スーパーシティ法案阻止を 規制全廃・AI監視社会が狙い

週刊『前進』04頁(3134号02面03)(2020/05/25)


スーパーシティ法案阻止を
 規制全廃・AI監視社会が狙い


 安倍政権はコロナ危機に乗じて、昨年廃案に追い込まれた国家戦略特別区域法の改悪を強行しようとしている。規制を全廃して街全体をAI(人工知能)・顔認証システムで覆い、デジタル大合理化・民営化を進める「スーパーシティ」と、国や自治体が持つ膨大な個人情報の企業への提供の義務化が柱だ。

今国会での成立たくらむ

 検察庁法改悪案の陰に隠れ、特区法改悪案は4月16日に衆議院本会議で可決され、参議院での採決・成立がもくろまれている。
 加計学園獣医学部新設をめぐる疑獄は戦略特区の規制緩和のもとで行われた。森友とあわせ「安倍を監獄へ」の怒りが巻き起こり、特区法改悪案は昨年の通常国会で廃案に追い込まれた。安倍はそれをコロナ危機に乗じて復活・成立させようとしている。「10万円給付はマイナンバーカードの方が早い」という政府のデマで、住民がカード作成や暗証番号変更のために役所の窓口に殺到し大混乱。そのことをも使って「社会のデジタル化が必要だ」と宣伝しているのだ。
 新自由主義が医療を破壊し、社会をずたずたにしてきた。多くの命が危機にさらされ、休業の強制に続く大量解雇・大失業が追い打ちをかけている。この時に安倍はスーパーシティを水路に新自由主義をさらに徹底的に進めようとしているのだ。5月5日付日経新聞は社説で「コロナ禍を奇貨として、官民挙げて日本のデジタル実装を力強く進める……好機」と言い放った。労働者のことなどなんとも思っていない。「命より利潤」が全てであり、ここに法案の本質がある。

中国を手本に顔認証推進

 内閣府は、スーパーシティとはAIやビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変える「まるごと未来都市」だと説明する。キャッシュレス化、行政手続きの簡易化やオンライン教育・医療、自動車の自動走行などを挙げて、「社会的課題の解決を図る」。他国に比べて立ち遅れている膨大な行政・住民データ、個人データなどの収集・整理・提供のためのデータ連携基盤を確立する。そのために「規制のサンドボックス(砂場)」なるものを導入し、データ収集に対する現行の規制を最小化し問題が起きたら事後に点検するように変える。こうして既成事実を先行させ、あらゆる個人情報を国と資本が自由に使えるようにする。実質的な改憲の先取りだ。
 3月18日の国家戦略特区諮問会議(安倍が議長、竹中平蔵らが有識者議員)では、資料として中国・杭州市の例が出された。市内の43%をカバーする4千台超の監視カメラの映像を収集しAIが約20秒で警察にアラート通報することや、無人コンビニでスマホすら必要としない顔認証によるキャッシュレス支払いが可能となっているという。
 瞬時の通報や顔認証支払いということは、顔写真や預金口座などあらゆる個人情報が集約・連携され、警察権力や企業によって使われているということだ。AI・デジタル技術、監視カメラ・顔認証システムを使った全個人情報・動向の掌握による監視社会・治安国家化であり、企業活動への活用だ。住民は全員選別されランク付けされる。安倍は中国を手本にスーパーシテイを導入し、全社会化しようとしているのだ。

全面民営化し労組を破壊

 総務省は2018年、デジタル化を軸に地方自治制度を解体する自治体戦略2040構想を発表した。職員を半減し事務作業はAI・ロボット化で自動処理。少数の正規職が企画と徴税などの権力的業務を担う。残りは会計年度任用職員か民間委託。利潤の出る業務は民営化し不採算部門は切り捨てる。スーパーシティはその水路とされる労組破壊と一体の大攻撃だ。
 神戸市は昨年11月、特区法案に先駆けてスーパーシティ構想を打ち出した。AIなどで23年度までに8割の業務を来庁不要にするという。18年9月、市職労の「ヤミ専従」問題を使った当局の攻撃の中で組合脱退は1200人に及んだ。これに対し昨年3月、動労千葉派は「組合つぶし反対、ストライキで闘う組合をつくろう」と訴えて委員長選で1585票を獲得。今年1月の大会では「10年やって一人前になる仕事がAIでできるか」と声が上がった。「組合つぶしは戦争のためだ」と真っ向から対決して闘いが進んでいる。
 3月の諮問会議資料は、カナダ・トロント市でグーグル系列企業が個人情報を収集することに住民が反発し計画が破綻している事実も示している。労働組合が先頭で闘うならスーパーシティ攻撃など必ず粉砕できる。安倍への怒りをさらに解き放って闘おう。
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