 「私が星野文昭になる」と決意を述べる暁子さん【1月24日 杉並区】)

 沖縄闘争で獄中44年、昨年5月30日に獄死した無実の政治囚・星野文昭さんの追悼集会が1月24日、東京・杉並区の阿佐谷地域区民センターで開かれた。星野さんを死に追いやった徳島刑務所と東日本成人矯正医療センターを訴える国家賠償請求訴訟に向けた〝新しい出発〟の集会となった。
 区民センター1階「阿佐谷ぶらっとりー」では、1月23〜27日まで星野文昭さんと妻・暁子さんの「絵と詩展」が開催されている。集会には「絵と詩展」に立ち寄り、初めて星野さんを知った人も参加するなど150人が集まった。展示と集会は、絵画展実行委員会と「星野さんをとり戻そう東京連絡会」が共催した。
 司会の東京連絡会の青年労働者が1月14日に逝去した星野再審弁護団長・鈴木達夫弁護士の遺志を継ぎ、「星野運動の新しいスタートとして、国賠闘争の展望を開こう」と開会を宣言。
 星野暁子さんが「『私が星野文昭になる』。これが私の人生の新しい目標です」と語り、決意した契機が昨年11月、動労千葉と共に訪韓し10万の民主労総の隊列に圧倒されると共にチョンテイル烈士の闘いを引き継いだお母さんの闘いを学んだことであると話した。「闘いの中に沖縄をしっかり位置づけ、今後の闘いとして一つに国家賠償請求訴訟、二つに大坂正明さんと一体に第3次再審を闘う、三つに、人間が人間らしく生きられる世界を呼びかけた星野精神を継承して闘う。自分が星野文昭だという無数の隊列をつくりだし、70年闘争を超える改憲阻止、安倍打倒の闘いをみんなの力でつくっていきましょう」と呼びかけた。
 メイン企画の講演は、星野文昭さんの国家賠償請求訴訟に向けて「国家犯罪を追及する」と題した星野再審弁護団主任弁護人の岩井信弁護士と、「獄中医療と星野文昭さん」のテーマで八王子中央診療所所長の山田真医師の二本立て。
 岩井弁護士は、「星野新聞」の新年アピールで「『私も請求者だ』と立とう」と訴えたことを紹介し、「国賠のために行った証拠保全で何がわかったか。単なる過失ではない、徳島刑務所による意図的な医療放置、医療隠蔽(いんぺい)が行われたこと、死亡診断書に『巨大な腫瘍(しゅよう)』と記された肝臓がん切除手術の判断、術後の体制などにみられる医療『過誤』が明らかになった」と報告。「何が星野さんを死に至らしめたのか、真実を明らかにする。『私が請求者だ』と共に闘ってほしい」と一人ひとりの奮闘を訴えた。
 山田医師は、救援連絡センターの立ち上げから関わり東京拘置所で医療接見を行ってきた経験を踏まえ、「日本の司法はひどい。刑務所に捕らわれた人の人権が奪われている」「残念なのは、星野さんの肝臓がんが早期発見されなかったことだ。誤診し、原因追究されず放置された。東京に移監された時は、すでに多臓器不全に近い。これは犯罪、殺人としか言いようがない」と怒りもあらわに語った。「この裁判でブラックボックスの監獄で何が行われているか明らかになり、獄中処遇がよくなることを期待している。頑張って徳島刑務所に責任を取らせよう」と呼びかけた。
 質疑応答の後、文昭さんのいとこ、星野誉夫さんが「文昭君は、彼らしく生きて、死んだと思っております。岩井弁護士と山田医師の筋でやれば、裁判所を説得し、勝つことができる」と閉会のあいさつ。「私が請求者だ」「私が星野文昭だ」と闘う新たな星野闘争が力強く始まった。

殺人的な獄中処遇の改善を
 医師・八王子中央診療所所長 山田真さん

 私は救援連絡センターの立ち上げの一人で医療担当だった。私は東京拘置所にしょっちゅう行って接見していた。金網越しにしか接見できない。不十分な診察しかしていない。それでもこんないい加減な医療で見逃したら許さないと意見書を書いていた。刑務所の中にいたら人権は奪われてもいいという考えがあると思います。
 星野さんのことを見てもよくわかる。肝臓がんは早期発見すれば治療できるがんだ。発見が遅れて、見つかった時点で手の付けられない状態だったのだと思います。手術をするのはかなり無茶だったと思う。一種、証拠隠滅的に手術をされたと思っている。
 18年12月に体重が減った。ステロイドをやめたから体重が減ったと刑務所の医者は判断したようだ。これはとんでもない。そこから検査をしていない。明らかに誤診だ。ミスだ。
 もう一つ、8月に腹痛で倒れた問題。この原因が追究されていない。成人が強い腹痛で倒れる時は、まず胆石を考える。胆のうのエコーをやっていれば、がんが見つかっていたかもしれない。結局、星野さんは放置された状態が続いて、実際には多臓器不全と言っていいような状態に手術の時はなっていた。どうしようもなくなって慌てて徳島から東京に移されたと思っている。犯罪、殺人としか言いようがない。
 こういうことが再々、起こっている刑務所の医療を一刻も早く改善しなければいけない。星野さんの国賠訴訟でブラックボックスの監獄で何が行われているか明らかになり、獄中処遇が良くなることを期待している。

「私が請求者だ」の気持ちで
 星野再審弁護団主任弁護人 岩井信さん

 国家賠償請求に向けて、まずカルテの証拠保全手続きをしました。昨年7月29日と9月6日の2回、東日本成人矯正医療センターで行い、10月18日には、徳島刑務所に入って、そこに残っていたカルテを差し押さえたわけです。
 何が今わかったのか。一つ目は医療の放置、二つ目は医療の隠蔽、三つ目が医療「過誤」です。調べれば調べるほど、これは単なる過失ではない。意図的とも言える放置があったのではないかと思います。
 4月15日付「診断情報提供書」には、「医療的には明らかに精査と治療が必要なケースと考えているものの、対応に非常に苦慮しております」とある。これは明らかに診察をどうしたらいいのか、そこで待ったをかけている言葉です。
 星野さんは一昨年8月22日に倒れたという事実があります。しかし、倒れた時に適切な検査をせずに、胃けいれんとして処理したわけです。検査をすれば、腫瘍をもっと早い段階で発見できたはずです。
 刑務所が星野さんに、3月1日のエコー検査に異常があったことを伝えたのは4月17日です。3月1日から4月17日まで一体何をしていたのか。
 この3月1日、星野さんの仮釈放について、30年に一度の義務的な審査が進んでいました。弁護団や家族、支援の会が1カ月1回、高松の四国地方更生保護委員会に仮釈放の申し入れをしていました。
 仮釈放審査において「心身の状況の変動」があった場合、刑務所長は更生保護委員会に報告する義務があるわけです。まさに医療隠蔽です。
 巨大な腫瘍を切除する手術には、当然、スタッフも必要、相当の出血も予想される。しかし、結局、手術後も星野さんを集中治療室に入れなかった。これは医療「過誤」です。
 再審請求と国家賠償請求が始まります。ぜひ皆さんも「私が請求者だ」という気持ちで、自分の問題として取り組んでいただけるようお願いします。

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