新型コロナウイルスに対する八尾北労組の見解 「ただちに保健所を増やし、全ての公的関係機関の予算と人員を増やせ、正規職を雇え」

週刊『前進』02頁(3127号01面03)(2020/04/23)


新型コロナウイルスに対する八尾北労組の見解
 「ただちに保健所を増やし、全ての公的関係機関の予算と人員を増やせ、正規職を雇え」

(写真 「差別をあおる学校選択制導入で桂中学校つぶしを許さない!」。八尾北医療センター労組は新調したのぼりを林立させ、全国水平同盟西郡支部らと共に第3波八尾市抗議行動に立った【4月15日 大阪・八尾市役所前】)

 新型コロナウイルスによる医療崩壊の危機は、30年にわたる新自由主義の民営化と予算・人員削減、非正規職化が生み出した!
 安倍政権は4月7日、緊急事態宣言を行った。オリンピックのためにクルーズ船を隔離し、事態を小さく見せようと必要な対応を遅らせてきたのが安倍政権です。さらに、根本的には、この30年にわたる新自由主義政策、目先の利益のために公衆衛生に対応する機関や公立・公的病院をとことん減らし、民営化し、予算・人員を減少させ非正規職に置き換えてきた中で新型コロナの爆発的な感染を生み出したのです。
 接触者外来の相談窓口、感染者の追跡調査、PCR検査の3つを担っているのが保健所です。その保健所がこの30年間で全国300以上(40%!)も減らされ469に。予算も人員も減らされました。日常業務をこなすだけで手一杯のところにコロナ危機が襲いました。

進む非正規化

 感染症対策の担当省庁である厚労省は非正規職員が53%にまで増え、専門機関である「国立感染症研究所」「感染症病院」も予算・人員が削減され非正規職化が進んだ。
 治療と入院の拠点となる公立病院の民営化も激しく進められてきました。さらに安倍政権は、昨年全国の公立・公的病院424か所の統廃合を打ち出し、小池都知事は、都立病院の独法化(民営化)をこの3月31日に決定しました! 東京都内の感染症病床がパンク寸前の中であまりにもむちゃくちゃな決定です。今新型コロナウイルスと必死で格闘しているのは、こうした公立・公的機関とそこで働く労働者であるにもかかわらずです!
 安倍も小池も自らの責任を頬かむりして、さらに公立・公的部門の民営化と非正規職化=労組破壊に突き進んでいます。コロナ危機を使った改憲の動きを許してはなりません。

私たちは訴えます

 今必要なのは保健所を増やすこと、公立・公的病院を増やすこと、全ての関係機関の予算と人員を増やし、職員を正規で雇うことです。検査と治療ができる体制を作るためにすべての予算をつぎこむべきです。
 そもそも人類の歴史は感染症との闘いの歴史でもありました。基本的に70%の人が感染して免疫が獲得されて収束することがわかっています。薬やワクチンの開発が期待されますが、基本は本来人間が持っている自然治癒力(免疫力)が大切です。
 実際、今回のワクチンが開発されるまで1年半かかると言われています。普段から、食事・睡眠・運動・人のつながりによって免疫力を高めておけば80%の人が軽症で免疫を獲得できます。普通の風邪の対応と大きな差はありません。ただし高齢者や基礎疾患のある人は重症になりやすいので早期発見・早期治療が必要です。この早期発見・早期治療を妨げているのが新自由主義30年の現実です。

他国の現状

 アメリカではインフルエンザによって年間3万人もの死者が出ています。多くの労働者が免疫力を奪われています。ダブルジョブ・トリプルジョブによる疲労と体力低下。不規則な食事、新鮮な野菜のないフードスタンプによる肥満と糖尿病の多発。家賃が払えずホームレスに。医療保険が高すぎて加入できない、治療が遅れ(受けられず)重症化する。新型コロナによる死亡者をアメリカの地図に点打ちすると、貧困地域に重なっています。コロナウイルスが単なる自然災害ではなく、貧困と格差、資本家による労働者への徹底的な搾取と団結破壊、分断の問題であることを突き出しています。
 こうした現実に対して、世界中で怒りの声が上がり、ストライキが闘いぬかれています。その先頭に労働組合が立っています。韓国、香港、アメリカ、イタリア……。イタリアでは「命の危険がある現場での業務停止」「休業中の賃金全額補償」「雇用保障」「衛生管理の実施、必要器具の配付」を突き付けてストライキに決起。緊縮財政の犠牲にされてきた保健・医療の現場では、行政当局に予算支出と改善措置を強制しました。
 団結した労働組合の闘いこそが命を守れることを示しています。日本でもこの闘いに続きましょう。

生きるための医療

 武漢での事態と封鎖、クルーズ船の隔離は、1947年の天然痘の流行と200人の命を奪った西郡の隔離と重なります。その悲しみと怒りの中から住民が資材と労力を持ち寄って1951年に西郡平和診療所(八尾北医療センターの前身)を建設しました。
 赤痢の流行時には労働組合が阪大公衆衛生研究所と協力し、保健所を動かし34か所の井戸水の水質検査を行いました。すべての井戸水の汚染が確認され、上下水道の完備につながりました。あらゆる感染症の予防には手洗いが不可欠です。コロナの予防も同じです。しかし現在でも世界人口の60%(40億人)が水道がありません。新自由主義による貧困と格差の現実を変えなければなりません。
 八尾北医療センターは、新自由主義による国鉄分割・民営化と一体となった大阪府下27か所の同和地域の病院廃止・民営化攻撃を地域住民と共に打ち破り、労組が自主管理している診療所です。八尾市による「倒産」攻撃に住民と闘う労働者の英知を集めて勝ちぬいています。病院資本や製薬会社、医療機器メーカー、保険産業などの金もうけのための「高度医療」「薬漬け」「検査漬け」ではなく、共に生きるための医療をめざしてきました。命を守れるのは労働組合と住民の団結した力です。新自由主義30年で奪われてきたすべてのものを奪い返そう! 「保健所を増やせ! 公的病院を増やせ! 人員を増やせ! 正規で雇え!」
 2020年4月9日
 八尾北医療センター労組
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