映画『家族を想うとき』 ギグワークで追いつめられ

週刊『前進』04頁(3164号02面04)(2020/10/05)


映画『家族を想うとき』
 ギグワークで追いつめられ


 イギリスのケン・ローチ監督の映画『家族を想うとき』(2019年)は、宅配会社と個人請負契約を結んでギグワーク(単発労働)に従事する労働者とその家族の苦境を描く。彼の業務はデジタル端末で厳しく管理・追跡されている。
 元建築労働者のリッキーは英国・ニューカッスルに住み、妻のアビーは訪問介護に従事、学校に通う十代の二人の子どもがいる。彼は「ボスは自分であり、自由に働いていくらでも稼げる」という説明を信じ、個人事業主として契約した。賃金が保証されず企業から求められた時だけ労働力を提供する「ゼロ時間契約」である。宅配業務に必要なバンを買うために妻の仕事用の車を売り、さらに多額の借金をした。
 個人事業主とされながらGPS付きの高機能な端末で管理され、トイレに行く暇もない過重な配達ノルマが課せられて分秒単位で急かされ、車両から2分離れただけで警報が鳴り、配送が遅れたり誤配が続けば罰金、繰り返せば仕事を外される。高額の端末を壊したら弁償。大けがをしたり子どもの問題での急用でも、交代を確保しなければ賃金ゼロに加えて高額の罰金を科せられる。膨れ上がる借金に縛り付けられる現代の「奴隷労働」そのものだ。
 デジタル技術を使った雇用破壊と強搾取の現実に怒りが込み上げてくる。
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