全国農民会議が訴え 自家増殖(採種)禁止は誰のため? ―私たちは種苗法改悪に反対します―

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週刊『前進』04頁(3134号03面02)(2020/05/25)


全国農民会議が訴え
 自家増殖(採種)禁止は誰のため?
 ―私たちは種苗法改悪に反対します―


 安倍政権は、新たな品種を育成する権利の保護を定めた種苗法の改悪を狙っている。全国の農民の怒りの声で今国会での改悪強行は阻止したが、今後も攻防は続く。種苗法改悪によって種子を農民の手から奪い、「知的財産」として企業の支配下におき、アグリビジネスの金もうけの道具とすることを絶対に許してはならない。4月12日に全国農民会議が発行したビラを転載します。(編集局)

 今国会に種苗法改定案が提出されましたが、新型コロナ感染症対策で国会審議の短縮が懸念されます(種子法廃止は衆参両院で5時間ずつでした)。改定は、品種登録された種苗を農家が自家増殖(採種)することを原則禁止するもので、これからの農業に重大な影響を与えます。

挿し木・接ぎ木・タネとりが禁止に

 現在の種苗法では、研究開発や農家が行う自家増殖は原則自由で、特定の品目(289種)だけが禁止されています。改定で「登録品種の種苗として用いる自家増殖は、育成権者の許諾に基づき行う」とし、許諾を受けなければ自家増殖ができなくなります。

優良品種の海外流出は防げない

 「シャインマスカットやとちおとめが海外で生産されている。国内で開発された農作物品種の海外流出を防ぐため」と政府は言います。しかし、海外での品種登録を進めれば現行の枠組みでも対応は可能であり、国内農家の自家増殖と種苗の海外流出は直接関係ありません。

在来種の自家増殖は大丈夫か?

 「在来種の自家増殖はOK」と説明していますが、安心できません。登録品種の特性を「特性表」に記載することで、他の品種の特性と比較し同一性を立証しやすくなります。万が一、自家増殖を続けていた在来種が変異を重ね、登録品種の「特性表」に類似した場合、育成権者から訴えられる恐れがあります。裁判の負担を考えると、栽培自粛=自家増殖をやめざるを得なくなります。
 そもそも登録品種を申請するのはほとんどが種子企業・巨大アグリ企業です。農家が登録・申請費用を負担することは不可能です(登録に数百万円〜1千万円かかる)。自家増殖禁止は、種子企業の儲(もう)けのために農家が種子・種苗を自由に育成することを縛るものです。

タネは農民のもの・社会の共有財産

 私たちは「タネは農民のもの・社会の共有財産」という考え方を支持します。これは日本も批准している国際条約「食料・農業植物遺伝資源条約」で謳(うた)われており、「小農の権利に関する国連宣言」(2018年10月)でも第19条(種子への権利)として「農民が自家農場採取の種苗を保存、利用、交換、販売する権利を有している」とされています。
 種苗法改悪は、農家の種子・種苗の自由な育成を制限し、むしろ企業による種子支配=農業支配に道をひらきます。種苗法改悪に反対しましょう。

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▼小農の権利に関する国連宣言 2018年に国連が採択した「小農民と農村で働く人々の権利に関する宣言」のこと。強制力はないが、巨大農業資本の支配に抗し、小農とその共同体の権利を強調する内容となっている。種子などの資材供給を通じて自国企業が巨利を得ている米国は「個人の権利や知的財産権を侵害する」として反対し、日本も棄権に回った。

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