1人の首切りも許さない 大恐慌で始まった大量解雇 労働組合を再生し立ち向かおう

週刊『前進』04頁(3136号03面01)(2020/06/01)


1人の首切りも許さない
 大恐慌で始まった大量解雇
 労働組合を再生し立ち向かおう


 コロナ危機は恐慌を伴いつつ一層深まっている。内閣府が発表した今年1〜3月期のGDP成長率は、年率換算でマイナス3・4%になった。緊急事態宣言が出された4、5月に経済がさらに悪化していることは確実だ。今年4〜6月期のGDP成長率は、年率換算でマイナス20%になるというのが、大方の予測だ。

数十万の雇用が奪われる

 企業の決算も急速に悪化した。日本の上場企業の26%が、今年1〜3月期の純損益で赤字になった。全企業の利益は、前年同期比で66・8%も減少した。
 東京商工リサーチの発表によれば、4月に起きた負債額1000万円以上の企業倒産件数は全国で743件で、前年同月比15・2%増になった。同社は、これらの企業が雇用していた労働者の数は約6990人だとしている。
 厚生労働省は、新型コロナウイルス関連の解雇や雇い止めは、2月から5月21日までの総計で1万835人と発表したが、およそそんな数にとどまらないことは明らかだ。
 総務省が4月28日に発表した今年3月の労働力調査では、非正規労働者は2150万人で、前年同月比で26万人減になっている。これだけの規模の雇用がコロナ危機の中で失われた可能性は、十分にある。
 実際、社会には「いきなり首切りを通告された」「派遣切りにあった」という怒りの声が満ちている。

産業構造そのものが崩壊

 政府は5月25日に、北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉で継続されていた緊急事態宣言を解除した。しかし、それによって経済が今後、「V字回復」することはあり得ない。
 緊急事態宣言が全国で解除されたのは、経済活動が抑制されている状態に資本家階級自身が耐え切れなくなったからだ。新型コロナウイルス感染症そのものは何も克服されていない。にもかかわらず、資本のもうけのために経済活動を再開するというのだ。
 休業補償もないまま強行された緊急事態宣言によって、労働者人民は生きるための収入さえ確保できない苦境にたたき込まれた。そして今度は、まともな感染防止策もない環境での労働と通勤を強いられるのだ。
 しかし、感染拡大の第2波、第3波が必ず起きることは、政府や資本も認めざるを得ない。この状態で、コロナ前と同じ生産のあり方や、消費のパターンが復活することは絶対にない。
 それは、コロナ前からあらわになっていた過剰資本・過剰生産力の矛盾をさらに激化させる。企業の倒産や解雇が長期にわたって続くことは避けられない。

「V字回復」などありえない現実

 緊急事態宣言は解除されたが、外国からの入国を拒否する措置はとられたままだ。それがいつ解除されるかのめども立っていない。この事態が経済に与える影響は、きわめて大きい。
 国際的な人の移動が禁止された状態で、物だけが今まで通りに国境を越えて動くことはあり得ない。4月の日本の輸出額は、前年同月比21・9%減の5兆2023億円になった。これは、リーマン・ショック後の2009年10月に記録した23・2%減という数値に次ぐ、減少幅だ。
 トヨタ、日産、ホンダ、マツダ4社の、4月のアメリカ市場での新車販売台数合計は、前年同月比で52・4%も減少した。3月の米市場での日本車の販売台数も、前年同月比で40%以上も減っている。自動車は、帝国主義間の争闘戦で敗色が濃厚の日本帝国主義が、かろうじて優位性を残している分野だ。
 その産業が、この惨状なのだ。自動車各社は、「造っても売れない」という理由で、6月に入っても1週間程度の生産休止を続ける方針だ。
 鉄鋼をはじめ、自動車に素材や部品を供給する膨大な産業も、これによる深刻な打撃を受ける。
 日本帝国主義を帝国主義として成り立たせてきた産業構造そのものが、崩壊しようとしているのだ。

JRが再び攻撃の先頭に

 国際的な人の移動の制限は、直接には宿泊業や交通運輸業を危機に陥らせた。
 国際線がほぼ全面運休し、国内線も大幅な減少が強いられている日本航空や全日空は、国に支援を求めなければ延命できないところに追い込まれた。ホテル業・宿泊業は、訪日外国人客の需要を当て込んで、この間、バブル的な拡大を遂げてきた。その結果、4月の企業倒産で最も件数が多くなったのがこの業界だ。
 2019年の1年間に、日本に来た外国人旅行客は3188万2千人だった。1カ月あたり約266万人が来日した計算だ。しかし、今年4月に日本に入国した外国籍を持つ人はわずか2900人。しかも、そのほとんどが、日本に生活基盤を持つ人々だ。
 安倍政権は、今年夏の東京オリンピックを強行することで、訪日外国人客数を年間で4千万人にするという構想を描いていた。それは完全に吹き飛んだ。
 この数年、増収増益を続けてきたJR東日本やJR東海も、これによって重大な危機にたたき込まれた。
 今年のゴールデンウィーク期間中の新幹線の乗客数は、前年同期比で北海道新幹線3%、東北新幹線5%、秋田新幹線3%、山形新幹線3%、上越新幹線6%、北陸新幹線4%、東海道新幹線6%、山陽新幹線5%、九州新幹線7%に落ち込んだ。鉄道事業からの脱却を狙い、ホテル業や駅ビル業などの関連事業に重心を移そうとしたJRの方針も、完全に裏目に出た。
 国鉄分割・民営化は本州JRでも全面破産した。民営化されたら、公共交通は成り立たないのだ。
 その中で、JR北海道とJR四国、JR九州は5月1日から、JR西日本は5月16日から、社員の一時帰休を始めた。「労組なき社会」づくりの先頭に立つJRが、国鉄分割・民営化の時と同様、労働者の整理解雇を真っ先に進めてくる可能性は大いにある。
 国鉄闘争全国運動の7・26集会は、この情勢下で労働組合の闘いを取り戻すために開かれる。大恐慌下の大量解雇に労働者の団結と闘いで立ち向かおう。
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