コロナに乗じる東電弾劾 福島は次の一歩つかみ、進む

発行日:

週刊『前進』02頁(3131号02面02)(2020/05/14)


コロナに乗じる東電弾劾
 福島は次の一歩つかみ、進む


 4月16日、政府は全国を対象に緊急事態宣言を拡大布告したが、福島県においては耳新しいことではない。9年前の2011年3月11日、福島第一原発事故直後に「原子力緊急事態宣言」が発令されたまま継続中だからである。≪いまだ事故が収束していない、再爆発すら否定できないところ≫福島だからである。
 事故直後、当時の枝野幸男官房長官が「直ちに人体や健康に影響はない」「逃げるな」と言い、翌年12月に発足した第2次安倍政権は放射線被曝基準を大幅に緩和し「戻れ」と帰還を強いた。今度はコロナ感染リスクが拡大するから「とどまれ」と言っている。安倍政権よ、どの口で「命の危機」をうたうのか。「感染拡大リスク」で国民を統治しようとするのか。
 「健康問題は影響なし」として、オリンピックを招致し、常磐線全線開通に間に合わせ帰還困難区域解除。この欺瞞(ぎまん)を許せない。翻って、乗務員・少数の地域住民らは、 被曝と「コロナ感染リスク拡大」への不安におびえながら、原子炉直近の高線量放射能汚染地帯を通らざるを得ない。この不条理に応えよ!

作業体制縮小狙う

 コロナ情勢にからんで許しがたい事態がさらに起きている。東京電力が二つの方針転換を行うとのこと。その一つは緊急事態宣言の対象区域の全国拡大に伴い、コロナ感染拡大の危険性を下げるための措置として、福島第一原発の廃炉の作業体制を縮小する考えを4月16日に示したのだ。東電は反対の声の大きさにおびえて20日、一旦その方針を撤回したが、「作業縮小の準備を進める」としており、あくまで行う考えだ。
 だが「縮小」は問題のすり替えではないのか。作業員の不足の事態はかなり前から報じられていたし、4月19日のEテレの深夜番組は、終始、高濃度汚染状態下での廃炉作業の限界を伝える内容だった。コロナ感染対策を理由に人員削減を押し出し、あたかもそれが廃炉工程での遅れの主因などと強調するのは全くの筋違いというもの。

防護服着用も中止

 もう一つ、さらに驚くべきことは「2月18日から、廃炉作業で使う装備品やその使い方を変更する。処理水のタンク群などで使う特注の防水スーツは市販の雨ガッパで代用し、汚染度が特に低い区域では防護服を着ずに節約する。安全面で影響はない」と打ち出したことだ。その理由は「新型コロナウイルス感染拡大による流通混乱に備えて」というもの。
 世界中の人々が人類史の命運をかけてこのコロナ危機に戦々恐々としていることをよそに、〈コロナ煙幕〉を張って理不尽な方針を暴言する東京電力。原発労働者の命の軽視、命への冒涜(ぼうとく)ではないか。東京電力資本の本質を暴き、強く糾弾していかなければならない。コロナ危機に乗じて「国民の皆様の命を守るためにあらゆることを……」と言いつつ「国会で憲法審査会で活発な議論を」と労働者階級を殺し合わせる戦争へ猛進する安倍政権。一刻も早く政権の座から引きずり下ろさなければ、コロナからも戦争からも命を守れない。
 軍事費をすべて、崩壊寸前の医療現場体制の充実、医療労働者の労働条件改善に回せ。3・11原発事故の「自主避難者」、保養者の補償に回せ。すべての原発廃炉! 再稼働阻止! 原発新設をやめろ!
 福島は打ちひしがれるわけにはいかない。この闇の中から次の一歩をつかみ抜く。
(福島 椎名千恵子)
このエントリーをはてなブックマークに追加