自治体現場から反撃を コロナを機に地方破壊加速 安倍のデジタル合理化と闘おう

週刊『前進』02頁(3151号02面01)(2020/07/23)


自治体現場から反撃を
 コロナを機に地方破壊加速
 安倍のデジタル合理化と闘おう


 自治体の攻防がコロナ下の新自由主義攻撃との一大焦点となった。安倍政権は大水害をも口実にマイナンバー制度の拡大と行政のデジタル合理化・民営化を進め、社会全体のデジタル化を加速しようとしている。それは地方を破壊し、社会の一層の崩壊をもたらす。現場の怒りを結集し労働組合を再生して闘おう。7・26国鉄集会に大結集しよう。

新自由主義との激突点に

 安倍はコロナ感染の再拡大下でGoToキャンペーン(総予算1・7兆円)を東京都民・東京発着を除外して行うとしている。「コロナ感染が広がり、医療が崩壊する」と訴える地方の反対や、「1・7兆円は委託企業を介さずに直接、旅館や飲食店などへの収入補塡(ほてん)に使うべきだ」という声を押し切って強行しようとする暴挙だ。
 大量解雇・大失業が本格化する中、17日に閣議決定された骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)や成長戦略は、コロナ下の「新たな日常」「新しい働き方」を強調。テレワーク(在宅勤務)やフリーランス(個人請負)の拡大を通した8時間労働制・解雇規制の撤廃、マイナンバーカードによる社会全体のデジタル化、オンライン医療・教育の推進と社会保障の解体を打ち出した(本紙3148号参照)。マイナンバーの銀行口座とのひも付けに加え、「第2の就職氷河期を避けるために自衛隊員の新規採用を積極的に行う」ことまで表明した。

大水害も口実にIT・民営化へ

 首相の諮問機関・地方制度調査会(地制調)は地方自治法大改悪に向け、デジタル化と「平成の大合併」の継続、利権を生む「公共私の連携」強化を答申。職員削減・民営化で地方の衰退を加速し災害を深刻化させたにもかかわらず、さらに推進するとした。IT新戦略は九州などを念頭に「豪雨などの自然災害が頻発し新型コロナとの複合災害に直面している」として「デジタル強靱(きょうじん)化」のためのIT基本法の抜本的改悪を求めた。
 災害のたびに、危険な立地条件や治水の問題とともに地域を熟知し住民の避難誘導に当たる自治体職員の不足が指摘されてきた。それを逆にデジタル化で職員削減・民営化を進め、「川の水位をITで監視」したり「被災者がSNSで問い合わせると人工知能(AI)が自動回答する」「マイナンバーカードを活用し官民が保有する健康・医療データの監督権限を政府の個人情報保護委員会が一元的に担う」ようにする----。それで被災地・避難所の安全を確保し感染症拡大を防ぐことができるのか。
 地域の状況や住民の思いを一番よく分かっているのは現場の労働者・労働組合だ。職場と地域の怒りを結集し真っ向から闘おう。

職員半減狙う自治体構想

 地制調答申などは、2018年の総務省「自治体戦略2040構想」がベースとなっている。構想は「少子化による急速な人口減少と高齢化という未曽有の危機」に際し戦後憲法と地方自治制度からの転換を求める。「人口減で自治体職員に応募する労働者も減る」から半分の職員で機能する自治体に変える。業務は縮小し国や他の自治体と共同化。事務作業はAIで自動処理。民間に自治体の情報を開放し「経済合理性」に基づいて参画できる(民営化でもうけられる)ようにするべきだと主張する。

総非正規職化・労組破壊攻撃だ

 「職員が半分」の自治体とは、少数の常勤職員が民営化のための企画立案と徴税などの権力的業務を担い、残りは1年雇用・低賃金の会計年度任用職員、民間の非正規職員に換えることが想定されている。経費削減が最優先され、評価制度による分断と団結破壊、過重労働とパワハラが横行し賃金は一層下げられる。しかしそうなれば誰が応募するだろうか。医療の現状がそうであるように公的業務は総破綻する。
 そもそも少子化は、非正規職化・低賃金化で子どもを産み育てる青年層総体が貧困化し、「過労死」するまで働かなければ食べていけないまでに強搾取されてきた結果だ。それはデジタル合理化・民営化でいよいよ加速する。自治体と職員のあり方は根本から変わる。地方自治は破壊され国の下部機関となる。「住民の福祉」という概念すらなくなる。労働組合は解体される。改憲の先取りだ。

マイナンバー絶対反対!

 マイナンバーカードの普及率は6月1日時点で16・8%。消費還元で最大5千円のポイントが付くと宣伝しても増えることはない。その最大の理由は、全個人情報を国が一元監理する監視・治安国家化への反発だ。東京・国立市議会ではマイナンバーの銀行口座ひも付けに反対する決議が上がっている。
 しかし安倍は「利便性が足りないからだ」と強弁し医療や学校の成績などあらゆる情報をひも付けようとしている。そうすることでデジタル化の巨大利権を生み出すとともに、民衆の反乱を抑え込むための監視国家化を進めようとしている。骨太方針は「マイナンバー制度の抜本的改善」を掲げた。自治体の情報を官民で共有し、ITで住民を監視・監理する「スマートシティ」(スーパーシティ)を100カ所整備することが目標とされている。

AIは必ず誤り業務は破綻する

 デジタル化の前提とされる「AI万能」論は大うそだ。AIは誤りを犯す。致命的な問題を引き起こす。
 ①AIは学習のために与えられたデータに適合した範囲内での結果を出すだけで、想定外の事態には対応できない。AIがなぜそのような結論を出したのか人間には説明できない。
 ②AIに学習させるデータには、利用する側の価値観、差別と偏見が反映される。にもかかわらず資本や当局は「人間が関与していないから公平」というでたらめなイデオロギーを振りまいている。
 現実には自動運転技術で多数の死亡事故が起こっている。国はAIで保育所の入所選考をさせようとしているが、大幅な遅延が生じる事故が発生している。経験を積んだ正規職にとって代わることはできない。
 国家権力にとって最も「有効」なのは民衆監視と自律型殺傷兵器=「殺人ロボット」だ。そこでは重大な誤りがあっても「小さな問題」とされてしまう。
 「AI万能神話」は、労働者の抵抗を打ち砕くイデオロギー攻撃だ。AIの全面導入とマニュアル化・総非正規職化で自治体の業務は破綻する。
 マイナンバーカードが攻防の焦点だ。政府は19年度内に全公務員がナンバーカードを取得する目標を立てて重圧をかけてきた。カード取得率100%の実現で住民全体の取得を促す「権力の手先」としての役割を担わせようとした。しかし6月1日時点でも、全国の自治体の組合員の取得(申請)率は34・6%、東京では7〜8%台の区職労もある。マイナンバー反対の原則的な議論と闘いで攻撃は押し返せる。マイナンバーカードは粉砕できる。デジタル合理化・監視国家化絶対反対で闘いぬこう。

労働組合の闘いの復権へ

 労働組合の闘いが復権し保育や医療の現場でストライキが闘われ、行政への申し入れ闘争も取り組まれている。社会福祉協議会での雇い止め撤回の闘いが市職労全体を巻き込んだ大闘争となっている。自治労傘下の単組は会計年度任用職員制度や民間委託と闘って団結を固め、コロナ下で新規採用職員の労組説明会の機会が奪われる中でも多数の加入をかちとった。反戦闘争の先頭で闘っている。
 動労千葉の反合理化・運転保安闘争を全職場で取り組もう。「経費削減・効率化」を掲げた攻撃に対して、業務の維持と拡充を求める闘いは全労働者の団結を生み出す。職場の支配権を握る闘いとなる。同時にこの闘いを「反合理化」の闘い、国・当局による階級戦争に対して労働者の階級的利害をかけた闘いとして闘いぬくことが決定的な意味を持つ。階級的労働運動の神髄だ。
 安倍の新自由主義攻撃はコロナ危機があらわにした社会全体の崩壊をさらに拡大する。資本主義を倒し労働者が権力を握るプロレタリア革命が現実の課題となっている。デジタル合理化・民営化と対決し総反撃しよう。7・26国鉄集会に大結集しよう。

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地制調答申
・2040年から逆算しデジタル化へ転換
・大災害招いた「平成の大合併」は継続
・給付金利権に続く「公共私の連携」強調

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