配達スタッフ体験記 ひたすら自転車こぐだけ

週刊『前進』04頁(3164号02面03)(2020/10/05)


配達スタッフ体験記
 ひたすら自転車こぐだけ


 街中で大きな四角いバッグを背負って自転車で行き来する(写真)ウーバーイーツの配達スタッフを体験してみた。
 コロナ下でウーバー社への申請は全てスマホでのやりとり。顔写真、住所、生年月日などの個人情報を送信。審査を受け登録完了。その後、振り込み先の銀行口座を登録した。
 宅配初日。自前の自転車にスマホを付けて自分で買った「UberEats」のバッグを背負い、GPS(位置情報)機能をONにしてスタンバイ。音が鳴って配達依頼が来る。依頼を受けるかどうか問われ、「受ける」と返信してお店へ向かう。品物を受け取ると、画面に届け先が地図で示される。この時に初めて近いか遠いかがわかる。
 配達はGPSが頼り。ナビの音声を聞きながら自転車をひたすらこぐ。商品を届けて「宅配完了」をウーバー社に通知。受け取った依頼者がウーバー社に「受け取りました」と申告して業務は完了。1件400円から500円。遠かったり雨が降っていると600円。時給に換算するとだいたい千円くらい。
■一つの仕事の短さに驚く
 やってみた感想は自転車をひたすらこいでいた感じしかない。「仕事」の緊張感やシャキッとするものがない。常に位置情報がウーバー社に把握されている。
 驚いたのは一つの仕事の短さだ。「配達依頼を受け→お店で商品を受け取り→商品を運び→依頼者へ届ける」、早ければ10分程度で終わる。仕事の依頼から仕事を受けると返答するまでは30秒。配達依頼を受けた直後から仕事に入る。以前やった日々紹介のバイトでは契約完了は仕事の前日の午後6時頃だった。
 IT・デジタル化、スマホとGPSなくしては成り立たない。それが労働者にとって良いことかといえばそうではない。生きていくために労働者や学生がウーバーに流れている。
 このようなフリーランス・自営業と雇用の破壊は一体だ。宅配員は「個人事業主」だ。雇用されているわけではなく、あくまで「登録」。仕事中のケガに対して「補償の申請をすれば、それ以降、仕事の案内がなくなる可能性がある」とも言われる。すべて自己責任ということだ。しかし仕事の手順はすべて指定されている。ウーバー社の指揮命令下にある労働者だ。
(本紙・矢野透)

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