北海道タクシー労働者の闘い 10割の休業補償かちとる 2人の仲間が組合に加入

週刊『前進』02頁(3137号02面02)(2020/06/04)


北海道タクシー労働者の闘い
 10割の休業補償かちとる
 2人の仲間が組合に加入


 北海道のタクシー労働者から闘いの報告が寄せられた。新型コロナウイルスによる感染危機のもとで、仲間と共に職場で原則的組合活動を貫いてかちとった勝利は、重要な教訓に満ちている。(編集局)

コロナで緊急団交申し入れ

 北海道で新型コロナを巡る状況が大きく動き出したのは、2月末だった。「クラスター」が発生し、2月27日には小・中・高の臨時休校が発表され、28日には鈴木直道・道知事が緊急事態宣言を発表。それからは週末に向けて「外出を控えてください」とアナウンスが行われた。その後道内は第2波の危機に見舞われ、4月12日には北海道・札幌市緊急共同宣言が出された。4月16日には政府の緊急事態宣言の特定警戒都道府県に指定された。
 私の職場では、3月2日に組合として会社に対して感染対策の緊急申し入れを行い、早速事務折衝を行った。会社は感染対策をまともに考えず、相変わらず集団点呼を行っていた。感染対策で組合が主導権をとり、点呼室の入口・出口でのアルコール消毒や休憩室(喫煙室)の利用制限、アルコールチェッカーの消毒、マスク配布、検温、特別有休制度などを提案し、いくつかが実現された。
 4月12日の緊急共同宣言により、タクシーの売り上げはさらに激減し、3分の1あるいは4分の1という実感となった。札幌市内でも大手のタクシー会社が休業を実施し始めた。組合員からは「生活できない」と悲鳴が上がった。
 また、東京の仲間からは、「4月13日から6月末日まで50%の休業が基本になる」「休業補償は7割」などの情報とともに、「ロイヤルリムジンで600人全員解雇」「群馬中央タクシーで全員解雇」などの情報が寄せられた。
 「ここは労働組合の出番だ」と4月14日に会社に対して緊急団交を申し入れ、4月18日には組合の全体会議を行った。普段見えない仲間も「今日は出たほうがいいよな」と駆けつけ、多くの組合員が結集した。

6割では到底生活できない

 4月22日に開催された団体交渉で、会社の休業計画の概要が発表された。5月初めから6月末までの期間で50%の休業、休業手当は1月から3月までの平均賃金の6割だという。
 組合は「6割では生活できない」と、8割から10割支給を要求した。この団交で私は、休業協定に従業員代表としてかかわることになった。翌日、団交の報告を社員に配布し、社内での議論が活発になった。
 4月24日から休業協定を巡る会社との話し合いが始まる中で、25日に厚労省の新たな拡充措置が発表され、6割以上支給した部分を国が助成することとなった。この動きを受けて支給を6割から引き上げるよう重ねて要求するが、会社は「持ち出しが増える」として拒否した。休業開始の5月1日が迫る中、ぎりぎりまで再検討を求めたが拒否され、やむなく調印した。
 しかし、今回はあとからでも申請を出せることもあり、あきらめずに増額を追求することにした。5月5日に「休業協定調印の報告/6割ではなく『賃金の全額補償』に向けての課題と展望について」という文書を作成し、従業員に配布を開始した。その中で新たな拡充制度を利用すれば、従業員の賃金補償を増額できることについて具体例を挙げて訴え、真剣に取り組まない会社を批判した。会社では、急きょ5月9日に幹部による緊急会議を開き、これまでの協定を見直す方向に転換した。また、5月8日には労働局で組合案の具体例が承認され、すぐに会社に報告した。
 組合員からは、「6割では到底生活できない」「転職したいけど難しい」「また、あのリーマンショックの後のみじめな生活になるのか」など、切実な声を聴かされていた。その思いを会社は軽く見ていた。
 「増額できる」ということを知らされると、従業員からは様々な声があふれ出てきた。「助かる」と感謝を伝える声や、緊急小口資金を借りに行った話など、普段話さない人からも話しかけられ、他社の状況の情報提供もあった。

組合として新たな地平へ!

 国が雇用調整助成金の上限額を1万5千円に引き上げる方向であることから、その後の交渉は、休業手当について1〜3月の各自の平均賃金日額の10割支給(×休業日数)でまとまった。5月末賃金の支給に間に合った。
 職場の仲間から良い反応があり、仕事終わりに洗車をしていると、70歳と72歳の2人の仲間が組合に加入してくれた。「過去に組合には、役員が組合費を持ち逃げしたりして、苦い思いやトラウマがあったけど、頑張ってくれているのに何もしないわけにはいかないので」と言ってくれた。
 このチャンスに「あなたに入ってほしい」と大胆に呼びかけ、組合として新たな地平に立てるよう頑張ろうと思う。
(北海道 A・K)
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