大阪都構想を撃つ(3) 菅「成長戦略」との激突 万博がIT化の「実験場」に

週刊『前進』04頁(3165号02面03)(2020/10/12)


大阪都構想を撃つ(3)
 菅「成長戦略」との激突
 万博がIT化の「実験場」に


 資本は過剰資本の投下先を求めて全社会・全世界をむさぼり食いながら崩壊させていく。そのような資本のあくなき野望を、大阪維新の会(維新)は「大阪は二重行政で投資ができずどんどん落ちぶれてしまった」「削るだけでなく成長戦略と投資が必要」「大阪は常に新しいことに投資し続けないと衰退してしまう」などと表現している。
 そして「スマートシティ戦略をテコにグローバル都市競争に参戦」「大阪のICT(情報通信技術)戦略の強みは広大な夢洲(ゆめしま)での万博があること。衣食住を全部セットにしてスマートシティを提示する」という。万博をIT化の巨大な「実験場」にしようとしているのである。
■スマートシティを提示
 万博協会は2025年の万博の「めざすもの」として、「国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)が達成される社会」と「日本の国家戦略Society5・0の実現」を併記しているが、目的はあくまで後者にある。
 Society5・0とは「IоT(モノのインターネット)、ロボット、AI、ビッグデータ......これらの新技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題解決を両立していく新たな社会」(内閣府)の意味だ。つまり過剰資本の投資先として行政・自治体・医療をはじめ全社会・全生活とその全情報をむさぼりつくそうという、最末期帝国主義の延命策だ。
 大阪府と大阪市はスーパーシティ法成立に先立つ今年3月に「大阪スマートシティ戦略ver1・0 e―OSAKAをめざして」を発表し、「万博に向け、大胆な規制緩和等により『未来社会の実験場』にふさわしい、世界に類例のない最先端技術を活用した取組みと、府域全体で先端技術の利便性を住民に実感してもらえるような取り組みという、二つの取り組みを両輪として、『大阪モデル』のスマートシティを実現するための指針」としている。
 4月には大阪府スマートシティ戦略部を新設し、IBMの元常務が部長として乗り込んできた。吉村洋文知事は9月24日に「規制改革に協力するため」に内閣府への府職員派遣を発表した。9月27日に大阪府を訪問した井上信治・万博担当相に「未来社会の実験場を目指しており、さまざまな技術など、新たなチャレンジができる万博を目指す中で、規制緩和も必要になると思う。どんどん規制も緩和しながら、省庁横断的に取り組んでほしい」などと発言している。
■顔認証とカジノ開帳
 入場者数が2800万人と想定されている万博会場では、多くの規制緩和をテコに官民データ共有と入場者の顔認証・行動追跡とそのビッグデータ化を行う。とてつもない規模の個人情報「共有」の実験場だ。
 18年4月に民営化された地下鉄・大坂メトロでは昨年12月から職員を実験台にした顔認証実証実験が開始され、全乗客の顔認証ができるシステムがすでに立ち上がっている。
 この実験が終わると、万博跡地でのIR(統合型リゾート)すなわちカジノ開帳がたくらまれている。カジノがIR全体に占める割合は、敷地面積では3%だが、売上想定額では8割(3800億円)だ。毎年3800億円もの金を客からまきあげて、その15%を自治体の収入とする。
 IRは事業期間35年で公募しており、途中解約すれば違約金請求やTPP(環太平洋経済連携協定)・ISDS(投資家と国の紛争解決手続き)条項による損害賠償請求が発生し、自治体は途中で引き返すことはできない。
 ありもしない「二重行政」をやり玉にあげながら、都構想と称して維新がやろうとしているのは、このようなでたらめな「成長戦略」なのだ。
■末期的な新自由主義攻撃
 都構想は戦争・改憲・道州制に向けた攻撃であり、労働者・地域の団結を解体するための大阪市廃止・特別区設置であり、末期的な新自由主義「成長戦略」を強行しようとするものだ。都構想攻防は菅政権との激突の最前線だ。
 住民投票の結果にかかわらず、都構想にかけたこのような支配階級のたくらみはとどまることはない。敵の危機と破綻をつきまくり打倒へとつきすすむ階級的労働運動を拡大・強化しよう。10・25大阪都構想反対集会・デモを闘い、11・1全国労働者集会(日比谷野音)に大結集しよう。
〔革共同大阪市委員会〕

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