3・11反原発福島行動へ 「放射線安全」のうそを許すな 甲状腺がん患者が237人にも

週刊『前進』04頁(3112号03面02)(2020/03/02)


3・11反原発福島行動へ
 「放射線安全」のうそを許すな
 甲状腺がん患者が237人にも


 第37回福島県県民健康調査検討委員会が2月13日、福島市で開催され、昨年9月末までの甲状腺検査の結果、がんとその疑いが237人(手術の結果、良性と判明の1人を含む)と報告された。これほど多くの発症は、2011年の3・11福島第一原発事故による放射線被曝が原因だ。だが、検討委は「因果関係はない」とし続けている。放射線の危険性を徹底的に隠ぺいし、否定するためだ。絶対に許せない。

被曝との因果関係を否定

 甲状腺検査は、2011年度〜13年度に先行検査が行われ、本格検査が14年度〜15年度、16年度〜17年度、18年度〜19年度と行われている。その間、患者数は増加し続けている。
 福島の小児甲状腺がん患者は検討委の報告の他にも「統計外」としてカウントされない人が存在する。その人たちを加えれば患者数はさらに増大する。
 小児甲状腺がんの発症は極めて少なく、通常は100万人に1人か2人と言われている。福島の検査対象者(先行検査では約37万人)のうちでこれほどの発症はきわめて異常であり、原発事故による被曝以外に原因はありえない。
 にもかかわらず検討委は16年3月、「(甲状腺がんが)放射線の影響とは考えにくい」との見解を出した。昨年6月には、検討委の下部機関・甲状腺検査評価部会が「甲状腺がんと放射線被ばくとの間の関連は認められない」との報告書を提出。さらに、15年まで検査責任者を務めた福島県立医科大学の鈴木眞一教授も今年2月に福島市で行われた国際シンポジウムの基調講演で「甲状腺がんの増加は放射線被曝の影響ではなく」と必死に否定した。
 検討委員会はそれだけでなく検査の縮小まで狙い、今年4月から始まる5巡目の甲状腺検査では「(甲状腺検査は)メリットよりもデメリットが上回るため推奨されておりません」と記載した「お知らせ文」を子ども・保護者に送ると決定した。受診者を少なくし、さらには検査をとりやめ、疫学調査として成り立たなくさせ、放射線との因果関係を否定しぬくためだ。

次の核惨事に備える意図

 1986年4月26日に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故でも多数の小児甲状腺がんが発症し、地元ウクライナ・ベラルーシを始めとして労働者民衆の怒りと闘いが燃え上がった。それにより、96年にオーストリアのウィーンで開かれたIAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機関)などの合同国際会議では、原発事故と小児甲状腺がんの因果関係を認めざるをえなかった(チェルノブイリ原発事故は多種多様な病気を発症させた。許せないことに、IAEAなどはそれらについては今もって因果関係を否定している)。小児甲状腺がんはその後も増え続け、14年12月末の時点で、ウクライナだけでも1万1895人が発症したとの統計がある。
 現在のIAEAと安倍政権、その意を受けた福島県・検討委の「福島での因果関係否定」は、次の大核惨事に備え、チェルノブイリで労働者民衆が認めさせた「真実」を反動的に転覆させる意図を持つものだ。

「核絶対反対」の解体狙う

 安倍政権はさらに今、20㍉シーベルト以下の放射能汚染地帯への住民の帰還強制だけでなく、50㍉シーベルト超の帰還困難区域にまで帰還させようとしている。3月14日のJR常磐線全線開通はその最先端の攻撃だ。これらの全てが、原発事故を「終わったこと」にすると共に、福島の高濃度放射能汚染を「安全」とする恐るべき攻撃だ。
 安倍政権は、復興庁が17年に発表した「風評払拭(ふっしょく)・リスクコミュニケーション強化戦略」や文部科学省が18年に発行した全国の小中高校生向け「放射線副読本」(再改訂版)でも「福島県では放射線の安全性が確保されている」「放射線は生活を豊かにするためにも利用され」と主張し始めた。核戦争の急切迫情勢下で、3・11原発事故で破産し信じる者もいなくなった「原発安全」神話に替え、「放射線安全」論で労働者人民をからめとろうとする攻撃だ。
 昨年8月、米政府は中距離核戦力(INF)全廃条約を失効させ、今年2月4日には米海軍が「使える核」と言われる小型核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を実戦配備した。また、米政府は2年以内に新型中距離弾道ミサイルを沖縄をはじめ日本本土に大量配備する計画を持ち、すでに米日間で協議が開始されている。
 高濃度の放射能汚染地帯への帰還強制、甲状腺がんと原発事故との因果関係の否定、「放射線副読本」などの攻撃は、核戦争が現実化している中でそれに対応しようとする安倍政権の凶悪な動きである。ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマを体験した日本の労働者民衆の、核と放射線への強い警戒感と「絶対反対」の思い・階級意識を解体しようというのだ。核兵器は「破壊力は大きいが、放射能は怖くない」と内部被曝も否定し、日本帝国主義の核武装と核戦争への踏み込みを労働者民衆に容認させることが目的だ。
 3・11福島原発事故から9年目を迎える中でも不屈に続く4万人を超える避難者の「帰還拒否」の闘い、甲状腺検査打ち切り反対の署名や申し入れなどの運動、広島の教育労働者をはじめとする「放射線副読本」の回収を求める活動、原発事故責任追及の福島の農民などの闘いはこの安倍政権の攻撃に立ち向かい、阻む力を持つ闘いだ。
 韓国や香港のような闘いは日本でもできる。3・11反原発福島行動を、安倍政権の原発再稼働と改憲・戦争(核戦争)を絶対阻止する歴史的闘いの出発の日にしよう。
(北沢隆広)
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