市東さんの農地守ろう 不当判決弾劾!成田を廃港に 三里塚反対同盟 新年の決意

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週刊『前進』04頁(3177号03面01)(2021/01/11)


市東さんの農地守ろう
 不当判決弾劾!成田を廃港に
 三里塚反対同盟 新年の決意

(写真 昨年9月27日の三里塚全国集会後のデモ【成田市】)

(写真 11・1全国労働者集会で発言する市東さん【東京・日比谷野音】)


 55年の不屈の闘いを一心に貫く三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団から新年のメッセージが寄せられた。昨年の12・17請求異議控訴審反動判決への怒りを新たに、国・NAA(成田空港会社)・裁判所一体の農地強奪強制執行攻撃を労農学人民の実力で粉砕しよう。市東孝雄さんの農地を守り抜こう。(編集局)

耕し続ける決意は不動
 敷地内天神峰 市東孝雄さん

 昨年は全国のみなさんの支援を受けて請求異議裁判控訴審を闘いました。もともと期待をしていたわけではありませんが、結果はああいうひどい判決でした。権力のいいように法律を解釈した内容であり、三権分立がうそだとあらためて明らかになりました。
 しかし、危機に追い詰められているのは成田空港です。昨年は新型コロナでB滑走路が3カ月間止まって騒音が消え、鳥のさえずりやさわやかな風の音を感じ、やはり自然の中での本来の人間の生き方が大事だと感じることができました。特に夏は農作業に集中でき、農家としては充実した1年でした。多くの住民の方々も、人はそういう環境で生きるべきだと実感したと思います。
 だからそれを壊して、農業もつぶして新滑走路を造るなどということはしてはならない。
 安倍の時から「農業でもうけろ」などと言われてきましたが、もともと一生懸命農業をやっている人は、もうけようなどとは考えていません。除草剤、化学肥料などを使えば「きれいな」野菜ができて手間も減るでしょう。だけどそういうやり方は私たちとは違います。
 判決では私たちの有機無農薬の産直農業について「深甚なる敬意を表する」なんて一言書かれていましたが、それで結論として「強制執行許可」とは、裁判長は何も理解していないし、見下しているとしか感じないですね。
 ですから、これで闘いが終わったわけではありません。上告審もあり、耕作権裁判など他の裁判もあります。私は法廷で述べたように、「うそはつかない」という真正直な生き方でやってきたので、これからもそれを貫き、空港廃港まで畑を耕しながら闘っていく、そういう2021年にしたいと思います。

上告審で絶対に勝つ!
 敷地内東峰 萩原富夫さん.

 控訴棄却判決は実に許しがたいが、まだまだ闘える、絶対に勝てると確信を固めています。
 昨年は集会なども中止になって運動的にも止まったような状況でしたが、裁判日程も延期が相次ぎ、航空需要が壊滅的に激減し、空港とその関連企業などが根底から破綻を突き付けられました。機能強化どころか成田は存在そのものが危機に瀕する状態です。われわれが掲げてきた「空港廃港」がリアルな目標となる新事態に突入したと思います。もちろん危機だとは言え、こちらが黙っていたら敵はどんどん進めてきますから、今こそ声を大にして「成田空港はいらない」と訴え、その声を広めていかなくてはなりません。
 判決の最後の「執行は平穏、円滑に」という付言は許しがたいものですが、全国のみなさんから集めた「強制執行するな」の要望書を提出し、市東さん、反対同盟、弁護団が裁判所をとことん追い詰めた結果があれを書かせたとも言えます。30㌻もの長い判決文の中で、必死になって理屈をこね「強制執行しかない」と主張するが、最後はできれば穏便にやってくれと。
 NAAは1月に、空港内に雇用相談窓口を設置して空港で働く人の生活を支援するという。「ハローワーク」が空港に置かれるのです。そんな状態で何が機能強化、航空需要回復ですか。空港経営は回復どころか悪化するしかない。状況はわれわれに有利に進んでおり、土地明け渡し要求が無意味になるくらい、NAAを徹底的に追い詰めることが十分に可能です。空港機能強化策はもとより、原発政策や基地もろともぶっとめる気持ちで闘いたい。
 菅政権の危機もどんどん深まっています。軍事空港建設を許しません。上告審は絶対に勝てる情勢です。最高裁で勝ちましょう。

立ち上がる住民と共に
 事務局員 伊藤信晴さん

 2020年は新型コロナ情勢のもとで、権力からの攻撃と労働者・農民・人民の反撃が激突した激しい年でした。三里塚では市東さんの農地取り上げにお墨付きを与える反動判決が、東京高裁で出されました。本当に許せないですが、私たちの運動の力でそれをたやすく仮執行させないところに押し返しています。
 また多くの空港周辺住民が、これ以上空港の犠牲にされることを拒み、機能強化・騒音激化に反対して立ち上がっています。
 三里塚には、おっかあを先頭にして、杭に体を縛りつけ、体を張って血を流して空港建設を阻んできた歴史があります。そういう半世紀を超える闘争史を知る住民にとっても、24時間空港化や新滑走路を造って空港敷地を2倍に広げるなど、到底ありえないことなのです。
 芝山町では今、農家の高齢化・担い手不足問題の解決策として、「中心経営体」へと農地を集積する「人・農地プラン」というのが推奨されています。だが実際にはほとんど進んでいません。規模を拡大して経営効率を高めようというふれこみですが、助成金給付をめぐって部落内で分断が生まれています。
 空港一辺倒で行われてきた行政が多くの矛盾を生み、芝山町の人口はあと10年で今の7千人から5千人に減ると言われます。
 農家が農家としてやっていける、労働者が労働者として食べていける社会にしないといけない。市東さんの農地を守る闘いは、まさに一人ひとりの生活と権利を守る闘いとしてあります。労農学連帯の力で絶対に農地を守りましょう。

強制執行を実力で阻む
 事務局員 太郎良陽一さん

 市東さんに出された今回の判決を、私は今までになく真剣に読みました。
 結局、裁判官らにとっては、今の資本主義体制を防衛し、経済成長を続け空港を拡張し、それで金をもうけることが第一という前提があり、農民は犠牲になっていい、そういう考え方にどっぷり浸って抜け出せない。そのことがよくわかりました。
 新型コロナ危機は、今全世界の経済の中心地を襲っており、この社会のあり方に根本的にメスを入れるような問題だと感じています。経済の発展なんかより、人間が自然とともに土を耕し、作物を得て普通に生きていくことの方がよっぽど大事なことです。三里塚はそのことを最初から訴えてきたと、あらためて思います。
 金持ちの外国人観光客を呼び寄せ、その金で豊かになろうという浮草的な観光立国政策は、やはりおかしい。この期に及んで株価バブルやオリンピック開催にすがる菅政権を、必ず倒さなくてはなりません。
 控訴審では反対同盟も弁護団も支援も、全力を尽くして闘いました。その中で東峰地区の住民が、「市東さんの農地を奪うな」との要望書を東京高裁に提出しました。空港建設による分断攻撃を許さず、この地で生きていくための訴えとして住民一同の要望書が出されたことは非常に大きな意味があったと思います。
 1971年に大木よねばあちゃんが強制執行でやられてから50年、絶対に同じことを国家権力にさせてはならない。みなさん、ぜひ三里塚に来て一緒に闘いましょう。市東さんの農地を実力で守り抜きましょう。

戦争への道を許さない
 婦人行動隊 宮本麻子さん

 控訴棄却の判決は本当に許せません。政府・資本・裁判所が一体で下した攻撃です。
 市東さんは裁判の中で、天神峰で農業を続けていくことを堂々と話しました。「うそはつかない」と自分の生き方を述べました。それを無視して強制執行を認めるとは、最初から結論ありきだったのです。そして付言で「執行を穏便、円滑にやれ」とは! また根拠もなく航空需要が回復するように言いますが、ありえません。機能強化、第3滑走路もまったく無用なものです。
 インバウンド、航空需要増大、経済成長などが右肩上がりで続くはずもなかったのです。歴史上これまでも恐慌、戦争などが起きてきましたが、形や現象は違っても今回の新型コロナのパンデミックもやはり資本主義自身が呼び寄せた大災害だと感じます。
 仕事がなくなり生活が苦しい人たちがすごく増えているのに、菅政権は一切顧みず、辺野古の基地建設、原発再稼働、「敵基地攻撃」を想定したイージス配備などをどんどん進めています。今すぐやめさせなくてはなりません。
 全世界で人々が立ち上がりつつあります。アメリカのBLM運動、香港の若者たちなど、許せないことに対し声を上げて行動に移しています。日本でも医療労働者を先頭に、社会を底辺から支える労働者・農民が立ち上がっています。
 三里塚反対同盟は55年、非妥協の闘いを続けてきました。戦争への道を許さず、市東さんの農地を絶対に守りぬくために、21年も闘います。

天神峰に駆けつけよう 婦人行動隊
 木内敦子さん

 市東さんの裁判の判決は許せないものです。「あらゆる意味で強制的手段を用いない」は口約束にすぎないと言うのですか。絶対に認められません。
 北原鉱治事務局長がよく言っていた「三里塚では裁判の内容で勝っていても判決は反動的」が、今回も繰り返されました。しかしそれでもくじけず闘うことが三里塚の真骨頂です。
 三里塚闘争は55年。これだけ長く続いたことが一つの「革命」に値する意味があると思います。反対同盟は揺らぐことなく「空港絶対反対、農地死守」の原則を貫いてきました。そして全国の住民運動、反原発、労働運動などと結びついてきました。それが長さの秘訣(ひけつ)でしょうね。
 判決では「強制執行については可能な限り平穏・円滑に」という付言が付きましたが、農地取り上げ問題を社会的焦点にさせたくないというあせりが見て取れます。いま世の中にあふれる多くの怒りに火が付くことを恐れているのですね。
 大空港を造り観光客を大量に呼び寄せてもうけることと、生きる基本である農業を守ることのどちらが大事か。この問いは人間としての生き方の問題です。私たちは新しい生き方を模索するしかないのです。
 市東さんの農地を守るためにはやはり、三里塚現地に集まることが重要です。21年、ぜひ現地に何度も駆けつけてください。
 「前進」「週刊三里塚」には、社会的に弱い立場の人たちに寄り添いつつ、社会変革を実現する道筋を明るく照らし、希望を示してほしいと願っています。

矛盾に満ちた高裁判決
 顧問弁護団 葉山岳夫さん

 市東さんの請求異議訴訟で東京高裁・菅野雅之裁判長が下した判決は、違法かつ不当極まるものです。
 第一に、シンポ・円卓会議での空港公団の「あらゆる意味で強制的手段を用いない」との公約について、「行政代執行による土地収用は行わない」と約束しただけだ、裁判所による民事的な仮処分、民事訴訟に基づく土地明け渡しの強制執行についてはそこに入らない、と強弁しています。なぜなら合意文書がないから「政治的・社会的決意表明」に過ぎず法的効力は生じないのだと。つまり決意表明はいい加減でよいとする自民党政治の反映です。
 第二に、強制執行は農民の命に等しい農地を奪う権利濫用だとの主張に対し、まともに判断せず門前払い的にはねつけました。市東さんの有機農業について「深甚な敬意を表する」と持ち上げつつ、強制執行を是認するというのです。
 第三に、コロナ情勢で成田の乗客が激減し、強制執行の緊急性、必要性は皆無だと論証したことに対し、根拠なく「航空需要増大の可能性もある」とNAAに肩入れしています。
 そして最後に「当事者間で協議し、平穏・円滑に明け渡しを」と付言する。このような矛盾したことを言わざるを得ないところに、高裁を追い詰めたという手応えがあります。
 21年はいよいよ大激動の時代です。コロナ禍にめげず全世界で労働者人民が立ち上がっています。市東さんの農地を守る闘いは、全国農民、全労働者人民の闘争の重大な一環です。この全人民的な決起の中で、上告審を闘い、不当判決を粉砕し、強制執行を阻止することは必ずできます。

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