アメリカ 警察予算の削減かちとる 人種差別と闘うUTLA

週刊『前進』04頁(3148号03面02)(2020/07/13)


アメリカ
 警察予算の削減かちとる
 人種差別と闘うUTLA

(写真 ロサンゼルス統一学区の事務所前で学校警察の予算打ち切りを求めて行われた抗議行動【6月23日 カリフォルニア州ロサンゼルス】)

 ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動は、資本・政府に対する闘いとして発展している。シアトルの解放区は極右勢力の襲撃や行政により撤去を余儀なくされたが、警察解体の闘いは労働組合に引き継がれている。その先頭に立っているのがロサンゼルス統一教組(UTLA)をはじめとする教育労働者たちだ。
 カリフォルニア州ロサンゼルス統一学区(LAUSD)の教育委員会は6月30日、ロサンゼルス学校警察(LASPD)予算のうち35%にあたる2500万㌦(約27億円)を削減することを承認した。その分の予算は今後、黒人生徒の支援と学校の安全計画見直しのための対策本部に回される予定だ。さらに教育委員会は動議で、警官の制服着用と学校内パトロールの一時中止を呼びかけている。
 独立した学校警察としては米最大の500人以上を擁するLASPDにおける決定的な勝利は、UTLAやBLM―LAなど50を超える団体に結集した労働者、学生、保護者らの闘いで実現したものだ。UTLAは6月25日、学校警察を廃止し生徒へのメンタルケアやカウンセリングに予算を振り向けることを求める動議を圧倒的な賛成多数で採択。その後わずか5日で学校警察の予算削減が決定した。
 「ロサンゼルスは、私たちの学校を含めた社会機構全体に内在化された人種差別を清算し、黒人の命を守るために警察政策を見直す歴史的な時を迎えている。人種差別に反対する教育労働者として働くことは、私たちが積極的に、制度化された人種差別に基づくシステム、構造、プログラム、政策などを粉砕しなければならないということを意味する」(6月25日付のUTLAプレスリリース)
 7月1日をもって有色人種の女性として初めてUTLAの委員長となったセシリー・マイアトクルスさんは「ロサンゼルスと全国の路上を埋め尽くした人々の力と情熱、そして黒人の生徒や教育労働者、家族の声こそがこの勝利を実現した」と述べ、生徒を守るために闘い続けようと語る。
 武装した警官が常駐する学校は、黒人の生徒や家族にとって決して安全な場所ではない。「スクール―トゥ―プリズン・パイプライン」という語が示すように、学校から刑務所へ送り込まれる生徒も多い。黒人生徒は十分な教育を受けにくいだけでなく、犯罪者予備軍と見なされて退学や逮捕の割合も高い。「ランダム・サーチ」と呼ばれる金属探知機検査も、実際には有色人種の生徒をより多く対象とする極めて恣意(しい)的なものだ。ペッパースプレーのような兵器が公然と用いられ、一方では貧困に付け込んだ軍隊による募兵活動も行われている。
 UTLAは、生徒に必要なのは警察ではなくソーシャルワーカーやカウンセラーであるとし、「警察のいない学校」を求めて闘ってきた。2019年の大ストライキでも黒人を含めた有色人種の生徒とコミュニティを守ることを大きな目標とし、合意をかちとった。
 6月2日付の声明では「人種差別とは社会的・政治的につくられるものであり、社会において他者を支配しようと考える連中にとって役立つ場合に用いられるものだ」と喝破。「黒人が『息ができない』状態である限り、私たちは休むことはない」と宣言して闘いを継続している。
 現在、ミネアポリスやサンフランシスコ、シャーロッツビルなど多くの都市で教育労働者が警察予算の削減と教育予算の拡充を求めて立ち上がっている。この闘いに学び、連帯しよう。
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