コンビニ実態調査 命がけの反乱、公取委動かす 24時間強制「独禁法違反」

週刊『前進』04頁(3161号02面02)(2020/09/14)


コンビニ実態調査
 命がけの反乱、公取委動かす
 24時間強制「独禁法違反」


 公正取引委員会は9月2日、「コンビニストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査」を公表し、本部が加盟店に24時間営業などを強制すれば独占禁止法違反になりうるとの見解を示した。公取委は大手8社に改善を要請。コンビニ関連ユニオンは、全国の加盟店オーナーに呼びかけ、公取委の報告書を武器に独占禁止法違反根絶運動を展開し、本部に対する抗議行動や集団協議を追求する方針である。24時間365日営業義務化の廃止をいよいよ実現するときがきた。

時短協議は拒否できない

 セブン―イレブン東大阪南上小阪店オーナーの松本実敏(みとし)さんの時短営業(2019年2月)から始まった全国の加盟店オーナーの命がけの反乱が、独占禁止法違反の判断を引き出した。コンビニ関連ユニオンの7・11ストライキや公取委への集団申告などが世論を動かしたのだ。
 大手8チェーンの全加盟店5万7524店へのアンケートが20年1〜2月に実施され、1万2093店が回答。公取委としては過去最大規模の調査である。
 特徴は、関連ユニオンらが焦点にしてきた「年中無休・24時間営業」と「ドミナント出店」を「最近の諸論点」としたことにある。
■24時間営業の強制
 「年中無休・24時間営業」は、オーナーの苦境を改めて突き出した。1年間の休暇日数が10日以下のオーナーは63・2%にも達している。そうした中で「年中無休・24時間営業」について「つらい」が6割を超えた。そして、77・1%が深夜帯は赤字であり、93・8%が人手不足を感じているため、66・8%は時短営業を希望すると回答した。
 では、オーナーに時短営業の自由はあるのか。本部は対外的には「自由だ」と言い始めているが、実態は、時短営業の交渉保留・拒絶は33・5%にも上る。「本部は変わったか」の問いには「特に変化がない」が実に75・2%だ。本部はウソをついているのだ。
 報告書はこれらについて、「合意すれば時短営業への移行が認められるにもかかわらず、本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し、......不当に不利益を与える場合には優越的地位の乱用に該当し得る」と断じた。〝時短協議の拒否は独禁法違反〟と言い切ったのだ。本部の「時短は自由」というごまかしは通用しない。松本オーナーの契約解除も、本部は無効にしなければならない。
 また、時短協議の要請についても、「加盟者の立場に配慮した丁寧な対応を行う必要がある」「新型コロナウイルスの感染防止のための対応も含め......このことは特に留意すべき」と付け加えている。これを生かせば、本部との対等な交渉を迫ることも十分可能だ。
■配慮なきドミナント
 一つの地域に集中的に出店する(ドミナント戦略)際、62・3%が配慮を約束しながら何も提案がなかったと回答した。そのもとでオーナーは激しい競争にさらされている。セブン東日本橋一丁目店オーナーもその犠牲になり、自死した。関連ユニオンはこれに抗議し、月命日に継続的に集団申告を行ってきた。
 報告書は、加盟店募集時に十分な説明がされていなければ欺まん的顧客誘因に、支援の約束を破ったら優越的地位の乱用に該当し得ると踏み込んだ。これを使ってドミナントによる減収の補填も要求できる。
■仕入れの強制
 本部による無断発注を含む仕入れ強制の問題では、意に反した仕入れは51・1%が「ある」と回答した。
 公取委は、これを優越的地位の乱用になり得ると明言、「直ちに点検・改善を求める」と促した。また、仕入れの強制が〝自爆営業〟の一因とも指摘。本部を弾劾し、オーナーの裁量権を取り戻すチャンスだ。
■見切り販売の制限
 さらに見切り(値引き)販売の制限も優越的地位の乱用になりうるとした。
■コンビニ会計
 また、仕入れ強制や見切り販売の制限が廃棄ロスの増加をもたらすことから、いわゆる「コンビニ会計」システムが「独禁法上の問題が生じないよう留意すべき」と、初めて会計問題に言及したことも大きい。
 ただ報告書は、関連ユニオンらが申告してきた審査局ではなく、経済取引局から出されたものだ。審査局は申告には「調査中」としか回答していない。報告書に基づき、「排除命令」や「課徴金」という措置がとられなければならない。

報告書活用し現場で闘う

 公取委は、各本部に点検・改善を行い、11月末までに報告するよう要請。「違反行為に対しては厳正に対処する」と言明した。
 関連ユニオンは、全国のオーナーに呼びかけて独占禁止法違反根絶運動を展開し、11月中に本部に対する要求書提出、抗議行動を計画している。また、本部との集団協議も追求する。
 鎌倉玲司書記長は「大切なことは報告書を活用して現場で闘うことだ」と強調する。09年に公取委が見切り販売について排除命令を出しても、本部による支配は変わらなかったからだ。鎌倉書記長は「オーナー1人と本部とでは圧倒的力関係のギャップがある。必要なのは団結であり、連帯であり、オーナーの横のつながりだ。報告書を武器にコンビニモデルの変革を実現したい」と展望を語った。
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公取委の独禁法違反についての見解

年中無休・24時間営業の強制

 時短営業の交渉保留・拒絶 33・5%
 「本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し、不当に不利益を与える」→優越的地位の乱用

配慮ないドミナント出店

 近隣出店で本部の配慮なかった 62・3%
 「加盟者募集時に十分な説明がない。配慮の意図がないのに『配慮する』と説明」→欺まん的顧客誘引
 「約束した支援をほごにしたり、一方的な出店を行い不当に不利益を与える」→優先的地位の乱用

仕入れの強制

 意に反して仕入れている 51・1%
 「返品が認められないにもかかわらず、必要以上の仕入れを余儀なくさせる」→優先的地位の乱用

見切り販売の制限

 見切り販売の制限の経験がある 12・0%
 「品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、廃棄を余儀なくさせる」→優先的地位の乱用

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