大阪市廃止が行きつく先 極限的な民営化・非正規化

週刊『前進』04頁(3164号02面05)(2020/10/05)


大阪市廃止が行きつく先
 極限的な民営化・非正規化


 9月26日、都構想の住民説明会が始まった。1回目の説明会では、反対派の主張は紹介されず、反対意見も受け付けず、吉村洋文・大阪府知事と松井一郎・大阪市長が一方的に「説明」し、多くの質問を求める挙手がさえぎられた。
 大阪維新の会(維新)は「大阪の成長を止めるな」だの「二重行政の打破」だのと勢いよく叫びたててはいるが、制度・施策・事務事業の行方について、またその矛盾と破綻について、論戦して勝つ自信は全くない。だから「区役所はなくならない」「赤字にはならない」「サービスは低下しない」とうそを並べたパンフレットを市内全戸に配布し、市役所の広報まで使って物量で押し切ろうとしている。
 市選管が住民投票用紙に「大阪市廃止」を明記することについてすら松井市長は「せめて『大阪市役所廃止』にしてくれ」などと泣訴していたのだ。
 都構想が現実に何をもたらすか、いくつか例示しよう。

特別区が合理化・福祉切り捨て競争

 大阪市を廃止して新たにつくられる四つの特別区は、かつて大阪市が持っていた自主税源の3分の2以上を大阪府にとられてしまい、府からの財政調整財源に従属依存することになる。総務省が全自治体に合理化・民営化・非正規職化を強要しているのと同じことを府が特別区に強要する関係となるのだ。
 庁舎の問題も深刻だ。南海トラフ地震が起きれば住民の約1割が死亡すると予測されている新淀川区では、区の本庁舎に勤務する職員はわずか80人で、残り880人もの職員が幅500㍍もある淀川を隔てた新北区庁舎に間借りすることになる。破滅と大惨事は不可避だと多くの防災専門家が戦慄(せんりつ)し、警鐘を鳴らしている。

一部事務組合移管でIT化・民営化

 情報システム、施設財産管理、介護保険事務は一部事務組合に移管される。一部事務組合(前号の図「大阪都構想のイメージ」参照)はこれらの業務をめぐる全ての決定権を奪うことになる。
 一部事務組合への移管の目的は「窓口対応の改善」とされる。そうであるならば情報システムだけを切り取って一部事務組合化する必要はない。一部事務組合化の目的は大阪市域全体をIT(情報技術)化・AI(人工知能)化するために一元管理することだ。福祉・教育・文化などの施設管理を一部事務組合化するのも、住民のための施設運用が目的なのではなく、売却・民営化の視点から、一括管理することが目的だ。
 介護保険については、要介護認定の事務が2012年に「認定事務センター」に移行され、民間委託された結果、現在は法律で「30日以内」とされる要介護認定に平均で50日近くかかっている。2019年8月分では30日以内に認定できているのはわずか2%。認定調査委員の多くが契約社員で有期雇用で、認定事務センターには電話もつながらない。
 すなわち民営化されている業務や民営化推進のための業務は「公平性」などを口実にして一部事務組合化し、それ以外の業務は「自主性」を口実に四つの特別区を競争させる中で民営化していくことが狙いだ。

水道事業民営化と新自由主義教育

 大阪市の水道は全国有数の「水源から蛇口までのフルセット事業体」だが、維新はこれを全国初の民営化の事例とするために、大阪府への移管に12年以上にわたって執着し失敗してきた。都構想では水道事業は府に移管する。
 また大阪市教育委員会は4分割され、大阪府の強要する新自由主義教育を特別区が競い合わされる。
 都構想の是非をめぐる住民投票の真の目的は、都構想の具体化の中で生じる矛盾の一切を「住民投票で決まったから」として合理化し、民営化・非正規職化を極限的に推し進めることだ。逆に言えば、都構想とは始まった瞬間から破綻必至の代物でしかないということであり、したがって、たとえいったん労働組合の団結が解体されても、そこに小さくとも闘う団結が残っていれば、必ず勝機は見えてくるということだ。
 「こんなにひどい都構想はやめるべきだ」という批判にとどまらず、新自由主義と改憲そのものを根底から打ち砕く闘いを巻き起こすチャンスだ。
 すでに労働組合と地域運動が一つになって組織される可能性が日々現れている。国鉄闘争を闘う陣形と改憲・戦争阻止!大行進がその軸になろうとしている。これまでのような支配のあり方を転換して戦争・改憲と道州制に突進しようとする都構想に対して立ちはだかり、労働組合を先頭に全戦線で反撃に立とう。
〔革共同大阪市委員会〕
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