都立病院の独法化阻止を 公的医療と労働組合の破壊を 職場・地域の団結で打ち破れ

週刊『前進』02頁(3109号01面04)(2020/02/20)


都立病院の独法化阻止を
 公的医療と労働組合の破壊を
 職場・地域の団結で打ち破れ


 昨年12月、小池都知事は全都立病院・公社病院の地方独立行政法人化(地方独法化)を打ち出した。経費削減を最優先する独法化は公立病院の解体であり、医療崩壊につながる。感染が急拡大する新型コロナウイルスへの対処・治療にとって、公立病院の存在が最大の支えである。「命より金」の小池を打倒し、労組破壊の独法化を阻止しよう。

「命より金」に転換人民から医療奪う

 都立病院の労組破壊攻撃は石原都知事時代に本格的に始まった。石原は2001年12月に「都立病院改革マスタープラン」を策定。2002年まで16あった都立病院を12に減らし、2009年4月に豊島病院を公社移管するとともに、地方独立行政法人の健康長寿医療センターを設立。三つの小児病院を統廃合し大企業の金もうけの場に変えた。
 それでも都立8病院の経営形態は現在、地方公営企業法・一部適用を保っている。公務員の地位と権利、公的医療を守り抜いている。人事・給与、予算などを少数の理事会に握らせてはいない。今、全国の公立・公的424病院が名指しされて再編・統合を迫られているが、都立病院の独法化阻止の闘いは、安倍政権の進める「全世代型社会保障改革」という医療や介護を労働者人民から奪う攻撃との最先端の攻防だ。同時に「労組なき社会」をつくる攻撃との真正面からの激突である。
 大都市公立病院の経営形態を見れば、すでに半分は独法に移行している。都立病院が公的病院としての役割を守り抜いてきたのは都庁職病院支部・衛生局支部のもとに団結した医療労働者(それと一体となった患者・家族)の粘り強い闘いがあったればこそだ。
 小池都知事の独法化プランを具体化したものが東京都病院経営本部の「新たな病院運営改革ビジョン(素案)」だ。この「素案」では、都立8病院と都保健医療公社(公社)6病院・がん検診センターを統合して一体的に運営する「地方独立行政法人東京都病院機構(仮称)」を設立する方針を打ち出した(図参照)。年度内に報告書を完成させ、7月の都知事選前に決めてしまおうというのだ。
 病院機構は非公務員型の地方独立行政法人で、都立病院で働く労働者は病院機構に移行すれば公務員でなくなる。病院機構の運営は数人の理事会が握る。理事長は都知事が任命し、副理事長・理事は理事長が任命する。医療切り捨てに反対してきた議会による制動は著しく失われる。
 要するに小池と理事会で公的医療を解体し、「命より金」の医療に根本的に変えてしまおうというのだ。すでに地方独法に移行した健康長寿医療センターでは、ベッド数が大幅に減らされ、金持ちの高齢者だけを相手にしてそこに製薬会社がからんだ「もうかる医療」が行われている。独法化した国立病院機構では、国の交付金が大幅に削られ結核、小児救急、精神、救命救急、周産期母子などが不採算部門として廃止された。医療労働者の賃金をカットする一方、純利益を495億円もあげている。

「毎年赤字」のデマで人件費削減狙う

 都立病院の医療労働者の賃金をはじめ労働条件は条例で定められている。そのため、定数や給料を勝手に減らすことはできない。独法化になれば、4〜5人の理事会(経営者)が密室で人員や給与を減らすことが可能となる。マスコミがふりまく「毎年400億円の赤字」の正体は都立病院への東京都の繰入金であり、赤字でもなんでもない。交付金を減らし人件費を削減するためのデマだ。病院支部の試算では、看護師の場合、31歳で地方独法化されたら生涯年収の減額は約2600万円にのぼるという。
 そのうえ都立病院と公社病院が一体化すれば、都立病院の労働条件も低い方(公社病院)に合わされていく。さらに独法は人事給与制度という労働組合つぶしの常套(じょうとう)手段を使って労働者を分断し、団結を破壊することを狙っている。独法化の目的はあくまで「生産性の向上」=合理化であり、労働組合の破壊にある。

「公的医療・地域医療守れ」の運動を

 都立病院は都民の命を守るため、へき地医療、高度救急や周産期医療、小児救急や精神科救急、感染症対策などあらゆる行政的医療を担っている。とりわけ新型肺炎問題で感染症対策のとりでである都立病院の存在は都民の命に直結した大問題だ。ところが18年1月の都立病院経営委員会報告は行政的医療に充てている年間400億円の繰入金を「経営上の赤字」とわめきたてた。その時、不採算の行政的医療を切り捨てるのかと大問題となったので、今回の「草案」では「赤字」とは一言も言わず、へき地医療・不採算医療を継続的に担うために地方独法化が必要なのだと言い換えた。なんと卑劣なことか。
 地方独法化された病院機構がめざすのは生産性向上=「命より金」の医療であり、行政的医療の切り捨てだ。経団連・経労委報告では「労働生産性の向上」とは「非効率な業務の思い切った縮小・廃止」とあけすけに語っている。医療現場で働く労働組合が軸となって、患者・家族、地域の労働者の切実な声を集め「公的医療・地域医療を守れ」と立ち上がれば、小池の地方独法化攻撃を打ち砕くことはまったく可能だ。
 安倍は全世代型社会保障改革と働き方改革を改憲攻撃の一環として位置づけている。20春闘は改憲・戦争へ突き進む安倍政権と小池都政との正面激突となった。職場の団結にこそ地方独法化攻撃を打ち砕き改憲・戦争を阻む力、社会を変える力がある。公的医療の破壊と「労組なき社会」をつくる攻撃に大反撃を叩きつけよう。
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