JR四国 廃線を公然と表明 民営化の破産をコロナが促進

週刊『前進』04頁(3161号02面03)(2020/09/14)


JR四国 廃線を公然と表明
 民営化の破産をコロナが促進


 JR四国の現場の労働者に「コロナで大変ですね」とあいさつすると「一生懸命、消毒しているんですけどねぇ」と返ってくる。「土砂崩れで大変ですね」と言うと「一生懸命、点検してるんだけどねぇ」と返ってくる。現場労働者は炎天下、国鉄時代の半分に減った労働者数で必死に安全運行を支えている。JR四国の破綻はJR体制全体の矛盾の表れだ。現場労働者こそJR体制を根本から変革する闘いの担い手だ。

赤字は一気に拡大手元現金はゼロに

 5月8日、JR四国は2019年度の連結決算で営業利益が120億円の赤字になったと発表した。コロナで赤字が一気に拡大したのだ。その場で西牧世博専務(現社長)は、JR四国の現金が「端的に言えばゼロになる」と述べた。
 同社はまた赤字路線の「第3セクター化」「上下分離方式」を打ち出し、沿線自治体との「協議のテンポを速める」と廃線化を明言した。「もうからない在来線を存続させたいなら県・市町村で負担してくれ」と4県知事への丸投げを宣言したのだ。あまりに無責任だ。四国新幹線については「50年スパンなら考えなくてはいけないが、5年10年なら先の話だ」とした。これまでの推進姿勢を変え、「新幹線より在来線の自治体引き受けが先だ」と表明したのだ。

公費にたかることが唯一の延命策に

 これは、本来は医療福祉や教育に使われるはずの自治体予算の分捕り合いにJR資本も加わることを意味する。今までも四国新幹線建設キャンペーンに多額の公費がつぎ込まれてきた。コロナで「食べるものも底をついた」というシングルマザーのインタビューの裏で、建設費1兆5千億円の四国新幹線のテレビコマーシャルが流れ、建設推進の「ゆるキャラ」まで作らせた。主導したのは四国経団連会長(四国電力出身)と4県知事だ。彼らのシンポジウムでは、元内閣官房参与の藤井聡・京都大教授らが「日銀のゼロ金利政策より四国新幹線建設こそ最良の景気対策」「億単位の経済効果」と吹聴した。
 国鉄闘争全国運動の取り組みは、コロナ危機と安倍政権崩壊の中で、こうした巨悪を暴くかけがえのない存在に育っている。

災害復旧ではなく駅ビルに巨費投入

 JR九州と同様、JR四国でも災害が相次いでいる。7月7日の豪雨で、愛媛県内の内子線の山腹が大規模に崩壊した。この時、通過した車両がワンマン運転だったら、最悪の事態になっていた。現場の保線員が懸命の復旧作業に当たっているが、予算も人員も不足する中で、災害が繰り返される。
 他方でJR四国は、「現金がゼロ」と言いながら500億円もかけて松山駅の駅ビル建て替えと周辺の更地化を進めている。四国内で最大の人口を持つ松山での再開発で、もうけようというのだ。人口減少を口実にワンマン列車化、駅の無人化を強行し、駅のトイレまで閉鎖してコストカットしてきたJR四国が、赤字の負担を県や市町村に背負わせることを前提に、こうした事業を進めている。

深刻な人員不足で安全はさらに崩壊

 JR四国では中途退職が止まらない。3月ダイヤ改定では、運転士不足のため22本も列車本数を削減した。この背景には劣悪な労働環境がある。
 8月9日には瀬戸大橋線で、高松発のアンパンマン・トロッコ列車の20代の運転士が熱中症になり、運休や遅れが出た。炎天下の運転席に冷房はなかった。「個人の健康管理」の問題では断じてない。
 JR四国は他のJRと比べ賃金が低い。さらに、多くの若手を出身地から引き離して別な県で勤務させる労務管理システムは悪評が高い。ベテランの国鉄世代が職場を去る中で技術継承ができない。人員不足・劣悪な労働環境、技術継承の断絶という3要因の負の連鎖が起きている。最悪の安全崩壊が進行している。
 JR四国の経営陣と県知事・国が18年8月以来続けてきた「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会Ⅱ」が昨秋に出した結論は、牟岐(むぎ)線の「パターンダイヤ化」︵運転間隔の均等化︶と「交通ネットワークの充実」(私鉄・バスとの連携改善)だ。これではおよそ赤字打開策とはならない。

民営化体制を撃つ労働運動の再生へ

 分割・民営化体制を終わらせることが必要だ。
 この事態は、現場労働者と乖離(かいり)したJR連合傘下のJR四国労組幹部を揺るがしている。彼らは「会社と諸課題を共通認識し、相互の理解と信頼に基づいた……労使関係」を組合綱領に掲げ、一時帰休にも妥結した。
 JR現場での労働運動の復権が求められている。動労千葉の中野洋元委員長は『甦(よみがえ)る労働組合』で、「自分は結局、会社側・経営側とまったく相いれない存在だ」という階級意識を持つことの重要性を説いている。そうした意識はJR四国の現場労働者にも脈々と流れている。この労働者と動労千葉労働運動との合流を実現しよう。
(四国 S)
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