解雇撤回へ労働者の総反撃を 中労委が動労総連合の訴え却下 安倍の労組破壊と一体の暴挙

週刊『前進』02頁(3119号01面01)(2020/03/26)


解雇撤回へ労働者の総反撃を
 中労委が動労総連合の訴え却下
 安倍の労組破壊と一体の暴挙


 動労総連合が国鉄分割・民営化に伴う国鉄労働者1047名の解雇撤回などを求めて労働委員会に申し立てていた件につき、中央労働委員会は3月11日付で不当きわまる却下・棄却命令を下し、18日に組合側に送付してきた。国鉄1047名の解雇撤回を全面的に否定したこの暴挙を徹底的に弾劾する。

コロナ解雇促進する攻撃

 中労委は1回の調査期日も開くことなく、不意打ちで却下・棄却命令を下してきた。事実調べ(審問)どころか調査もしないのは、異例中の異例だ。中労委は労働者・労働組合の訴えを聞こうともせず、不当労働行為から労働者を救済する役割を自ら投げ捨て、資本と国家権力の攻撃を促進する存在に成り下がった。
 コロナショックの中で非正規労働者に対する雇い止めが広がり、正規の労働者にも休業や一時帰休が命じられている。解雇への労働者の怒りは激しく噴出し始めた。この中で中労委は、解雇撤回の申し立てをあえて押しつぶしてきたのだ。
 安倍政権は新型コロナウイルスへの感染拡大を口実に労働者が会合を持つこと自体を禁じる実質的な「戒厳令」を布告している。中労委の反動命令は、まさにそれに乗じて強行された。
 これは、労働組合の団結を保障し、労働組合との交渉によって労働条件を決めるという戦後労使関係の基本を破壊し、改憲に道を開く攻撃そのものだ。「労組なき社会」づくりの先頭にJRは立っている。そのJRに解雇撤回を求めた申し立てをめぐり、中労委が調査もせずに却下・棄却命令を下してきたのは、ここに労働者と資本との攻防の焦点があるからだ。
 国鉄分割・民営化以来、三十数年にわたり解雇撤回闘争を闘い続けてきた国鉄労働者の怒りと執念は、この反動によって押しつぶされるようなものでは断じてない。国鉄1047名解雇撤回闘争は、改憲情勢下の労組破壊攻撃と対決し、コロナ解雇に対する全労働者の怒りを束ねて、資本・国家権力と全面激突する大決戦に入ったのだ。

労働委員会の自殺行為だ

 中労委の却下・棄却命令は、「労働委員会への申し立ては不当労働行為のあった日から1年以内」とした労働委員会規則を盾に、〝解雇から30年以上が経過しての申し立ては不適法〟と決めつけた。だが、不当な解雇をJRが撤回していない以上、不当労働行為は今に至るも継続している。
 動労総連合は三十数年にわたる粘り強い解雇撤回闘争の中で、解雇の首謀者がJR設立委員だった事実を突き止めた。動労総連合は、それをもとに新たな労働委員会闘争を起こした。新たな申し立てが解雇から三十数年後になったのは、JRと国家権力が1047名解雇の真実を隠し続けてきたからだ。
 しかし中労委は、過去の最高裁判決を引用して、「JR設立委員ひいてはJRは使用者には当たらない」と決めつけている。調査も審問もせずに、なんでこんな断定が下せるのか。中労委は事実と向き合うことから徹底的に逃げている。中労委の反動命令は、「不当労働行為をしても、その真相を隠しきれば、使用者はその責任を問われない」と、資本に労組破壊をけしかけているに等しい。
 解雇撤回に向けた団体交渉をJRに求める申し立てについても、中労委は自ら下した「JRは使用者ではない」という判断を盾に、「解雇撤回の命令が発せられる余地はない」から、JRには団交に応じる義務はないと決めつけている。
 動労総連合の申し立てについて、初審の千葉県労働委員会は一切の審理を拒否して不当な却下決定を下した。そのため動労総連合は、中労委に対し、審査を県労働委に差し戻すことを求めた。それについても、中労委は労働委員会の制度上、差し戻す規定はないとして申し立てを否定した。
 千葉県労働委の不当極まる審理拒否に対しては、それを弾劾する裁判が東京高裁で争われている。動労総連合は、その裁判の結論が出るまで、中労委での審査を停止することも求めていた。だが中労委は、千葉県労委の対応に「手続き的違法は存しない」と決めつけた。そして、今、東京高裁で係争中の裁判についても、動労総連合の訴えは「不適法として却下されるべきもの」と裁判所に成り代わって勝手に「判決」を下し、中労委には審査を中断する義務もなく、審査を中断することは相当でもないと言い放って、不意打ちの反動命令を下したのだ。

JR設立委が首切り主謀

 ここに貫かれているのは、国鉄1047名解雇の真相を、動労総連合が三十数年がかりで暴き出したことへの恐怖に他ならない。
 国鉄分割・民営化直前の1987年2月、国鉄職員局次長だった葛西敬之(現JR東海名誉会長)は、JR設立委員長の斎藤英四郎(当時、経団連会長)に、JRから動労千葉組合員らを排除するための「不採用基準」を作るよう進言した。斎藤もこれに応じて基準の策定を命じ、その基準はJR設立委員会の会合で正式に決定された。
 これに基づき、当初は掲載されていた動労千葉組合員らの名前がJR採用候補者名簿から削られた。その実務を担ったのは、現JR東日本社長の深沢祐二だ。こうした経過は、当時、国鉄総裁室長だった井手正敬(後にJR西日本社長・会長)が詳細に語っている。
 不採用基準の策定が不当労働行為であることは、国鉄を引き継ぐとされた鉄建公団(現鉄道運輸機構)を相手に動労千葉が起こした裁判で、最高裁が15年6月に出した決定によって確定している。
 分割・民営化の枠を決めた国鉄改革法は、「JR設立委員の行った行為はJRの行為」と定めている。不採用基準が不当労働行為であり、JR設立委員がその基準を作った以上、JRには不当労働行為による解雇を撤回する義務がある。
 労働委員会の審問廷に葛西や井手、深沢を引きずり出せば、JRの責任はたちどころに明らかになる。国鉄闘争はここまで敵を追い込んだのだ。
 だから中労委は、一切の調査・事実調べを拒否することによってしか、反動命令を下せなかったのだ。この壁をぶち破れば、解雇撤回は必ず実現できる。

団結権否定の攻撃現場から打ち破れ

 安倍が強行する「働き方改革」の核心は、労働組合の解体だ。全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への弾圧と、JRによる「労組なき社会」づくりの攻撃は、その最先端にある。
 経団連は20年版経営労働政策委員会報告で、集団的労使関係に代えて「社員との個別的労使関係を深めていく」と打ち出した。それを受けて、集団的労使関係の基礎をなす労働組合の団結権否定が、労働委員会制度の解体という形で始まったのだ。今回の反動命令で、中労委は自らその道に突き進んだ。
 だが、コロナ解雇が横行する中、労働組合を取り戻す闘いが至る所で始まっている。JR職場も、運転士と車掌の職名を廃止する「新たなジョブローテーション」の実施を阻止する決戦のただ中にある。
 JR東日本が3・14ダイヤ改定で強行した総武緩行線の各駅間5秒の運転時分短縮は、国鉄分割・民営化直後に起きた88年12月の東中野駅事故を再び引き寄せる大暴挙だ。これとの攻防は、分割・民営化そのものを撃つ闘いだ。
 中労委の反動命令を打ち破り、国鉄1047名解雇撤回へ総力で闘おう。

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