厚労省がコロナ被害を拡大 「発熱4日以上」基準に検査拒否

週刊『前進』02頁(3143号02面02)(2020/06/25)


厚労省がコロナ被害を拡大
 「発熱4日以上」基準に検査拒否


 新型コロナウイルスへの対応で厚生労働省が2月17日に公表した「相談・受診の目安」は、原案にあった「(重い症状は)4日を待たずに相談すべき」を削除したものだった(表参照)。「目安」は「37・5℃以上の発熱が4日以上続く方は相談する」などとなり、必要な検査や診察が受けられない人々が続出した。

原案の「4日を待たず」を削除

 2月16日に開かれた政府専門家会議の初会合の場で「相談・受診の目安」の原案が示され、議論された。表現の調整を経て、翌17日に公表された。
 この問題をめぐり、加藤勝信厚労相は6月16日、「公表した目安は、専門家会議の議論を踏まえて、原案から体裁を変えて、できるかぎりわかりやすいものにした。最終的に専門家のチェックをいただいており、意図的に削除したのではない」と述べた。また専門家会議の脇田隆字座長(国立感染症研究所所長)は「会議では肺炎が疑われるようなら早く受診してもらう方がいいと言っていた。それがうまく伝わらなかったのであれば、表現ぶりが悪かった」「書きぶりは最終的に厚労省が決めたと思う」と言っている(6月14日付東京新聞)。
 厚労省も専門家会議も居直りと責任逃れに終始している。「4日を待たず」を「4日以上続いたら」にしたら「わかりやすい」のか。削除、書き換えは「意図的」だ。「早く受診してもらいたい」と願っていたかのように言うが、それは後付けでしかない。

自宅療養を強いられて死亡者も

 「4日以上続いたら」が基準となり、保健所の労働者はこの基準で住民に対応するように強制された。
 発熱とだるさ、さすような痛み、息苦しさにあえぐ多くの人が保健所に幾度も電話した。ようやく通じて返ってきた言葉が「37・5℃の発熱が4日以上続いたら改めて相談してください」だった。病院を紹介されず、PCR検査も受けられず、自宅療養を強いられた人も多い。大相撲力士の勝武士さんは、保健所への電話が通じず、検査も診療も手遅れになり病院で亡くなった。電話での相談を自ら控えた。医師が検査を求めても保健所に断られた。
 厚労省は3月2日、状況に応じ目安を柔軟に判断するよう自治体に通知したが、検査能力や病床、人員が限られているなかで、保健所は依然として目安を事実上の基準として運用し続けた。
 感染症病床は1995年の9975床から2019年の1821床に激減、検査機関も限定的だった。新型コロナウイルス感染症流行以前に新自由主義が感染症対策の体制を崩壊させていた。この状態を大前提に新型コロナウイルスに対処しようとしたのだ。

「検査に殺到避けるため」と居直る

 専門家会議の初会合の後の記者会見で脇田座長は「軽症の患者が検査に殺到することは避ける必要がある」と話した。西田道弘さいたま市保健所長は4月10日、「病院があふれるのが嫌で(PCR検査の対象を)厳しめにやっていた」と公言した。
 この西田をはじめ保健所長には厚労省の医系技官出身者の天下りが多い。地方衛生研究所は国立感染症研究所OBの天下り先だ。厚労省と感染研、保健所、地方衛生研の4者が癒着し、情報と利権を独占している。PCR検査の過半が地方衛生研による検査会社への委託だ。この処理能力を超えるPCR検査は行われない。4者の独占が崩れるからだ。3月6日にPCR検査が保険適用になったのにPCR検査件数が増えないのはこのためだ。
批判・悲鳴浴び5月8日に訂正
 「37・5℃4日以上」という目安は2月17日から5月7日まで3カ月近くも実行されたが、批判や悲鳴が噴出したため、5月8日に見直しが発表された。「4日以上」の部分を「すぐに相談」に変え、原案に近い表現になった。遅きに失した。3カ月の間にどれほどの犠牲者が出たことか。
 東京でも武蔵野中央病院、永寿総合病院、慶応大学病院、墨東病院などで院内感染、クラスターが発生した。世界保健機関(WHO)の中から「日本は検査を絞ったことで感染経路を追えない市中感染が増え、院内感染により医療危機を迎えている」「検査をしなかったことにより院内感染が広まり、医療崩壊が起こっている」と指摘の声があった(4月17日のテレビ朝日)。
 政府がやった最大の感染症対策は、466億円もの巨費を投じてアベノマスクを全国の世帯に配ったことだ。資本救済のための経済対策ばかりで、不正・腐敗にまみれた安倍政権は即刻退陣させなければならない。新型コロナウイルスは収まっていない。第2次、第3次の大流行もありうる。経済回復どころか大恐慌の本格的爆発は不可避だ。医療・介護労働者を先頭に労働組合をつくり、コロナ危機を革命に転化する闘いだけが未来を開く。

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新型コロナ 相談・受診の目安
(新型コロナウイルス感染症対策本部のHPより抜粋)
▼2月16日に政府専門家会議に示された原案
以下の場合については相談すべき
・風邪の症状が長く続く場合(3〜4日以上)
・強いだるさ
・〇℃以上の発熱 がある場合は、4日を
・息苦しさ    待たずに相談
▼2月17日に公表された目安
以下のいずれかに該当する方は相談する
・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日
以上続く方
・強いだるさや息苦しさがある方
▼5月8日に改正された目安
少なくとも以下のいずれかに該当する場合には、すぐに御相談ください(これらに該当しない場合の相談も可能です)
・息苦しさ、強いだるさ、高熱等の強い
 症状のいずれかがある場合
・重症化しやすい方で発熱や咳などの比
 較的軽い風邪の症状がある場合
・上記以外の方で発熱や咳など比較的軽
 い風邪の症状が続く場合

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