核燃料再処理工場廃止を 規制委の「審査」合格弾劾する

週刊『前進』04頁(3157号03面02)(2020/08/24)


核燃料再処理工場廃止を
 規制委の「審査」合格弾劾する

(写真 施設が林立する巨大な核燃料再処理工場【青森県六ケ所村】)


 核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の稼働に向け、安倍政権が動きを加速させている。原子力規制委員会が7月29日、同工場の安全対策が新規制基準に適合すると認める「審査書」を決定したのだ。再処理工場はきわめて危険な核施設であり、事故になれば想像を絶する事態になる。絶対に稼働させてはならない。

1日で原発1年分の放射能

 再処理工場はなんのための施設か。
 一貫して原発反対を訴え続ける、元京都大学助教の小出裕章さんは著書で次のように指摘している。「再処理とは、核兵器の材料であるプルトニウムを取り出すことを目的に開発された、軍事技術のひとつである」(「『最悪』の核施設 六ケ所再処理工場」)。再処理工場は原爆の材料のプルトニウムを製造するためにあるのだ。
 と同時に、ここは原発とさえ比較にならないほど危険な核施設だ。再処理工場は全国の原発で使用した核燃料からプルトニウムとウランを取り出す巨大な化学プラントだ。建屋だけで20棟近くあり(写真参照)、安全上重要な機器の数は1万を超える。建屋をつなぐ配管はすべて合わせると1300㌔メートルにもなる。ここで処理される核燃料は強烈な放射能をもち、また処理過程で危険な化学薬品を大量に使用するため、大事故―膨大な量の放射能放出と隣り合わせだ。
 原発で使われる核燃料は次のように造られている。まず、粉末状のウランを直径、高さがともに約1㌢の円筒形に焼き固め(「ペレット」と呼ばれる)、そして多数のペレットを金属製の細長い管︵被覆管︶に詰める。これが「燃料棒」と呼ばれ、長さが約4㍍ある。原発では、数十本の燃料棒を束ねた「燃料集合体」にして使用している。
 全国各地の原発で使われた核燃料(使用済み燃料)は原発敷地内にある貯蔵プールで一定期間冷却してから、青森県六ケ所村の再処理工場に運ぶ。ここでもまず、巨大な貯蔵プールに保管される。
 再処理工場での主な工程は次のようになる(図参照)。最初に、貯蔵プールから取り出した燃料棒を1〜3㌢に細かく切断し、溶解槽の中で硝酸で溶かす。ここで、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物(セシウムなどの高レベル放射性物質)が溶けた液体となる。恐るべきことに、この工程でペレットと被覆管という「壁」でまがりなりにも閉じ込められていた放射性物質が外に出てしまう。そのために再処理工場は放射能ですさまじく汚染され、ここで働く労働者を大量に被曝させる。キセノンなどの放射性気体は大気中に放出される。再処理工場は「原発が1年間に出す放射能を1日で出す」と言われるほど、けた違いの量の放射能を放出するのだ。
 さらに次の工程で、この硝酸液はウラン・プルトニウムの混合液と高レベル放射性廃液に分離され、続いてウランとプルトニウムが分離され、それぞれ精製される。この流れもきわめて複雑なものとなっている。
 このように、再処理の工程は綱渡りのような危険な化学処理が連続的に続く。加えてペレットを溶かす硝酸は強い酸化作用があるため、溶解槽や配管を腐食させることになる。それにより亀裂や穴が生じ、放射性物質や硝酸が流れ出す危険性もきわめて高い。また化学薬品の大爆発や、それによる大量の放射能の流出。これらの計り知れない危険を抱えているのが再処理工場なのだ。

事故が起これば大核惨事に

 さらに重大な問題がある。この過程で出来た高レベル放射性廃液はものすごい放射能をもっているためにタンクに入れて貯蔵することになるが、熱(崩壊熱)を出し続けるため冷却し続けるしかない。そこで、このままでは危険なのでガラスと混ぜてガラス固化体にして保管するとしている。だがそれは技術的にほとんど不可能であり、失敗の連続で完全に行き詰まっている。
 六ケ所村の再処理工場には、試験操業によって生まれた高レベル放射性廃液がすでに約240立方㍍も冷却状態で貯蔵されている。もしここで電力が供給できなくなると冷やすことが不可能化し、発生する水素の滞留を防ぐ機能も失われ、液温が急上昇して貯槽内の水素濃度が上昇する。最後は水素爆発となり、高濃度の放射性廃液が吹き飛び、大量にまき散らされる事態にいたる。
 そのために、高レベル放射性廃液の管理に失敗すると、原発の大事故をはるかに上回る大核惨事になる。
 ドイツが東西に分裂していた当時の1976年7月、西ドイツのケルン原子力安全研究所が内務省に極秘レポートを提出し、その内容が翌年明らかになった。ここで、再処理工場の冷却装置が完全に停止すると、爆発によって工場の周囲100㌔メートルの範囲で全住民が致死量の10倍から200倍の放射能を浴びて即死し、最終的な死者の数は西ドイツ全人口の約半分に達する可能性があると予測したのだ。この衝撃もあり、労働者・住民の強い反対運動によって西独のカールスルーエ再処理工場は停止し、解体作業中だ。
 この放射性廃液とは別に、六ケ所村の再処理工場内にある3千㌧の巨大なプールは全国の原発から集められた使用済み核燃料によってほぼ満杯になっている。このプールはステンレス板を表面に貼り付け、溶接しただけであり、大地震に襲われれば破壊され大量の水漏れを起こす。そうなれば、ここでも冷却が不可能化し、全国の原発から持ち込まれた核燃料がむき出しになり、膨大な放射性物質が放出される。放射性廃液の事故と核燃料プールの事故は、間違いなく連動することになる。そうなったら、3・11福島第一原発の大事故をもはるかに超える、核の破局的事態が現出することになるのだ。
 これは単なる予測ではない。危険が差し迫っていることを直視することが本当に必要だ。北海道から東北地方の太平洋岸での大地震の切迫が語られているが、昨年2月に政府の地震調査委員会が発表した予測では今後30年間で、東北地方・太平洋岸で起きる海溝型地震によって、青森県沖ではマグニチュード(M)7・9が5〜30%、M7・0〜7・5が90%以上の発生確率とされている。六ケ所再処理工場の稼働など絶対に許されない。直ちに廃止し、万全の安全対策こそが求められているのだ。
 また、茨城県東海村の再処理施設は現在廃止作業中だが、ここにも高レベル放射性廃液約400立方㍍が保管されている。ここも大地震や大津波に直撃されれば大惨事になる。ここの安全対策も必須だ。また東海第二原発が事故を起こせば、連動してこの廃液も保管が不可能化する。東海第二原発の再稼働など到底、許されない。

戦争国家・核武装狙う安倍

 今回の六ケ所再処理工場の「適合」について原子力規制委員会が意見を求めたことに、梶山弘志経産相は「国のエネルギー計画と整合する」と了解した。梶山が語ったのは一昨年、閣議決定した「エネルギー基本計画」のことだ。ここでは「我が国は......核燃料サイクルの推進を基本方針としている」として、「六ケ所再処理工場の竣工......等を進める」と明記している。
 核燃料サイクルとは原爆の原料となる高純度のプルトニウムを製造するためのものであり、再処理工場はその中軸施設だ。安倍政権は、核兵器製造のために六ケ所再処理工場を稼働させると宣言しているのだ。
 コロナ情勢のもとで労働者民衆がまともに生きられず、社会基盤が崩壊するほど資本主義体制の行き詰まりがはっきりしてきた。この事態におびえ、アメリカをはじめ世界の支配階級は戦争・核戦争に訴えて体制の延命を図ろうとしている。今年2月、米海軍は小型の核弾頭を搭載したミサイルを潜水艦に実戦配備した。さらにトランプ政権は核も搭載できる中距離ミサイルを開発し、日本などへの配備を協議しようとしている。その動きに対応し、安倍政権も戦争のできる国への飛躍―核武装まで目指し必死に動いているのだ。絶対に許せない。
 福島第一原発事故の責任を追及し被曝強制と闘う福島の労働者民衆、そして六ケ所再処理工場の建設に反対し闘い続ける青森の労働者民衆と団結し、再処理工場の稼働を阻もう。

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