新たな核戦争と改憲とめる コロナでの反核運動解体許さず 8・6大行動、被爆者の闘い継承

週刊『前進』04頁(3155号01面01)(2020/08/17)


新たな核戦争と改憲とめる
 コロナでの反核運動解体許さず
 8・6大行動、被爆者の闘い継承


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(写真 平和公園への立ち入り規制を打ち破って朝の原爆ドーム前集会をかちとり、デモに出発。広島大生が先頭に立って安倍の記念式典出席を弾劾した【8月6日 広島市】)

(写真 一斉にボードを掲げてアピールする原爆ドーム前集会参加者)

(写真 「ヒロシマから核と戦争に怒りの声を」。大きな横断幕を掲げて商店街を進むデモ隊に沿道の人々の注目が集まった)


 被爆75周年、被爆者の闘いを継承する8・6ヒロシマ大行動―8・9長崎反戦反核闘争は、コロナをも使った反核運動解体を許さず、安倍への怒りに満ちて闘われた。広島では5日の被爆者・被爆伝承者の証言集会と戦跡めぐり、夜の討論会から6日朝の原爆ドーム前集会、昼の集会・デモ。長崎では爆心地公園での黙禱(もくとう)、反戦反核集会を行った。

原爆ドーム前で集会
 「安倍帰れ!」の声、式典を直撃

 6日早朝の原爆ドーム前集会と安倍首相の式典出席弾劾デモ(主催/8・6ヒロシマ大行動実行委員会)は、広島の被爆2世・3世や全国から集まった労働者・青年・学生ら総勢350人の結集で大成功した。
 広島市の松井市長は一昨年来、「拡声器規制条例」の制定を狙ってきたが、大行動実行委は市役所への申し入れや公開討論会などを通じて広範な反対の声を組織し、これを阻んできた。
 さらに松井市長は今年、式典に安倍や河井夫妻らの汚職に関与した政治家を招待しながら、コロナ対策を口実に一般参加者や被爆者遺族を閉め出した上、会場周辺でのデモや集会の全面禁圧(平和公園への立ち入り規制)を画策した。
 しかし、多くの被爆者や市民から抗議の声が上がるなかで迎えた8・6当日の朝、「慰霊」や「コロナ対応」と称して反戦反核の声を圧殺しようと狙った安倍・自民党と松井市長の策動は、例年以上に熱気と迫力あふれる集会・デモで打ち破られた。右翼の一団が妨害を試みたが、何もできず途中で逃げ去った。
 朝6時過ぎ、広島大、京都大、沖縄大の学生らが集会前段のリレーアピールを行った。全学連の高原恭平委員長は「民衆の力で核廃絶を実現する時が来た」と力強く訴えた。
 7時、大行動実行委の渡子(とのこ)健さんの司会で本集会が始まった。渡子さんは「多くの人たちとの共同の闘いで平和公園への立ち入り規制を阻止した」と勝利感をもって確認。
 続いて長崎の被爆者・城臺美彌子(じょうだいみやこ)さんからのメッセージが読み上げられ、核兵器禁止条約の批准を拒む日本政府への抗議と8・6ヒロシマの闘いへの熱い連帯の思いが伝えられた。
 被爆2世の中島健さん、壹貫田(いっかんだ)康博さんは、改憲・敵基地攻撃能力の保有を狙う安倍の来広と、「今年は慰霊に絞る」と称して式典から「核廃絶」の性格すらも消し去ろうとした松井市長を弾劾。NAZEN福島の椎名千恵子さんは、新たに84人を被爆者に認定した「黒い雨」訴訟の勝利判決に触れ、「この勝利に勇気をもらった。子どもの命と未来を守る福島の闘いに生かしていく」と語った。
 NAZENヒロシマの保科衣羽さんが「8・6ヒロシマアピール」(別掲)を読み上げ、拍手で採択した後、原爆投下時刻の8時15分に黙禱を行い、中国電力本社前までのデモに出発。式典出席中の安倍にたたきつけた「安倍は今すぐ帰れ!」のコールは会場にはっきりと響いた。

8・6ヒロシマ大行動
 「黒い雨」訴訟、被爆建物保存を

 6日午後、被爆75周年8・6ヒロシマ大集会(実行委員会主催)が広島県立総合体育館小アリーナで開かれ、450人が集まった。(発言要旨2面)
 集会は、被爆者の闘いを継承し、新たな反戦反核運動の第一歩を踏み出すものとなった。

責任勢力に飛躍を

 基調提起を行った8・6ヒロシマ大行動実行委員会事務局長の宮原亮さんは、一昨年来の拡声器規制条例や、今年の平和記念式典の変質をめぐる攻防を「『現実の改憲攻撃』との対決として闘ってきた」と報告。この2年間、被爆者団体や大学人など様々な人々が共に声を上げた。改憲を阻止する広範な陣形がつくりだされつつある。しかし、今年は原水禁・原水協がコロナを理由に世界大会を実質中止した。これらを中心的に担ってきたのは労働組合だ。宮原さんは「労働運動・学生運動を今こそよみがえらせよう。同時に、ヒロシマ大行動が広島における反戦反核運動のすべてに責任を取る運動へと成長しよう」と訴えた。
 被爆2世からの訴えでは、反戦被爆者の会の中島健さんが発言に立った。中島さんは「朝鮮戦争時に集会が禁圧された1950年8月6日と同じことが今起きている。新たな核戦争を阻止することが被爆者の生きる道だ」と決意を表明。
 福島からは、ふくしま共同診療所の布施幸彦院長が連帯のあいさつを行った。布施さんは「コロナ下で福島の現実が覆い隠されていく。しかし世界で、日本でどんどん人々が立ち上がっている。新しい闘いを創造しよう」と訴えた。
 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」訴訟勝利の報告を、広島大学名誉教授の大瀧慈さんが行った。7月29日には、被爆者健康手帳の交付を命じる画期的判決が広島地裁で出た。裁判に大きく貢献してきた大瀧さんは、「黒い雨」の問題に全社会が取り組んでほしいと期待を込めて語った。
 旧陸軍被服支廠(ししょう)倉庫の保存か解体かが焦点となるなか、被爆2世・3世と学生が峠三吉の詩「倉庫の記録」を朗読。それを受けて、被爆建物の保存運動を長年牽引(けんいん)してきた元広島大学工学部教授の石丸紀興さんが登壇した。石丸さんは、広島市民の営みが被爆建物に刻まれていると述べ、市民で議論を尽くしていこうと呼びかけた。
 地元広島を中心にした決意表明では、広島大学学生自治会、「改憲・戦争阻止! 教え子を再び戦場に送らない! 広島教職員100人声明」などが登壇。「100人声明」はコロナ危機を利用したICT教育・民営化や改憲に反対するアピール(2面に掲載)を発したことを報告した。
 この集会には、長崎の被爆者・城臺美彌子さんや韓国の全教組テグ支部組合員一同など、国内・海外から多数の連帯メッセージが寄せられた。

街頭の怒りと結び

 集会後、広島市街へデモ行進に出発。4梯団(ていだん)の隊列のうち第2梯団は全学連が占め、全体を牽引した。
 宣伝カーからは「8・6ヒロシマは、被爆者の闘いによってつくり上げられた、核廃絶に向けて行動する日です」「安倍首相や汚職議員は原爆犠牲者を踏みにじるのをやめるべきです」「8・6ヒロシマを民衆の手に取り戻しましょう」などの訴えが響いた。
 デモは街頭に渦巻く安倍への怒りや戦争絶対反対の思いと結びついた。デモ隊に手を振る被爆者遺族の女性は、「心ない安倍のメッセージに腹が立つ。コロナで会見もせず、敵基地攻撃のことは言う」と怒りをあらわに。「昔はデモといえば労働組合が当たり前だった」と労働組合に期待を寄せた。小学校1年生の時に自らも被爆した女性は、被服支廠につながる列車で焼けただれた被爆者が運ばれていくのを見たという体験を語ってくれた。
 デモ隊が平和資料館前に到着。高原全学連委員長が「核廃絶運動により松井市長は平和宣言で核兵器禁止条約に触れざるをえなくなった。全世界の民衆の反戦反核の包囲網で核は廃絶できる」と締めくくった。

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改憲阻止の決戦開く
 核禁条約批准を求め被爆者が決起

 核戦争の道か、それとも核廃絶の道か----今年の8・6広島、8・9長崎の闘いは、歴史選択をかけた重大な闘争となった。
 すでに米トランプ政権は新型核兵器の開発と大量生産を進め、その実戦使用をも辞さない構えだ。安倍政権はこれと一体で改憲や敵基地攻撃能力の保有に踏み込もうとしている。
 こうしたなか、「騒音対策」や「感染症対策」に名を借りた集会・デモ規制を敢然と打ち破り、反戦反核と核兵器廃絶の訴えが広島・長崎の地から全世界に発信されたことは決定的だ。
 何より被爆者の怒りと渾身(こんしん)の決起が安倍を直撃した。広島の闘いに続き、長崎では核兵器禁止条約の批准を拒否する安倍政権に抗議し、被爆者団体が爆心地公園で横断幕を手に座り込む様子が大きく報じられた。広島・長崎の両式典で安倍が読み上げたスピーチ原稿が、全体の93%が一致する「使い回し」「コピペ」だったことに対しても、被爆者団体から猛然と抗議の声が上がり、菅義偉官房長官が記者会見で釈明に追われた。
 新たに84人を被爆者と認定した「黒い雨」訴訟の広島地裁判決(7月29日)をめぐっては、厚生労働省が判決を覆すために広島県・市と合意の上で控訴した。安倍政権があくまでも被爆者を抹殺し、核禁条約批准をも拒否するのは、改憲と一体で日本の核武装化を狙っているからだ。8・6―8・9闘争を引き継ぎ、怒りも新たに改憲・戦争阻止、安倍打倒へ闘おう。

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