命を守れ!世界のメーデー 経済優先する政府・資本と対決 団結した労働者は負けない!

週刊『前進』02頁(3131号02面01)(2020/05/14)


命を守れ!世界のメーデー
 経済優先する政府・資本と対決
 団結した労働者は負けない!

(写真 ILWUがストライキでオークランドの港を止める中、ターミナルで地域の労働者とともに開催されたメーデー集会【5月1日 カリフォルニア州オークランド】)

(写真 「すべての解雇禁止」「雇用は国家責任」を掲げて決意大会を行う民主労総金属労組【ソウル・チョンテイル橋】)
(写真 家賃や借金債務の不払いを訴える車両デモの参加者。スペイン語のポスターも車体に貼っている【アメリカ・オークランド】)
(写真 ストライキに決起し倉庫内で職場集会を開催するTNTの労働者【4月30日 イタリア・ミラノ】)
(写真 民主労総執行部、京畿本部とともにソウル・大学路からデモ行進する民主労総ソウル地域本部)


 コロナ情勢のもと全世界で開催された今年のメーデーは、労働運動が新たな段階へと押し上げられたことを鮮烈に示した。生き抜くためには労働組合が必要だと多くの労働者が肌で感じ、闘いの中で自らの力を実感している。人々の命を守り社会を動かしていることへの誇りと地域丸ごとの連帯が生み出されている。

アメリカ覆う新たな闘い

(写真 家賃や借金債務の不払いを訴える車両デモの参加者。スペイン語のポスターも車体に貼っている【アメリカ・オークランド】)

 米大統領トランプはメーデー当日の5月1日を「経済再開」の日に定め、十分な防護策もないまま労働者に職場に戻るよう命じた。
 この間トランプは、労働者の不安や怒りにつけこんで「経済が止まれば多くの労働者が命を落とす」とあおり、これと呼応した極右勢力が「アメリカを再開しろ!」をスローガンに星条旗を打ち振ってデモを展開している。
 しかし、コロナで死ぬか飢えて死ぬかという選択を迫ることなどふざけ切っている。十分な対策も補償もないままに経済再開を叫ぶトランプこそが、労働者の命を奪っている張本人だ。経済を守るために命を差し出せという政府と資本に対し、米労働者民衆は歴史的な反撃を開始した。

ILWUが港湾封鎖8時間敢行

 「殺された仲間たちを忘れるな! 生き抜くために闘おう!」----カリフォルニアでは、ILWU(国際港湾倉庫労働組合)ローカル10、34、91がオークランド港の8時間封鎖を敢行し労働者の力を見せつけた。
 港で行われた集会では、ローカル10のトレント・ウィリス委員長、ローカル34のキース・シャンクリン委員長らが、新型コロナから労働者と地域の安全を守る闘いについて訴え、マスクや手袋などの防護具の支給を求めて声を上げた。
 ここには、学部生に教える教育労働者としてストライキを闘っているカリフォルニア大学サンタクルーズ校などの大学院生も参加し、教員や移住労働者の組織化について報告した。
 移民団体代表は、クラスターが発生しオークランド港に停泊中のグランド・プリンセス号に500人以上のフィリピン人船員が監禁されていることを弾劾。
 教育労働者も次々と発言。地元オークランドの教師は、学校が休校となる中で多くの子どもたちがオンライン授業を受ける環境のないまま取り残されている現状について訴えた。
 さらに配達労働者やトラック運転手、ファストフード店の労働者も発言。最後に退職組合員のクラレンス・トーマスさんがメーデーの歴史を振り返り、港の民営化反対を訴えた。
 集会後はオークランド市街のキャラバンに出発だ。ボードや横断幕を貼り付けた自動車と自転車数百台からなる隊列が市街をデモし、人々に労働者の団結と闘いを呼びかけた。開け放たれた車の窓からは音楽が流れ、スローガンや映像を映し出す電光スクリーンが牽引(けんいん)された。
 キャラバンは、刑務所前では全ての収容者の解放を、学区事務所前では全ての子どもたちへの公平な教育を、市役所前では「権力と資源を人民へ」、病院前では全ての人々への無償の医療を、労働者がストで闘うスーパーの前では労働者を守れと訴えて進んだ。

アマゾン先頭にゼネストに突入

 この日、アメリカはストの波に覆われた。看護師は、13州の139病院で防護具を求めて抗議行動を決行。アマゾンやウォルマートなどの労働者は、安全な労働環境や危険手当を求めてロサンゼルス、ニューヨーク、シアトルなど全米でゼネストに突入した。重要なのは、こうした新たな運動を既存の労働組合が支え、ともに闘う動きが始まっていることだ。
 さらに、家賃不払い運動も合流した。コロナ解雇によって労働者の5人に1人が失業し、失業保険の申請が7週間で3300万件を突破する中で、4月の第1週には借家に住む人の約3分の1が家賃を払えない状態となった。現在、こうした状況のもとで生き抜くために、1929年大恐慌直後と同様に家賃不払い運動が急速に拡大している。
 メーデーにあわせた統一行動として各地で行われた自動車キャラバンは、家賃や住宅ローン、光熱費、借金債務の不払いを訴え、「不動産や企業の利益ではなく、われわれの命を優先しろ!」「すべての人々に家を!」と声を上げた。

韓国・民主労総が戦闘宣言

(写真 民主労総執行部、京畿本部とともにソウル・大学路からデモ行進する民主労総ソウル地域本部)

 韓国では5月1日、全国民主労働組合総連盟(民主労総)が、「名実ともに2500万労働者の代表組織」(民主労総メーデー宣言文、以下同)として闘うことを宣言した。
 韓国では3月、航空、観光、飲食業をはじめ22万人以上が雇用を失った。メーデーを前にした4月29日には京畿道利川市の物流倉庫新築工場で爆発火災事故が起こり、38人の建設労働者、移住労働者が亡くなった。その大部分が、電気・塗装・設備など下請けの非正規職労働者だった。
 民主労総は1日昼、ソウルの世宗文化会館前で記者会見を開催。冒頭に利川事故の真相究明と責任者処罰、再発防止対策を要求した上で、解雇禁止、生計所得保障、社会安全網の整備と非正規職撤廃を要求するメーデー宣言を発した。
 核心的議題として「あらゆる解雇禁止と弱者階層に対する生計所得保障、社会的安全網全面拡大」を決定したとし、これは「130年前にシカゴの労働者たちが8時間労働制を叫び、凄絶(せいぜつ)なストライキ闘争を展開した時の切実さと同じであり、50年前にチョンテイル烈士が勤労基準法を守れと全身を燃やし尽くした、その精神と一致する」と断じた。
 民主労総は5、6月に解雇撤回と生計保障のための運動を進め、7月4日に10万全国労働者大会を開催することを明らかにした。
 コロナ情勢を考慮し、今年のメーデー行動は全国15の拠点共同行動として実施。産別労組も別個に大会と行進を行い、これらを民主労総がオンライン生中継した。午後1時すぎ、ソウル・平和市場のチョンテイル橋に集まった金属労組からは旭非正規職支会のナムギウン首席副支会長がインタビューに応じ、「コロナ19で全国の非正規職労働者が苦痛を受けている。非正規職労働者が安易に解雇されず、生存権を勝ち取りたい」と語った。

イタリア全土で大衆行動

(写真 ストライキに決起し倉庫内で職場集会を開催するTNTの労働者【4月30日 イタリア・ミラノ】)

 イタリアのメーデーは、コンテ政府・イタリア経団連の自粛要求に屈した体制内3大労組がビデオメッセージなどで終わらせようとしているのに対し、職場で「コロナウイルスから労働者の健康と命と職を守れ」というスローガンで闘ってきた独立労組が独自の大衆行動を全国で展開した。
 警察権力はコロナ情勢を口実に集会を禁止し、参加者に罰金を科すという弾圧を加えてきた。
 これに対し、「祭典ではなく、今こそストライキだ」を掲げて先頭に立ったS.I.Cobas(産別職場労組連合)は、4月30日~5月1日を連続行動日として設定。組合の最大拠点である物流部門をはじめ、さまざまな職場で、ロックダウン中の賃金補償の前払い、無料の公的医療制度の復活、スト・デモ・集会の自由の保障などの要求を掲げて闘争を展開した。
 闘いはストライキを中心に、スト通告なしの欠勤闘争や、職場での「フラッシュ・モブ」(瞬間的パフォーマンス)などの柔軟な戦術を駆使。圧倒的多数の労働者と失業者の運動をはじめ、住宅問題、環境問題など、さまざまな市民運動との協力で貫徹した。
 闘争とストライキの中心になったのは、国際的物流・運輸会社TNTの労働者たちだ。北部工業地帯のミラノ、トリノをはじめ、ローマ、フィレンツェ、ナポリ、ボローニャ、モデナ等々、全国数十都市に張りめぐらされた物流・運輸のネットワークを担う運転手、倉庫労働者などが、各職場でほとんど100%に近い参加率で、ストあるいは欠勤闘争に決起した。
 これに恐怖したTNTは労働者66人に対してスト参加を口実に無期限休職を通告。国家権力は、ミラノ支店の倉庫を占拠していた労働者の暴力的排除のために数十台のトラックに乗った機動隊を投入して大弾圧を行った。闘争は継続中だ。
 コンテ政権は「コロナウイルス危機は第2段階に入った」などして規制の緩和を語っているが、イタリア労働者階級は5月8日~6月4日の全国郵便スト、5月12~14日のガソリン供給所・給油所スト、5月15日の教職員ストなど、各産別で反撃を準備している。

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